日田彦山線を転用したBRTひこぼしライン(後)
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運輸評論家 堀内 重人
日田彦山線の添田~夜明間は、鉄道による復旧を断念して、JR九州が専用軌道のインフラと車両を保有し、グループのJR九州バスが運営するBRT(Bus Rapid Transport)という、バス高速輸送システムに置き換わった。低床式の電気バスも導入されるなど、高齢者が利用しやすくなっただけでなく、環境にも配慮されたバス路線であり、「BRTひこぼしライン」という愛称をもつ。地元などの期待を背負い、2023年8月28日に開業したひこぼしラインであるが、代替バス時代と比較しサービスが向上した部分や、今後の課題についても言及したい。
乗車した感想と今後の展望
開業前日の8月27日や開業日には、沿線各地で出発式や歓迎セレモニーなどの式典やイベントが実施された。
そして8月30日にJR九州は、速報値として開業日には408人が利用したと発表した。ひこぼしラインの収支状況であるが、運行開始後は1.6億円/年の赤字を見込んでいる。被災前の日田彦山線の添田~夜明間の輸送密度は、131人/日しかなかったが、JR九州はこの数値を上回ることを目標として掲げている。
前日まで運行していた代行バスは、1日当たりの平均乗車人員が約60人しかなかったことから、6倍以上の乗車があったことになる。6年前の2017年は鉄道で運行されていたが、当時の添田~日田間の1日当たりの乗車人員は平均で130人であった。
初日は、試乗や物珍しさも加わるため、乗車人員は多くなる傾向にあるが、鉄道時代と比較しても約3倍である。JR九州の古宮社長は、定例記者会見で「ひこぼしラインの開業で、一度乗ってみようという多くの方に利用された」との認識が示した。筆者は、開業の翌日に乗車したが、古宮社長とは異なる見解をもっている。
代替バス時代にも、添田から日田まで乗車しているが、先ず添田で代替バスへ乗り継ぐ際、乗り場が分かりづらかった。添田駅は無人駅であり、かつ代替バスに関する案内など皆無であったため、乗り場が分からずに困った。
ひこぼしラインの開業に合わせ、添田駅のホームの向かい側に、路線バスが到着して、発車するため、列車との乗り換えが円滑で、非常に分かりやすくなった。これは利用者の増加に、非常に大きく影響すると考える。
次に低床式車両に置き替わり、乗降がしやすくなった点が挙げられる。低床車であれば、高齢者やベビーカーをもった人でも乗降がしやすくなる。
三番目として、彦山から宝珠山間が専用軌道を走行することになり、所要時間が15分程度、短縮されたことが挙げられる。代替バス時代は峠を越えるかたちで迂回していたが、バス専用道に釈迦岳トンネルが含まれたため、峠越えによる迂回が解消されたことが、所要時間の短縮につながった。
四番目として、鉄道時代の駅舎などを極力、活用しており、乗車場所などに関しても、鉄道時代と違和感なく利用できる点がある。
ただし、今後の課題も数点挙げられる。筆者がひこぼしラインに乗車したとき、日田市内で渋滞に遭遇したため、10~15分程度の遅延が生じてしまった。今後は日田市内にバス優先信号を導入して、日田市内の一般道における運行の円滑化を図りたい。
次に、添田でひこぼしラインから、日田彦山線の列車に乗り換えるとき、車両の老朽化が進んでいるため、新型気動車に置き換えるなどをしなければ、鉄道のほうが見劣りした状態であるから、利用者が増加しづらくなる。
ひこぼしラインで使用する車両は、前乗り前降りの1扉のバスが中心であるため、ラッシュ時の高校生などが纏まって乗車すると、下手をすれば積み残しを出す危険性もある。そのためラッシュ時の増発用として、燃料電池式のバスを導入することが望ましいといえる。
今回は、集中豪雨で被災したためBRTというバス高速輸送システムを運行させたが、この事態は別の見方をすればネットワークの崩壊ともいえる。 昨今、台風などが巨大化する傾向にあり、日本各地で鉄道の被災が見られるようになった。その線区の収支は、慢性的な赤字であっても、「ネットワークによる利便性の維持」という視点も加味して、鉄道として存続させるか、バス化を行うかを判断する必要がある。
(了)
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