半導体製造に欠かせない希少ガス(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏希ガスと半導体産業
半導体のチップを製造するには、100種類以上の各種ガスが利用されている。各ガスはその性質に応じてさまざまな側面から半導体製造などに関わっている。露光過程にはネオンが、冷却材としてはヘリウムが欠かせない。工程が最先端化するにつれて、半導体向けの特殊ガスの需要はますます増えていくことが予想されている。希ガスは半導体製造に欠かせないため、もし供給に異常が起これば、半導体工場はストップしかねない。それで、半導体メーカーは希ガスの供給元を多様化するなど、その対応に迫られている。
ウクライナ戦争が長期化で
そのような状況のなか、ウクライナ戦争で希ガスの供給が寸断されるのではないかという懸念が高まっている。希ガスの価格が暴騰したことはいうまでもない。ロシアは全世界の希ガスの約30%を供給しているようだ。そのなかでもネオンは米国、ロシア、ウクライナ、オランダ、フランス、ドイツ、中国などで生産されているが、ロシアとウクライナがその供給の50%を占めているので不安が高まっている。
ネオン、ヘリウム、C4F6ガスの主要供給源はロシアとウクライナであるため、ウクライナ戦争が長期化すれば、その影響が何らかのかたちで希ガス供給に現れることは避けられない。たとえば、2年前には戦争の影響でネオン価格は50倍以上値上がりし、今後どのようになるのか心配されていた。価格の高騰はもっと大変な事態への前触れではないかと半導体メーカーは危惧していた。
ウクライナ戦争が長期化し、ネオンなどの供給が不安定化したため、韓国はその供給元を中国に変え、中国への依存度が高くなった。よって、もし中国が希ガスを経済的武器として使用した場合、韓国は甚大な影響を受けることになるだろう。
対応に追われている韓国の半導体業界
希ガスは上記でみてきたように、その生産が数カ国に集中しているのが現状だ。韓国は現在国内で希ガスが生産されておらず、全量を輸入しているのが現状だ。ウクライナ戦争の影響を避けるために、供給元を中国に切り替えているが、その中国も米中覇権争いのなかで、中国への規制に対する反発から、いつ希ガスを経済的武器にするかわからない。
先日中国は次世代半導体の材料であるガリウムやゲルマニウムの輸出に許可を必要とする措置を取った。資源をめぐって世界各国の激しい争奪戦が繰り広げられていて、希ガスもいつその対象になるか分からない状況だ。希ガスが供給されなければ、半導体工場は止まることになり、韓国輸出の稼ぎ頭である半導体産業は生産が立ち行かなくなり、韓国は壊滅的なダメージを受けかねない。
そのような事態を避けるため、韓国政府は危機感を募らせ、希ガスの国内製造を推進している。ガス産業はほかの産業に比べて遅れを取っているものの、遅まきながら韓国政府とサムスン電子、SKハイニックスなどが中心となって、希ガスの国産化を進めている。現在、希ガスは製鉄会社の副産物を利用して製造する場合が多いので、ポスコも希ガスの製造に積極的に取り組んでいる。
希ガスの価格が高騰し、半導体会社の製造コストの負担は重くなっていると思うが、これをきっかけに希ガスの重要性に気づき、新しい付加価値の高い産業を育ててほしい。高純度の各種ガスの需要は半導体産業だけでなく、いろいろな産業で需要があるようだ。ウクライナ、中国、日本などから輸入していた特殊ガスが韓国で製造される日を待ちたい。
(了)
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