最終氷期における世界の古代遺跡と日本民族
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縄文アイヌ研究会主宰
澤田 健一 氏NetIB-Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載しているが、同代表理事の加藤春一氏より、縄文アイヌ研究会主宰者の澤田健一氏による、最終氷期における世界の古代遺跡と日本民族に関する論考を共有していただいたので、掲載する。
古代ヨーロッパと古代シベリアの後期旧石器時代遺跡を残したのは日本民族であると解説すると、なぜ日本民族の遺跡ばかりなのか疑問に思われたり、そんな筈はないと疑いをもたれたりする方もいらっしゃることでしょう。
そこで最終氷期における世界の古代遺跡について見ていきます。
人類の歴史を見る前に、まず地球の歴史を確認しておきます。
・藤尾慎一郎著 『日本の先史時代』(中央公論新社)16頁2行目から
「地質学では約260万年前以降を第四紀と呼んでいるが、そのなかでも、大半が氷期下にあった1万1700年より前の地質時代を更新世、その後の間氷期の地質時代を完新世と呼んでいる」更新世においては何回も氷期と間氷期をくり返しており、最後の氷河期を「最終氷期」と呼び、その時代が約5万年前から始まったとされる後期旧石器時代の期間にあたる。つまり、後期旧石器時代の地球は、人類の活動にとって過酷な期間であったのです。
そのころの地球の姿を確認しておきます。
・安田善憲、阿部千春著 『津軽海峡圏の縄文文化』(雄山閣)、9頁4行目から
「スカンジナビア半島は氷河時代には厚さ3000m以上の氷床に覆われ、アルプス山脈も中央ヨーロッパ平原も、氷河の下か周氷河地帯でした。アメリカ大陸北部も厚さ3000m以上のローレンタイド氷床に覆われていたのです」この状況を確認したうえで、いよいよ後期旧石器時代の人類(ホモ・サピエンス)の活動状況を見てみる。このころの有名な洞窟壁画として、アルタミラ洞窟やラスコー洞窟の壁画があります。
・セサル・ゴンサーレス・サインス、ロベルト・カチョ・トカ著/深沢武雄編/吉川敦子訳/関雄二監訳 『スペイン北部の旧石器洞窟壁画 概説』(テクネ)、20頁後ろ5行目から
「ヨーロッパの後期旧石器美術に関する遺物としては、洞窟壁画と動産美術があることがわかっていた。(中略)双方とも南は地中海沿岸からイベリア半島、北はピレネーを経て南フランスから東欧にかけて広く分布しているが、とくに顕著なのはアルタミラ洞窟を擁する北スペインのカンタブリア地方とラスコー洞窟を擁するフランスのドルドーニュ地方であり、それぞれ100余の壁画包含洞窟が確認されている」有名な壁画群がヨーロッパに広がっているが、それでも一地方の数としては1世紀以上探しても100単位です。
ところで、後期旧石器時代の中部ヨーロッパには、ヨーロッパ人は寒すぎて住んでいなかったことを前回までに説明しました。それでは南部ヨーロッパはどうだったのでしょうか。
・港千尋著 『洞窟へ──心とイメージのアルケオロジー』(せりか書房)、143頁後ろ3行目から
「オーリニャック期からソリュトレ期にかけての旧大陸は氷河期にあたり、(中略)ヨーロッパ北部は万年雪に覆われていたが、フランスの南部にあたる地中海沿岸は、1年のうちに数カ月は雪が解ける比較的しのぎやすい気候で、気温も零下20度から15度くらいの間だったのではないかと想像されている」数カ月は気温が上がると言っても零下20度なのです。この気温をしのぎやすいと表現するのは無理があると思いますが、今回は目を瞑っておきます。
次にお隣の朝鮮半島を見てみましょう。
・田中俊明著 『朝鮮の歴史――先史から現代』(昭和堂)、4頁本文15行目から
「本格的な旧石器時代遺跡の確認・調査研究は1960年以降、(中略)これまでに確認されている遺跡は100余ヵ所に達し」朝鮮半島では中期旧石器時代の遺跡も含んでの遺跡数ではあると思われるが、それでもせいぜい100程度なのです。
前回まで見てきた、有名な遺跡がいくつも存在しているシベリアの後期旧石器時代遺跡群であっても100単位に収まるでしょう。
ところが、日本の後期旧石器時代の遺跡数は、それらより2ケタも多いのです。
・佐藤宏之著 『旧石器時代 日本文化の始まり』 敬文舎 6頁本文1行目から
「日本旧石器学会が2010年に集計したデータによれば、日本列島の旧石器時代の遺跡数は1万4,500(ただし文化層ごとの合計)にのぼる。更新世(氷河時代または氷期)に属する縄文時代草創期の遺跡が2,500なので、合計すると、日本列島の更新世の遺跡は1万7,000におよぶ。この数は、世界的にみても突出した数値であり、密度となる」日本列島の旧石器時代遺跡の説明にあるように、重複文化層を1遺跡と数えても、旧石器時代遺跡が1万150遺跡、縄文時代草創期遺跡が2,432遺跡であり、合計12,582遺跡にもなります。上記のごとく、この数は、世界的にみても突出した数値であり、密度なのです。
しかも、日本に旧石器時代が存在していたことが認められてからまだ半世紀しか経っていません。おそらく今後もまだまだ発見が続くでしょう。
つまり、後期旧石器時代の人類の遺跡はほぼ日本列島に集中しているのです。
しかも、海外の遺跡から出土する遺物には、その当時は日本民族だけしか持っていなかった技術でつくられた物や、日本固有の物があるのです。別の機械に、地域別に順をおって解説していきます。
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