タイ新政権の民主主義と経済政策~アザーニュース
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DEVNET INTERNATIONAL
世界総裁 明川 文保 氏NetIB-NEWSでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONAL(本部:日本)のニュースを紹介している。DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)によりその総合諮問資格を認定されている非政府組織(NGO)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は8月30日掲載の記事を紹介する。
2023年8月22日、タイの上下両院で新首相の選出が行われ、タクシン元首相派「タイ貢献党」の元実業家セター・タビシン氏が新首相に選出された。進軍派の2党を含む計11党の大連立政権が発足する。
5月の総選挙では、王室改革を訴える革新系野党「前進党」が第1党に躍進し、2位の貢献党と合わせて過半数を獲得した。プラユット前首相らの親軍与党は大敗した。前進党は党首のピター氏に首相候補を一本化して貢献党など計8党の連立政権を目指したが、上院議員の過半数を占める軍政下で任命された議員の支持を得ることができず実現しなかった。
この結果は、タイの民主化を後退させるものであり、国際社会の懸念を招いている。タイは、2014年に軍事クーデターが発生し、軍事政権による統治が続いていた。2019年の総選挙で民政移管が実現したものの、軍事政権の影響力は依然として残っていた。
5月の総選挙の結果は、タイ国民が軍事政権の影響力を排除し、民主主義を実現することを望んでいることを示した。前進党は、軍事政権に批判的な姿勢を貫いてきた政党であり、第1党となったことは、タイ国民の民主主義への強い意志の表れである。
新政権は、この民意を実現するために、以下の課題に取り組む必要がある。
1.上院議員選出の改革
現行の上院議員選出制度では、上院議員の半数が軍政下で任命されており、国軍の影響力を排除することは困難である。上院議員選出を直接選挙制に変更することにより、国軍の影響力を排除し、民主的な政治体制を構築することが可能になる。
2.国民の自由と権利の尊重
タイでは、軍事政権の統治下で、言論の自由や集会や結社の自由などの国民の自由と権利が制限されてきた。軍による政治介入や人権侵害を排除して、国民の自由と権利を尊重し、国民の意見を反映した政治を行うことが重要である。
3.タイ貢献党におけるタクシン元首相の影響力と王室との関係の改善
セター氏は、タクシン・チナワット元首相に近いとされる人物であり、タクシン氏の影響力は依然として強いと考えられる。また、タイ貢献党は、王室との関係が良好であるとされる。タクシン氏の影響力と王室との関係性は、タイの政治的対立の根幹に関わる問題である。
同時に、第1党であった前進党を排除し、親軍勢力を含めた連立政権にとって何よりも必要なことはタイ経済の立て直しである。セター氏の経済政策に対して、タイ国民の期待は、大きく以下の2つに集約される。
1.経済成長と雇用創出
タイは、新型コロナウイルス感染症の影響や、ロシア・ウクライナ戦争の影響を受けて、経済が停滞している。そのため、国民は、セター氏の政権が、経済成長と雇用創出を実現し、国民の生活を改善してくれることを期待している。具体的には、インフラ整備や、中小企業の支援、農業振興などの政策が必要であろう。
2.貧困層の生活改善
タイの貧困率は、約6.7%(2022年)と、ASEAN諸国のなかでは高い水準にある。そのため、国民は、セター氏の政権が、貧困層の生活改善に取り組んでくれることを期待している。具体的には、低所得層への給付金の支給や、教育や医療の無償化などの政策である。
タクシン氏を帰国させるために親軍勢力と取引をしたと批判されているタイ貢献党にとって、タイの経済を立て直すことこそが、親軍勢力に頼ることなく政権を運営していくための絶対条件である。
タクシン氏は15年間の逃亡生活の後、今回タイ貢献党が政権を取ったことによって帰国し、逮捕されて収監中である。しかし、新政権が軌道に乗れば3か月程で国王から恩赦を受けられるはずである。そうすれば、タイ経済も一気に上向くのではないだろうか。
経済政策の成否こそがタイが軍事政権から脱却して民主化を実現するための鍵なのである。私はセター氏の手腕に期待している。
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