2024年11月21日( 木 )

運転手不足で西鉄バス32路線が減便・廃止 今後の路線バスの在り方(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

運輸評論家 堀内 重人

 西鉄は、10月1日のダイヤ改正で、福岡都市圏や北九州市を中心に、32路線で減便・廃止する旨を発表した。これは従来のように慢性的な赤字を理由とした、また、自治体などが欠損補助を行う財力がないためなどではなく、慢性的な運転手不足に対応するためである。
 福岡都市圏や北九州市は、都会であるから、従来はバスの運転手も集まりやすい地域であったが、現在では大都市圏ですら運転手が集まらなくなっている現状がある。このことは過疎地では、より深刻となっている。
 バス運転手を募集して採用したとしても、定着してもらわなくては根本的な解決にはならない。そのためには給料を上げることが不可欠だ。本稿では、その方法についても言及したい。

筆者が考える運転手を維持する方策

 バス事業者に運転士の給料を上げたり、新規に運転士を雇用するだけの経営体力がないとなれば、各自治体が給料を上げたりするための原資を、補てんする必要に迫られる。しかし、肝心の自治体も財政難のため、新たな負担増は厳しい状態である。

 そうなると従来の枠組みでは駄目であり、筆者は以下の3点を提案したい。

(1) サポーターの出資を募る形で、行政からの欠損補助とは異なる、新たな収入源を確保する
(2) NPOと連携して、バス停の上屋やベンチを整備して、バスサービスを改善させ、かつバスマップを作製して利用者を増やす
(3) クラブ財化を目指す

 (1)に関しては、サポーターというかたちで寄付を募り、バス事業者の新たな収入源を確保する必要があるだけでなく、行政やバス事業者と一緒に路線バスの活性化を目指して、イベントの開催などを実施する方法がある。

 (2)に関しては、地方へ行けばバス事業者にバス停を管理する能力がなく、バス停に上屋やベンチもないだけでなく、降雪のある地域では、バス停付近の除雪すら満足に実施されておらず、何処にバス停があるのか分からない状態では、利用したくない上、下手をすればバス停の位置が分からず、利用できない。

 ベンチもないバス停を改善させるには、地元の工業高校に依頼して、生徒に作成してもらう方法がある。各高校も、生徒集めで必死であるため、バス停の上屋の整備やベンチの作成は、大幅なサービス向上につながる。そしてNPOの方に、積雪が多い地域では、バス停の除雪を担ってもらう以外に、バスの存在などを知ってもらい、バスを利用しやすくするため、バスマップを作製することが効果的である。

 バス事業者が作成したバスマップでは、デフォルメされ過ぎていて、方向や距離、バスの経路などが分かりづらいのが短所である。一方でNPOが利用者目線で作成したバスマップなどは、非常に分かりやすいものがあり、なかにはポケットに入るタイプまであるなど、使い勝手が良いものが存在している。

 (3)は、弘南バスの黒森線で実施しているが、地域の住民の方々に、バスを利用するか否かを問わず、自社の路線バスの回数券を購入してもらうかたちで、路線を維持している。その方法により、バス事業者は安定した収入が得られている。

 この方法などは、輸送密度が低くて、従来型の路線バスの設定が困難な地域であれば、非常に参考になる事例である。

 今後、バスの運転手不足を解消するためには、長時間労働の緩和だけでなく、給料を上げることが不可欠であり、それには「サポーターの募集」「NPOと連携したサービス向上」「クラブ財化」など、新たな収入源の確保と、バスサービスを向上させ、利用者を増やすことである。

 それ以外に、運転手の業務負担要因として、乗客の降車時の金銭授受が挙げられる。これを解消するには、交通系電子マネーの導入が挙げられる。交通系電子マネーが導入されると、運転手が、小銭を受け取る必要性から解放されるため、心労が減るだけでなく、決済が円滑になり、また、バス停へ停車している時間が短縮されるため、バスの所要時間の短縮につながる。これによりバス事業者は、少ない運転手とバス車両で、路線を維持することが可能となる。

 交通系電子マネーの導入に向けて、国も含めた行政がバス事業者に対して、導入の経費を補助するようにすべきである。

(了)

(前)

関連記事