【由布市問題(12)】議員の懲罰を求める「玉の湯」 陳情書に見る問題の本質(後)
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(株)玉の湯が、排水問題において住民側に寄り添って活動する髙田龍也・由布市議会議員の懲罰を求める陳情書を由布市議会に提出した。当該陳情書には図らずも、問題の本質が浮き彫りになっている。
髙田議員の活動は議員の本分に基づく
前記の通り、排水問題は玉の湯と住民間の利害問題にとどまらず、公正な施策を行うべき行政の問題にも関わっている。よって当該問題における髙田議員の活動は、議員として住民の意見を把握し反映する機能だけでなく、行政の施策を監視する機能も兼ねている。
今回の玉の湯による懲罰請求が、議員活動の本分である行政の監視機能に対するけん制とならぬように、由布市議会は地方自治の民主主義を司る機関として慎重に審議する必要がある。
議会は玉の湯に説明を求めるべき
玉の湯が髙田議員を懲罰請求する根拠として「玉の湯の意見をまったく聞くことなく」「住民の利益・言い分だけ」を取り上げているが、それらはそもそも玉の湯が住民との話し合いを拒否していること、玉の湯が行政や一部議員と結託していることを疑わせる由布市の状況に原因があるのだ。さらに、本件懲罰請求は、議員の本分としての行政の監視機能に対するけん制にもつながるものである。
以上2点を鑑みて議会は、議会条例の第7条、「議会は、請願及び陳情を市民による政策提案と位置付けるとともに、その審議においては、これらの提案者の意見を聴く機会を設けるよう努める」に基づいて、陳情の提案者である玉の湯代表の桑野和泉氏を総務委員会に招致し、同社が当初から住民との話し合いを拒否している理由、ならびに玉の湯と行政との関係についての説明を求めるべきである。
世界を気にするも、地元は気にかけない玉の湯
以上が玉の湯の陳情に対する当社意見の本旨であるが、最後に陳情書中の以下の文章に対しても付言しておく。
このような問題ある発言を、YouTubeという動画サイトで行うと、全世界中にこの動画が配信されることとなり、極めて問題であると考えます。
残念だが、これについてはもはやいうべき言葉が見つからない。玉の湯は動画の内容を見ているのか、理解できているのか。動画の配信によって自社の悪評が世界的に拡散することについては気になるらしいが、肝心の内容である排水問題の解決を訴える動画の主旨や、地元住民の苦悩にはまるで関心がないのだろうか。
玉の湯が老舗旅館と言われるゆえんは、外国人観光客が大挙して由布院に押し寄せてくる前から、由布院が日本全国に知られるようになる前から、地元と共に歩み培ってきた独特の温泉地の風情の中で、玉の湯が欠かせない景色の一つとなっているからに他ならない。その玉の湯が、まるで地元を気にかけないかのような文面を見ることは、地元民でない者の目から見ても、得も言われぬ寂しさを感じさせるのである。
議員懲罰についての司法の見解
ところで、本件、懲罰請求がそもそも議会でどのように扱われるかは、実は微妙である。というのも地方議員の懲罰については、最高裁で次のような判例がある。
地方自治法第 134 条が「議員の懲罰を規定しているのは、議会の秩序を維持し、その運営を円滑ならしめるためであつて、議員の個人的行為を規律するためではない。従つて議員の議場外の行為であつて、しかも議会の運営と全く関係のない個人的行為は同条による懲罰の事由にならないものと解するを相当とする。(最高裁判所第二小法廷昭和28年11月20日判決)
上記判例について、横浜市議会の議会局政策調査課が2021年に発行した「法制ジャーナル」第6号は次のように解説する。
議会の運営とまったく関係のない議員の議場外における個人的行為(暴力行為、窃盗、飲酒運転による交通事故等)は、議会の品位や権威を間接的に傷つけるものであったとしても、議会の開会中あるいは閉会中を問わず、懲罰を科すことはできません。
全国各地の地方議会で、議場外での飲酒運転による交通事故などで辞職勧告決議が提案され可決するケースがあるが、あくまでも勧告であり強制力はない。強制力を伴う懲罰動議は出すことはできない。
本件、髙田議員の場合は言わずもがなである。というわけで、本件については由布市議会がどのように扱うかをまずは見守ることとなる。(了)
【特別取材班】
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