2024年11月23日( 土 )

生き残りをかけ、技術向上を図る(前)

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佐賀県鉄筋工事業協同組合
理事長 井手口 勉 氏

佐賀県鉄筋工事業協同組合 理事長 井手口勉 氏

 完成した建物の外からは見えないものの、重要な役割を担っているのが、鉄筋工事だ。その業界団体で、佐賀県の鉄筋工事業者をまとめる佐賀県鉄筋工事業協同組合(佐鉄工)の理事長・井手口勉氏に、業界の現状や課題、同組合の取り組みなどについて話を聞いた。

「出前講座」で入職者も

 ──佐賀県の鉄筋工事業者をまとめる佐鉄工の概要および役割をお聞かせください。

 井手口 佐鉄工は、会員13社および賛助会員3社の合計16社で構成されています。九州鉄筋工事業団体連合会(宮村博良会長、以下、九鉄連)を上部団体に持つ九州8組合の1つで、(公社)全国鉄筋工事業協会(岩田正吾会長、以下、全鉄筋)に所属しています。

 私が理事長に就任して8期15年目になりますが、一時期は廃業などを理由に9社まで減った時期もありました。ですが、近年はまた徐々に新たな会員が増えている状況です。というのも、当組合に加盟するメリットの1つとして、外国人特定技能1号取得者を直接受け入れられることがあります。日本人の若者の入職希望者が少ないなか、外国人実習生は非常に重要になっており、当組合でも外国人実習生を雇用していないところは2社だけですね。

 佐鉄工の主な役割として、組合間の情報交換や職人教育などがあります。2021年、全鉄筋の岩田会長が(一社)建設産業専門団体連合会(建専連)の会長となったことで、九鉄連を通じてより迅速かつスムーズに情報が入ってくるようになりました。その情報を組合内で周知・共有しております。

 教育面については、若手職人を中心に建設業災害防止協会佐賀県支部が開催している講習会への参加を促しています。講師の指導の下、フルハーネス型安全帯使用作業特別教育や安全衛生推進者教育を受講しています。そのほかにも、組合として技能検定や国家試験のための実技指導も行っています。

 組合の活動としてはほかに、ものづくりのすばらしさ、楽しさを知ってもらおうと、佐賀県立産業技術学院や佐賀県内の工業高校への「出前講座」を行っています。出前講座に参加した学生のなかには、当組合員の会社に入社し、今もがんばってくれている卒業生もいます。また、ここ3年はコロナ禍で参加できていませんが、佐賀県職業能力開発協会および佐賀県技能士会連合会が主催するものづくり体験型イベント「さがものづくり技能フェスタ」にも参加していました。ここでは、いかにして小中学生にこの業界の魅力を伝えていこうかと、趣向を凝らした催しを行っています。

井手口理事長が代表を務める(株)井手口鉃筋の工場
井手口理事長が代表を務める(株)井手口鉃筋の工場

労働環境の改善へ

 ──職人不足についての対応策について、お聞かせください。

 井手口 外国人雇用のほかには、定年退職者を再雇用している企業もあります。現場には出ていただかずに、工場内の仕事に従事してもらっています。不慣れなほかの仕事に就くのとは違い、今までの会社での仕事なので、喜んで働いてもらっています。なお、昔はこの業界にも女性職人がおり、工場内での仕事や現場での鉄筋の結束などで活躍していました。しかし、近年は男性職人さえ入ってこない状況で、当組合企業に女性職人はいません。

 建設業だけではなく、今やどの業界も外国人に頼っている状況です。当組合のなかには、日本人よりも外国人実習生を多く雇用している会社もあります。しかし、外国人実習生を数名雇用したはいいが、その後まもなく半数が突然辞めてしまったというようなこともよく耳にします。

 たとえば、高校卒の新入社員を雇用した場合の給料を18万円だとすると、外国人実習生には送り出し機関への費用など、さまざまな経費を加味すると20数万円になるでしょう。これは私見ですが、日本語が通じる人と通じにくい人では、どちらが辞めやすい傾向にあるかは、あまり変わらないと思います。日本人は車の免許が取得しやすいという利点もあります。であれば、高校卒の社員にも外国人と同じくらいの給料を払えばいいと思います。初任給だけでなく、定期昇給も必要でしょう。

(つづく)

【内山 義之】


<プロフィール>
井手口 勉
(いでぐち・つとむ)
1964年、佐賀県出身。第一経済大学 (現・日本経済大学)卒業後、福岡県内にて鉄筋工として入職。1990年、(株)井手口鉃筋に入社。専務取締役を歴任し2000年、代表取締役に就任。
鉄筋業界の未来を見据え、さまざまな技術を模索・考案し商品開発に携わる。
2016年、現代の名工を授与。
2017年、黄綬褒章を受章。

(後)

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