2024年11月27日( 水 )

戦争を創作する戦争立国

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、「米国は軍産複合体の利潤を生むために、戦争を恣意的に創作する意思を持った国家である」と論じた10月13日付の記事を紹介する。

 戦争に対して私たちはどう向き合うのか。

 日本は敗戦後に制定した憲法で戦争を放棄した。国際紛争を解決する手段として、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使を永久に放棄することを憲法で定めた。この基本を忘れてはならない。

 ウクライナで戦争が発生した。中東のイスラエル、パレスチナの地でも戦争が遂行されている。

 戦争勃発には背景がある。相互に主張が存在する。一方が絶対善で一方が絶対悪であることは少ない。そのようななかで不幸にも戦争が勃発したとき、私たちは何を主張すべきか。

 答えは明白だ。一刻も早い戦争の終結を目指すべきだ。ウクライナで戦争が勃発した。日本は世界に対して一刻も早い停戦の実現を訴えるべきだ。ウクライナを支援してウクライナ戦争に加担する道を選ぶべきでない。

 ウクライナで戦争が発生したのは、2014年に暴力革命で樹立されたウクライナ非合法政府がロシア系住民支配地域に対する人権侵害と虐殺行為を展開したからである。この経緯を踏まえずにウクライナが正義でロシアが悪と決めつけることは間違っている。

 ウクライナ内戦を収束させるミンスク合意が制定された。ウクライナ東部2地域に高度の自治権を付与することが決定された。この合意が履行されていれば内戦は終結したはずである。ところが、ウクライナのゼレンスキー政権はミンスク合意を一方的に破棄してロシアに対する軍事挑発を続けた。その結果としてロシアが特別軍事作戦を始動させた。過去の経緯を踏まえて妥協点を見出そうとする努力なしに戦乱を収束させることはできない。日本は国際社会に対してウクライナ停戦実現に向けての提案を発すべきだ。

 ところが、日本政府は米国の命令に服従してウクライナに対する支援を実施。ウクライナ戦争拡大に加担し続けてきた。米国は軍産複合体の利潤動機によりウクライナ戦争を必要としてきたし、ウクライナ戦争の拡大・長期化を求めてきた。その戦争遂行によって犠牲になるのはウクライナの市民と前線に送り込まれる末端の兵士だけだ。米国軍産複合体もウクライナ・ゼレンスキー大統領も我が身を安全な場に置いて、後方から命令を発するだけなのだ。

 パレスチナの地にはアラブ人が居住していた。その地にイスラエルが1947年、新たに国を創設した。パレスチナの地の53%をイスラエルが奪い、新しい国を創設した。背景に第1次世界大戦の時代に英国が実行した三枚舌外交がある。

 英国は戦費調達のためユダヤ人コミュニティに協力を仰ぎ、「パレスチナの地におけるユダヤ国家建設を支持する」ことを約束した(「バルフォア宣言」)。他方、オスマン帝国からの独立を目指すアラブ民族主義を利用するためにメッカの太守フセインに対して英国への協力の見返りとしての「アラブの独立支持」を約束した(「フセイン・マクマホン協定」)。さらに、フランスと戦争終結後の中東分割協定(「サイクス・ピコ協定」)を締結した。この三枚舌外交が第二次大戦後の中東混乱の原因になった。

 パレスチナの土地をイスラエルは強奪した。文字通りの「力による現状変更」だ。パレスチナのアラブ人は70年以上にわたり辛酸をなめ尽くしてきた。パレスチナが抵抗を示すのには理由がある。ハマスが悪でイスラエルが善ではまったくない。

 しかし、米国は常にイスラエルの側に立ち、武力に勝るイスラエルの軍事行動を支援する。世界平和を破壊している最大の元凶は米国の横暴である。米国は戦争立国である。戦争を引き起こさなければ国がもたない構造になっている。その米国への絶対服従は日本の戦争放棄原理、平和主義と根本的に矛盾する。

※続きは10月13日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「戦争を創作する戦争立国」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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