谷口元国連大使のご逝去を悼む
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日本ビジネスインテリジェンス協会理事長
中川 十郎 氏日本ビジネスインテリジェンス協会名誉顧問として2008年以来15年間ご指導をいただいた谷口誠元国連大使が14日に急逝されたとの連絡に接し、残念で断腸の思いである。
7日に電話で新年のご挨拶をした。年末に部屋で倒れ肋骨にひびが入り病院で治療しているが、担当医師の処置が的確でなく困っているとのことだった。夜風呂に入るのが怖いと話していた。そこで料理をされる賄のお手伝いさんがいる午後7~8時ころまでに風呂に入ることをお勧めした。しかし、夜遅くまで読書や執筆を行うので、それが終わってから夜半にゆっくり入浴し、体をあたためて就寝するのが習慣になっており、なかなか習慣は変えられないとのことだった。
谷口大使の人格は高潔で、人の悪口を言うのを聞いたことがなかった。講演に際しては必ずレジュメを作成し、何回も添削していた。興に乗るとお得意のカンツォ―ネをイタリア語で歌うのが常だった。その美声ももう聞かれない。
谷口大使との出会いは経済企画庁次官を歴任した塩谷隆英氏とのご縁がきっかけである。今後、日本にとって重要な中国、ロシア、モンゴル、韓国、北朝鮮という北東アジアの研究が重要であり、これらの地域を研究する「北東アジア研究交流ネットワーク」(NEASE-Net)を結成したいとして、塩谷氏が筆者に創設委員を依頼してきた。
同ネットワークの代表理事を国際経済の大家の谷口元大使に依頼。そのご縁で1992年の創設以来、筆者が理事長をつとめている「日本ビジネスインテリジェンス協会」(Business Intelligence Society of Japan)の名誉顧問をお願いした。長年、公私ともにご指導をいただいたことに深謝している。たまたま筆者が80年代にニチメン(現・双日)の駐在員としてニュ―ヨークで勤務していたとき、米国ニチメンの社長および副社長が谷口大使とは一橋大学の同窓だった誼で、ゴルフなど一緒にしたこともあり、筆者にもなにかと格別のご配慮をいただいた。
谷口大使はケンブリッジ大学で経済学を学ばれただけあり日本の外交官のなかでも国際経済に関する超一級の実力者で、国連貿易開発会議の議長の重責を務めるなど経済外交で活躍した。さらにパリのOECD(経済協力開発機構)でアジア出身者初の事務次長として実力を発揮。後に、早稲田大学大学院教授、岩手県立大学学長、桜美林大学アジアユーラシア研究所長を歴任するとともに、私淑する新渡戸稲造の塾を創設。塾長として流暢な英語を駆使して活躍した。
12月12日に日本記者クラブで開催のBIS 33周年記念 第184回情報研究会・忘年会で講演していただいたのがこの世での最後のご講演となった。93年にわたり国内外でご活躍された谷口大使のご冥福を200人のBIS会員とともに衷心よりお祈りする次第である。
合掌
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