台湾、ベトナムと連携し、外国人材を活用 人口減少社会での福岡県豊前市のまちづくり(前)
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(株)アクロテリオン
代表取締役 下川 弘 氏人口減少が進行する日本。大規模災害や軍事侵攻から自国民を守り切れるのか、はたして、日本という国自体が存在していくのか、想像できうること以上の混乱に見舞われるのではないかとの懸念をもっている。こうしたなか、持続可能な社会をつくるため、外国人材の誘致、活用を図りつつまちづくりを進めている福岡県豊前市の取り組みが注目される。
現実的な危惧は生産年齢人口減少
日本の社会経済情勢でより危惧されるのが少子高齢化、そして生産年齢人口の激減である。総務省の令和4年版情報通信白書によると、「少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)に減少すると見込まれている。生産年齢人口の減少により、労働力の不足、国内需要の減少による経済規模の縮小などさまざまな社会的・経済的課題の深刻化が懸念される」。
福岡は、近くに山と海があり、スタートアップも多く活気があり、魅力的なまちとされる。しかし、「住みたい町ナンバー1」などと評価され、現実の問題点や課題を見ないまま、現状の丁度良さに満足するところがある。
現時点において福岡市都市圏の人口は増加傾向にあるため、日本の人口減少という実感はわきにくいかもしれない。しかし実際には、福岡都市圏の人口増は自然増によるものではなく社会増、つまり他地域からの移住によるものだ。人が集まってきていると表現すると、人気があるものと聞こえるが、悪い言い方をすれば、それ以外の地域の人々をブラックホールのように吸い込んで、それらの地域を「超過疎地域」や「限界集落」にしてしまっているのかもしれない。
最もわかりやすい例は、福岡都市圏への若者の流入である。福岡市には短大・高専・専修大学・大学・大学院が計104校集まっている(『大都市比較統計年表』令和3年)。10万人あたりの大学数でみても全国トップである。そのため九州全域だけでなく、中国・四国方面からも多くの学生(若者)が集まってきていることになる。吸い上げられる地域からみれば、若者がいなくなるということだ。
福岡県豊前市の人口減少 若者の流出状況
生産年齢人口の減少に直面し、興味深い対策を講じている自治体の例を紹介したい。福岡県東部、京築地域の南部に位置する豊前市。同市には大学はなく、県内で比較的近いところでも苅田町にある西日本工業大学だけだ。そのため、市内の高校を卒業した優秀な学生たちは、そのほとんどが北九州、福岡、大阪および東京へと出て行ってしまう。豊前市の年齢別人口分布をみるとそれが明らかにわかる。18歳から30代後半ぐらいまでの活気溢れる若者たちが街から流出しており、街に活気がなくなるのは当たり前である。豊前市は生産年齢人口減少対策として、外国の若者人材活用にいち早く目を向けて、その方策を検討している。
豊前市の外国人材受け入れ
少子高齢化が進む豊前市は21年10月に「豊前市立学校適正配置基本方針」を策定し、現在の小学校10校と中学校4校を、27年度を目標に新設中学校、義務教育学校および新設小学校(2校)に再編する予定である。
一方、生産労働人口の確保のために外国人技能実習生の受け入れなどを行う企業も増えてきており、国際化に対応する必要性が生じている。そこで持続可能な社会を創造するために、海外から優秀かつ若い人材の受け入れを行い、豊前市が抱える少子高齢化・人口減少に歯止めをかけ、将来的にも豊前市との国際ビジネスのつながりをもってもらえるような人材育成とまちづくりを行おうとしているである。
豊前市は22年4月に国際共生推進室を立ち上げ、ベトナム・台湾とのコーディネートをしてもらう“地域おこし協力隊”の採用を行い、一緒にプロジェクトを推進している。
サテライトキャンパス構想
さらに豊前市が取り組む「サテライトキャンパス構想」とは、ベトナムおよび台湾の大学と提携し、日本分校(サテライトキャンパス)として豊前市に誘致することで、それぞれから優秀な学生を一定期間豊前市内に居住(住民登録)してもらうことにより、人口の増加だけでなく、まちに活気を生み出し、賑わいをつくり出すというもの。
学生の研修施設や住居については、市内にある既存建築ストックを活用することができる。さらに市民宅でのホームステイによる受け入れを行うほか、食事会、料理教室、スポーツ大会や文化交流フェスティバルなどを定期的に開催することで、市全体の国際化に向けた取り組みを進める。
本構想の実現に向けては、在福岡ベトナム総領事館および台北駐福岡経済文化弁事処からの協力・支援が不可欠であり、すでに台北駐福岡経済文化弁事処連携協定を締結している。地域おこし協力隊員の役割も重要であり、彼らとともに協力関係を深いものにしていき、将来的には豊前市への企業誘致につなげられるように取り組むとしている。
このように、同構想は単なる“学校誘致”にとどまるのではなく、まさに“まちづくり”であり、ら豊前市の抱える問題点の解決策になり得るものである。「構造改革特区(通称「教育特区」)」として国への申請も検討している。
(つづく)
<プロフィール>
下川 弘(しもかわ・ひろし)
1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築営業本部やベトナム現地法人のGM、本社土木事業本部・九州支店建築営業部・営業部長などを経て、2021年11月末に退職。(株)アクロテリオン・代表取締役、C&C21研究会・理事、久留米工業大学非常勤講師。法人名
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