アメリカも驚くインドの宇宙開発技術
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、10月20日付の記事を紹介する。インドのモディ首相は鼻が高いに違いありません。何しろ、アメリカの航空宇宙局(NASA)から「インドの宇宙技術はすばらしい。しかも安い。ぜひ、売って欲しい」とアプローチがあったのですから。
なぜでしょうか?実は、去る8月23日、インドの無人月探査機「チャンドラヤーン3号」が月の南極付近に無事、軟着陸したからです。
月面着陸はソ連、アメリカ、中国に次いで4カ国目。しかし、月の裏側に位置する南極付近への着陸は世界初の快挙に他なりません。
モディ首相は南アフリカで開催中のBRICS首脳会議に参加中でしたが、月面着陸の瞬間を見届けると、「新しいインドの始まりだ」と宣言。インド国内では喜びの大歓声が挙がったものです。
人口でも中国を抜き、世界1となったインドですが、「宇宙大国」を目指すことで、内外に向けて、インドの技術力やそれを裏付ける経済力をアピールしています。
同じく月の南極を目指していたロシアの「ルナ25号」は数日前に着地に失敗したばかりでした。そのため、インド人は「ロシアに勝った」と一層、自信を深めたわけです。
アメリカのNASAの専門家チームは10月15日、インドを訪問。インド側は「時代は変わった。今やインドが世界最高の宇宙ロケットを設計、建造できる」と内外に説明しました。
しかも、「チャンドラヤーン3号」の打ち上げにかかった費用は7,400万ドル。破格の安さです。アメリカの場合は2025年までに月面探査予算を930億ドルも計上しており、中国の場合も2022年だけで120億ドルを投入しています。着陸に失敗したロシアの場合は2億2,000万ドルでした。
これらと比較すれば、インドの技術的、そしてコスト的優位性は歴然としています。その上、インドは「月」に止まらず、「火星、金星」をも視野に入れているのです。
この10月21日には最新ロケットの打ち上げも秒読み段階に入っています。それやこれやで、アメリカのNASAの専門家は「是非、インドの宇宙ロケット技術を買いたい」と申し出たとのこと。
宇宙大国の「主役の座」がアメリカからインドに移る可能性が急速に高まっているわけです。
実は、一事が万事。このところインドの経済的発展は目覚ましく、ドイツや日本を凌駕し、間もなくアメリカ、中国に次ぎ、世界第3の経済大国になる可能性が出ています。
とはいえ、カースト制も残っており、国民の貧富の格差は依然として克服されていません。何しろ、貧困人口の多さでも世界1なのですから。
2億2,800万人もが貧困生活を余儀なくされ、そのうち、6,000万人がスラム街で暮らしています。とくに、貧しい地方の農民の間では食事もままならず、自殺者も急増している模様です。医療制度も貧弱ですが、地方ではいまだトイレもなく、衛生状況は戦後の日本より悪いといえます。
しかも、インド国内では列車の脱線や衝突事故が相次いでいます。そのため、モディ首相の肝いりで、国内の鉄道と駅の改善計画がスタートしたばかりです。月面着陸成功のニュースで沸き上がっていたインドですが、インド北東部のミゾラム州では鉄道の陸橋工事現場で橋が崩落し、少なくとも26人の作業員が死亡しました。
国民の目を宇宙に向けて、国内の問題から目を反らすように仕向けているとすれば、実に深刻な状態と言わざるを得ません。
インド政府は月面基地計画も進めている模様ですが、先ずは国内の貧困層対策やインフラ整備に取り組むべきではないでしょうか?その分野では、日本が協力できる可能性が大いにあります。
次号「第361回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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