2024年07月16日( 火 )

導入の動きが広がっている協調ロボット(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

ロボットの需要が増加

配膳ロボット イメージ    最近ロボット産業が急成長しつつあり、実店舗における警備や配膳、物流現場の作業など、日常生活のなかでロボットに接する機会も多くなっている。その他にもレストランなどで揚げ物をするロボットや寿司を握るロボット、飲食を運んでくれるロボットなど、ロボットの採用はますます増加傾向にある。

 ロボットの採用がこのように増加している背景にはまず、人材不足がある。少子高齢化やコロナ禍の影響によって、さまざまな業界で労働人口が不足している。とくに製造業の現場では、単純な人手不足に加え、熟練者ら技術レベルのある人材の減少も目立つ。調査会社が発表した企業の人材不足に関する動向調査によると、2023年7月時点で正社員が不足していると感じる企業の比率は、51.4%と過去最高を更新した。このような流れを受け、企業では人材不足の解消と、DX推進の一環で、倉庫や工場、実店舗にロボットを導入する企業が増えている。

 2つ目の背景には、ロボットは疲れることもなく、ミスもしないので、ロボットを採用することで、人によるミスを減らすだけでなく、人件費を減したいというニーズがある。それに、人間の場合、業務の質を一定に保つことは決して簡単ではない。人それぞれ経験やスキルが違うので、どうしても業務の質に差が生まれるし、その日の体調や人間関係などが業務の質に影響を与える場合もある。ところが、ロボットはそのような影響も受けず、品質を安定的に維持し、生産性を向上することができる。

 3つ目の背景には、危険がともなう仕事や人間が立ち入ることのできない場所での作業をロボットに任せることで、作業がより安全になるからだ。また、「きつい」「汚い」「危険」を指す「3K」の仕事や、過酷な労働環境は人に敬遠される傾向があるので、それをロボットに任せることで、人間へのリスクを軽減させられるというメリットがある。ロボットは以前、産業ロボットとして主に自動車工場などで使われていたが、最近では人間の作業を手伝う協調ロボットが登場し、ロボットの需要を牽引している。

協調ロボット

 協調ロボットとは、人間と同じ空間で作業ができ、人間の作業を手伝うロボットのことを指す。協調ロボットは産業用ロボットに含まれるが、一般的にはより小型だ。産業用ロボットが人の作業を代わりに行うのに対し、協調ロボットは人間と一緒に仕事をする。産業用ロボットには安全柵が必要で、独立した空間で作業をするが、協調ロボットは安全柵が不要で、センサーで人間やスピードを感知し、必要に応じて作業スピードを調整することができる。協調ロボットは産業用ロボットに比べ導入費用も安く、小型のため移動も比較的容易であり、設置工事も必要なく、すぐに導入ができるといったメリットがあることから、さまざまな分野で導入が進んでいる。

 グローバル市場調査機関であるヴェリファイドマーケットリサーチ(インド)によると、協調ロボットの世界市場規模は、2030年に168億ドルに達することが見込まれている。年平均成長率も何と40%になるという。KDB未来戦略研究所(韓国)によると、協調ロボットの世界市場はデンマークのユニバーサル・ロボットが市場シェア40%を占めていて、日本のファナック、台湾のテックマン・ロボット、スイスのABB、中国のオーボ・ロボティクス・テクノロジーなどが競合しているという。

(つづく)

(後)

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