2024年11月26日( 火 )

岸田首相の致命的対中外交失態

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、プサンで行われるはずだった日中韓外相晩さん会中止に関して述べた11月26日付の記事を紹介する。

 11月26日、韓国の釜山(プサン)で2019年以来4年ぶりとなる日中韓外相会談が開催された。しかし、予定されていた3外相の共同記者会見ならびに議長国の韓国が予定していた晩さん会は中止されることになった。中国の王毅(ワンイー)外相が多忙で時間を取れなくなったためだとされている。

 しかし、これは表向きの説明に過ぎないと思われる。中国政府による何らかの意思表示であると考えるべきだ。この点に関連すると思われる重要事実が政治ジャーナリストの歳川隆雄氏によって指摘されている。https://x.gd/SKZy8

 記事タイトルは「岸田首相は好機を逃したのか・・・日中首脳会談、中国に「格下」扱いされた痛恨のミス」。歳川氏の指摘は正鵠を射るものと思われるが、記事タイトルは腑に落ちない。「中国を「格下」扱いした痛恨のミス」とすべきと思う。

 歳川氏が取り上げたのは米国サンフランシスコで開催されたAPEC首脳会議に際して実現した日中首脳会談。現地時間の11月16日午後に開催され、会談時間は65分におよんだ。岸田首相・習近平国家主席の会談に先立って11月9日夜に岸田内閣の外交・安全保障政策責任者である秋葉剛男国家安全保障局長が北京を訪問して中国外相の王毅氏と3時間半の事前協議を行っている。歳川氏はこの事前調整によって日中首脳会談に一定の時間が配分されることになったと指摘する。

 日本政府にとって日中首脳会談実現は最重要イベントであった。日中関係を改善する最重要の機会が訪れたのである。日本経済は日中関係悪化により極めて重大な影響を受けている。コロナ禍が明けて日本経済は大きく浮上できるチャンスを得た。

 しかし、本年7-9月期実質GDP成長率がマイナスに転じたことが象徴するように、景気回復が勢いを欠いている。最大の要因は日中関係悪化である。岸田内閣が強行した「処理後放射能汚染水海洋投棄」問題が重大な影響をもたらしている。岸田内閣の措置に中国政府が反発。中国は日本産海産物の輸入停止に踏み切った。

 連動して中国から日本への来訪者の激増が雲散霧消した。景気低迷にあえぐ日本経済にとって中国からの来訪者によるインバウンド需要の急増は救世主の意味をもつ。中国以外からの訪日観光者が急増し、コロナ前の訪日観光者数を回復しているが、中国からの来訪者が爆発的に増加すれば、その影響は計り知れないものになった。

 日中関係悪化で日本経済は千載一遇の浮上チャンスをふいにしつつある。水産関係事業者も声高に苦境の声を発していないが、極めて深刻な影響が広がっている。日中首脳会談開催はこの問題を解決に向かわせる絶好の機会だった。しかし、この会談で岸田内閣が痛恨のミスを犯したといえる。

 歳川氏が指摘するのは会談に出席した日中両国政府の顔ぶれの比較。中国が最高位の布陣で会談に臨んだのに対し、岸田内閣の対応は明らかに気の抜けたものだった。歳川氏が記事で明らかにした会談出席メンバーは以下の通り。

中国側:
習近平(シー・ジンピン)国家主席(共産党総書記・序列1位)
蔡奇(ツァイ・チー)共産党政治局常務委員・中央書記処書記(党序列5位)
王毅(ワン・イ―)中央外事工作委員会弁公室主任・外交部長
江金権(ジャン・ジンチュエン)共産党中央政策研究室主任
鄭柵潔(ジェン・シャンジェ)国家発展改革委員会主任
藍仏安(ラン・フォーアン)財政部長
王文濤(ワン・ウェンタオ)商務部長
馬朝旭(マー・ジャオシュー)外交部副部長

日本側:
岸田文雄男首相
村井英樹官房副長官
秋葉剛男国家安全保障局局長
嶋田隆首相首席秘書官
船越健裕外務審議官(政務)
鯰博行外務省アジア大洋州局長
大鶴哲也首相事務秘書官
太田学外務省アジア大洋州局中国・モンゴル第一課長

 中国が習近平主席に加えて党序列5位の蔡奇氏ならびに党政治局員でもある王毅外相、財政部長(大臣)、商務部長(大臣)が出席したにもかかわらず、日本側は岸田氏以外の閣僚出席はゼロだった。現地には西村康稔経済産業相と上川陽子外相が滞在していた。

 当然、西村経産相、上川外相が同席すべきだった。格式を重んじる中国が日本政府の対応に唖然としたことは想像に難くない。日中関係悪化は岸田失政の象徴たるものだ。

※続きは11月26日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「日中韓外相晩さん会中止の理由」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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