品質向上と安定供給、待遇向上で職人不足解消へ
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九州サイディング事業協同組合
「自分たちの業界の未来は自分たちで切り拓く」──その決意の下に創設されたのが、九州サイディング事業協同組合だ。業界が抱える諸問題を解決し、ひいては施工技術者である外装職人たちを守る。そうすることで、ユーザーは安心して長く住める家を手に入れることができるという。
次世代への責任と使命感
2020年に発足した九州サイディング事業協同組合。上位組織には、全国サイディング事業協同組合連合会があり、各エリアの協同組合を支部として束ねている。九州の組織立ち上げについては、発足の声かけに対し、63名の組合員が異例のスピードで集結したという。
組織化に対して、理事長・原和寿氏は「協同組合の活動はサイディング業界の未来を拡げる可能性をもっています。私自身、恩返しの意味を込めて発展に貢献したいという強い思いがある。組合員の皆さんの同じような思いが共鳴した結果ではないでしょうか」と語る。
副理事長・金子大介氏は次のように続ける。「私たちの仕事はカタチが残る仕事です。『あぁこの家は自分が手がけた』と、長年続けていると街角でそうした出会いが繰り返されるようになるのです。家を建てる人にとって、ほとんどは一生に一度の大きな買い物。その喜ばしい瞬間に立ち会えるわけですから、誇らしくないわけがない。この手応えを子どもたちの世代にも伝えていきたい。そんな使命感が情熱を注ぐ原動力になっています」。
現在、組合執行部がとくに推し進めているのは、消費者保護のための品質向上と安定供給。そして現場で活躍する職人技術者の待遇向上、さらには人材育成につながる市場環境づくりが中心だ。その実現に向け、技能講習会や国家資格取得支援、業種認定に向けた支援などを行う。また、国土交通省への提言、組合員による建設業業種認定、繁忙期における組合員相互の工事支援、組合独自の認定資格制度の創設なども行う。
組合活動の基軸となる活動宣言には、それらの行動指針として「職人さんと家族を守る」「消費者に対する安心安全の提供」「業界イメージを明るくし若者が働きやすい環境をつくる」といったわかりやすい文言が並ぶ。そしてもちろん、サイディング業界全体が抱える人手不足の問題については、組合としても全力を挙げて解決策を模索していく構えだ。
夢を描ける業界へ
さて、ここで改めて「サイディングとは何か」に触れておこう。サイディングが日本で使われ始めたのは50年ほど前。それまでモルタル壁が主流だったところに、耐久性、そして工期の短縮化、メンテナンスで優位性があるサイディングが取って代わり始めた。
「私たちが主に取扱うのは窯業系サイディングと呼ばれるものです。主原料はセメント質原料およびパルプ・木繊維といった繊維質原料です。これを成型し、養生・硬化させ、さらに塗装して外壁材に仕上げるというものですが、現代建築においてもはや欠かせない存在です」(原理事長)。実際、20年の調査では、全住宅外壁の80%超で用いられており、店舗・公共施設や中高層の建物などにも使われるなど、使用対象となる建築物は日々拡大している。
しかし、より良い外壁に仕上げるためには、建材の性能やデザインだけでなく、職人の技術力も重要となる。そこに立ちはだかるのが、人手不足という大きな壁だ。
品質や施工方法など、メーカーの基本技術は確立されているものの、施工事業者がそれぞれの考えで低価格での提供を優先した結果、品質不良の問題も生じている。しかもユーザーにはわかりにくいため、数年が経過してからそれが判明することもある。そして価格のみの競争は、必然的に職人の賃金を下げてしまうことにもつながる。家を建てるといえば、かつては親方がいて弟子がいるというのが当たり前だったが、昨今は環境の変化にともない一人親方が大半を占める。結果、若い世代を迎え入れることができず、せっかく集まる有望な人材を育てようがないという状況に陥ってしまっているのだ。
「そんな若い世代を積極的に迎え入れ、彼らが大きな夢を描ける業界になっていくことこそ取り組むべき課題です。サイディングの仕事がやりがいや大きな可能性をもっていることを広く知っていただき、受け入れる土壌をつくっていくことも、私たちの役割です」──と、原理事長と金子副理事長は、新しい世代へつなげていくことの重要性について声をそろえる。
まずは組合員数100へ
同組合が当面の目標として掲げるのは、組合員数を100にすることだという。「1人ではできないことも、2人になれば何とかなるかもしれない。それが100人になれば、どれだけ可能性が膨らむことでしょう」(原理事長)。
国策でもある良質な住宅ストック社会に向け、職人の安定的な確保と教育、そして適切な施工費が提供される環境整備のためにも、外国人労働者の受け入れは欠かせないが、サイディング業界は比較的新しい業界ということもあり、彼らを迎え入れるための準備も未熟である。そのため国に働きかけるほか、さらには元請であるハウスメーカーにも自分たちが置かれた現状を強く訴え改善していきたいという。組合が大きく発展して存在感が高まれば、こうした取り組みはより円滑に進められることなる。
「私たちは結びつくことで強くなり、あらゆる場面でその影響力を発揮できることになるでしょう。まだまだ小さな取り組みですが、一歩一歩着実に事を進めていくことで、きっと大きなうねりを起こすことができる。その理想を念頭に置き、執行部としてはそのために最大限の努力をしていく所存です」。原理事長が語るのは、サイディング業界の大きな未来だ。
コロナ禍で随分と足止めされたという九州サイディング事業協同組合の活動だが、コロナが収束したことで満を持しての再起動期に入ったという。
【天野 祐次】
<プロフィール>
理事長:原 和寿 氏
外装工事(全般)、屋根、外壁塗装を手がける(有)原外装工業(春日市)の代表取締役を務める。趣味は筋トレとゴルフ。副理事長:金子 大介 氏
外壁、屋根、塗装から防水工事、建材・住器まで幅広く手がけるベステック(株)(那珂川市)の代表取締役を務める。趣味はゴルフ。
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