AI市場で需要が急増しているHBM(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏HBMとは(つづき)
これを解決するため登場したのが垂直に積層するHBMである。メモリチップを12個積み上げた後、メモリチップ同士をシリコン貫通電極(TSV=Through-Silicon Via)という技術でつなぐ。メモリの個数が増えることによって、通路である帯域幅も大きくなった。HBMの帯域幅は既存のDRAMに比べて128倍大きいようだ。
HBMは構造が複雑で生産が難しかったので、初期には市場では歓迎されなかった。ところが、AI市場の誕生によって、状況は様変わりした。同一時間に多くの処理をするためには、帯域幅の増加は必須であるからだ。帯域幅が圧倒的に大きいHBMがAI市場で求められているのにはそうした理由がある。
今後メモリ市場の覇者は変わるのか
HBMは積層すればするほど、容量は多くなるし性能は速くなる。現在HBMの第4世代に当たるHBM3は、GPUとメモリをつなぐチャンネル数が1,024個である。しかし、専門家の予想では今後これは1万個に増加し、TSV個数は100万個になるだろうという。市場調査機関であるガートナーによると、世界のHBM市場規模は昨年が11億ドルで、2027年には51億7,700万ドルとなることが見込まれ、年平均36%で成長するという。
現在HBM市場はSKハイニックスが50%以上のシェアを占めている。市場調査会社Trend Forceも、世界のHBM需要は2025年まで年平均45%で成長を続けると予測している。2022年まではクラウドサーバー向けのHBM2の需要が最も多かったが、2023年以降はAI向けHBM3と、さらにハイスペックのHBM3eの需要が拡大するという。
現在HBM市場で世界をリードしているのはSKハイニックスだが、同社は2021年に世界初となるHBM3を開発したし、昨年量産に成功している。HBM3は1世代(HBM)、 2世代(HBM2)、 3世代(HBM2e)に次ぐ4世代製品である。SKハイニックスは2013年、米国半導体会社AMDと共同で業界初となるTSV技術を適用したHBM開発に成功した。
SKハイニックスは来年の上半期に5世代の製品であるHBM3eの量産に入り、2026年には6世代の製品であるHBM4を量産する計画をもっている。サムスン電子もHBM市場ではSKハイニックスに後れを取っているものの、それを挽回するため全力を尽くしている。HBM市場の成長とともにメモリの覇者が変わることになるのか、市場では注目が集まっている。
ただ、HBM市場が成長しているものの、DRAM市場全体からすると、1%に過ぎず、市場は初期段階である。また、HBMの今後の課題としては、HBMの多層積層構造は、熱の集中を引き起こし、冷却に課題がある。新しい冷却技術や熱設計の最適化により、熱管理の課題を克服する方法が探求されている。しかし、AI市場をはじめ、データセンターなど需要の増加は確実で、HBMの市場をめぐってSKハイニックスとサムスン電子の激しい攻防が繰り広げられそうだ。
(了)
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