2024年11月22日( 金 )

新たな技術を磨き、挑戦を続ける 根底にあるのは人材を大切にする姿勢

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松山建設(株)

幅広く建築工事を手がける

 九州北部を中心に幅広い分野の建築物の施工に携わり、65年以上の社歴を有する松山建設(株)。近年では、春吉橋建替えにともない設置された迂回路橋および新「春吉橋」の橋梁なども同社による施工だ。安全性を高めた新「春吉橋」が開通し、迂回路橋はまちなかの新たなイベントスペースとして賑わいを提供しているが、それらを同社の技術が支えている。

 同社が手がける建設物の分野は幅広く、建築では集合住宅、商業施設、教育施設や医療・介護施設などを、土木では橋梁のほかにも、トンネル、海洋・河川やダムなどを手がけてきた。大型の公共工事として、九州新幹線開通にともなう筑紫トンネルの貫通工事や、東九州道築城IC築造工事、福岡空港の関連工事など、私たちが日常的に利用している交通インフラにも同社が携わっている。同社はこのように公共インフラ整備に従事しており、都市の発展に欠かせない企業として、躍進を遂げてきた。

松山建設(株) 松山孝義 代表取締役社長
松山建設(株)
松山 孝義 代表取締役社長

    同社の設立は1956年で、現商号に変更されたのは96年。当初は京築・北九州エリアを中心に、一般土木工事や道路舗装工事などをメインに行っていた。福岡には76年に支店を開設、87年に本社を移転し、以後、福岡都市圏にも堅固な基盤を築きながら業態も拡大してきた。福岡の本社に加え、築上町(椎田)に事業部を、北九州市、豊前市、大分県中津市に支店を構え、九州北部を網羅している。

 躍進は直近の業績にも反映されており、2023年3月期について、松山孝義代表取締役社長は「約50億円の売上高と2億円の経常利益を見込んでおり、増収増益の予定」としており、近年で最高の水準となる。この成果は、同期に高収益の物件の完成が相次いだことによるものであり、同社の取り組みの結果が明確に現れている。

自治体・社会からの高評価

安全性を高めた新「春吉橋」
安全性を高めた新「春吉橋」

    同社の施工は社会からも高い評価を得ている。九州地方整備局の工事成績優秀企業ランキングにおいて、3年連続で1位を獲得しているほか、福岡市の福岡市工事成績優良業者にも6年連続で選定されている。前者は過去2年間に完成した港湾空港関係を除く直轄土木工事の成績評定結果を基に各社の平均点を算出したものであり、公的機関が客観的指標に沿って評価した、いわば建設会社の「番付表」といえる。後者は工事成績評定が80点以上の企業が選ばれているものだ。

 こうした高い評価を支えているのは、同社が積極的に新たな技術を磨き、現場で実践してきたことと、品質基準の向上に尽力してきたことによるものだろう。同社は02年にISO9001認証、12年にISO14001認証、15年には建設業労働安全衛生マネジメントシステム(コスモス)認証を取得している。

 松山社長は「表彰を受けることは企業にとってのみならず施工に携わった社員にとっても名誉であり、以後の工事に対する行政からの信頼度も高まるため、社員のモチベーションが高まります」と述べており、よい循環が形成されているようだ。

デザインなどで新たな取り組み

NOT A HOTEL FUKUOKA(パース図)
NOT A HOTEL FUKUOKA(パース図)

    同社の建築を特徴づけるのは、技術面での進取性や品質のたしかさにとどまらず、デザイン面でも新たな挑戦を行っている。現在、「NOT A HOTEL FUKUOKA」(福岡市中央区大宮)という都市型コンドミニアムを建設中だ。これは、Good Life & Travel Company(株)(同じく麻生宏氏が代表を務めるIMD ALLIANCE(株)と放送作家の小山薫堂氏が率いる(株)オレンジ・アンド・パートナーズの合弁企業)が運営するもの。麻生氏は「福岡らしい暮らしに溶け込む空気を纏う建築」を意識したと語っており、そのコンセプトを具現化したデザイン性の高い建物となっている。設計は、佐々木+nks2設計共同体代表、axonometric(株)一級建築士事務所代表取締役の佐々木慧氏が担当している。

 松山建設はほかにも、「20年度土木学会デザイン賞」「第24回福岡県美しいまちづくり建築賞 大賞」(21年)を受賞している。こうした取り組みと評価は、同社がモダン建築に求められる都市との景観調和や機能美の充実に対応できる「センス」をも兼ね備えていることを示すものだ。

積極的に賃上げを断行

 松山社長は社員の待遇改善および向上に長年取り組んできた。それは、仕事が社員の生活に深く関わっており、社員に「長く働いて欲しい」「幸福な人生を送って欲しい」という想いからだ。

 昨年からのロシアのウクライナ侵攻および円安による物価・エネルギー価格高騰のなかで、多くの企業が社員の生活を保障するために賃上げを迫られている。そのなかで、同社は、「建設業界では国から約1・5%のベースアップを行うよう求められているが、さまざまな要素を考慮して、平均で7%引き上げた」(松山社長)という。

 同社はそのほかにも国が求めてきた完全土日週休2日制を比較的早く実現させている。これは以前の建設業界からは想像できない変化であり、地場で同様に実現させている建設企業は非常に少ない。同社は事業者の要望に応じて期日通りに竣工できるよう、発注者と綿密に打ち合わせをして工期を設定しているが、職人不足の懸念が深刻となるなか、休日を確保しながら工期に間に合わせ続けることは容易なことではない。

同社のこうした対応は、国・社会からの要望に応じるということもあるが、建設業界に人材を呼び込むには、金銭面や休暇面などで社員の待遇を改善する必要があるという覚悟からだ。給与に関連して退職金も同様に手厚く、福岡地区の同業他社と比べ、数百万円多く設定しているため、同規模の企業の経営者から驚かれるという。

 同社のこうした実績および経営を支えるのは、企業理念「喜業三訓」だ。顧客第一主義、全社員営業志向、人「財」創造に喜びを見出そうというものであり、そこに込められているのは、社員に喜びを感じながら日々の業務に取り組んでもらいたいとの松山社長の願いだ。同社は生産性向上の取り組みや福利厚生面での実績などが評価され、ふくおか「働き方改革」推進企業にも認定されている。

 社員の仕事上の満足度を高めている同社。引き続き福岡市の成長を支える建築物を生み出していくことは間違いない。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:松山 孝義
所在地:福岡市中央区高砂2-24-23
設 立:1956年9月
資本金:4,000万円
TEL:092-533-0001
URL:http://matsuyama-k.co.jp


<プロフィール>
松山 孝義
(まつやま・たかよし)
1962年、福岡県椎田町(現・築上町)生まれ。明治大学法学部を卒業後、コンピューター関連の会社でシステムエンジニアとして活躍。95年に松山建設(株)に入社。2000年に代表取締役社長に就任。福岡県建設関連産業協議会会長を務める。

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