自衛隊の統合演習はAUKUS参加の布石か?
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、11月24日付の記事を紹介する。この11月10日から20日過ぎまで、自衛隊の統合演習が行われました。主な舞台は北海道と鹿児島で、訓練の一部には米軍も参加し、日米の相互運用性の向上も図られた模様です。こうした演習はこれまで実動演習で9回、指揮所演習で8回実施されてきました。1979年度以降、本年度で17回目になります。
今回は自衛隊員が3万人、米軍兵が1万人ほど参加。軍用車両3,500両、艦艇20隻、航空機210機と大規模なものでした。しかも、オブザーバーとしてオーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、ドイツなどNATO諸国に加え、韓国、フィリピンなどからも参加がありました。
今回の注目点は昨年末に改定された安保関連3文書に基づき、自衛隊戦闘機の離着陸訓練が全国の民間空港で初めて行われたことです。さらにいえば、東シナ海で存在感を強める中国の動きを念頭に、駐屯地のない徳之島でも訓練が実施されたこと。徳之島では水陸両用車(AAV)で浜辺に上陸した隊員が島の奪還を図る着上陸作戦や、輸送機からパラシュートで降下、増援を目的とした空挺作戦なども展開しました。
中国海軍による接続海域での航行が増えていることもあり、徳之島での訓練を視察した吉田圭秀(よしひで)統合幕僚長は「実際の島の地形、気象、海象の下、陸海空の防衛力を集中的に運用し訓練する意義は大きい」と述べています。
こうした実動演習と並行するかのように、英国の議会外交委員会からは「日本をAUKUSの一員として迎えるべき」との提言がなされました。AUKUSとはオーストラリア、英国、アメリカ3カ国の防衛協力の枠組みに他なりません。日本を加えた4カ国で先端軍事技術の開発を進め、防衛力の運用面での一体化を加速しようとするものと思われます。
日本はすでにこれら3カ国との間で研究開発に関する協力の体制は構築済みです。とはいえ、日本の場合は次世代の水陸両用技術など個別案件対応のため、基礎的な技術交流の範疇を出ていません。もし、日本がAUKUSの枠組みに正式に参加するようになれば、日本の防衛産業は国際化に欠かせないノウハウを入手する可能性が高まるはずです。
ネットワーク電子戦システムなど日本が誇る軍事転用技術もありますが、全体として日本の経済、技術力は低下傾向にあるため、将来的には科学技術分野への投資も制約されることが目に見えています。岸田政権は5年間で防衛予算を倍増すると訴えていますが、財源は確保されていません。しかも、増額分の大半は自衛隊員の待遇改善のための予算に振り分けられる見通しです。
現時点でも日本の防衛産業にとっては自衛隊がほぼ唯一かつ最大のお得意さまになっており、海外市場への参入は極めて限られています。こうした事態を打破するためにも、AUKUS諸国の防衛産業との連携は新たな活路を見出すことにつながるかも知れません。ただ、問題は、AUKUSを中国包囲網と見なし、日本の参加を警戒する中国の出方です。日中韓3カ国の首脳会議が模索されるなか、中国の反発にどう対処すべきか、日本の外交力が問われるばかりです。
次号「第365回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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