『脊振の自然に魅せられて』「初登山:脊振の氷瀑」(後)
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朝の冷気で氷ついた氷柱は気温が上がって溶け始め、長さ1mはあるたくさんの氷柱から雫がポタポタと落ちていた。氷瀑の横幅は50m、高さ10mはある。氷瀑の真下まで進む、足元は凍っていないのでアイゼンの必要も無かった。
深呼吸で山の冷気を吸い込み、心を落ち着かせた。氷瀑の真下から動画撮影をする。曇り空のなかでも氷柱は輝いていた。動画カメラをカメラモードにしザックに1脚を突っ込み固定させ筆者の記念写真を撮った。
一息つき、氷瀑下の1m四方の平な部分(テラス)にシートを広げ、足を踏ん張り安全を確保し腰を下ろした。場所の真下は崖である。油断すると10mは転げ落ちる。持参したコップと保温ポットをザックから取り出し、チューブ入りのコンデンスミルクをコップに搾り出し、湯を注ぎホットミルクをつくった。久し振りに山の雰囲気を味わった。
一段落した処で取り出した物をザックに収納し、さらに斜面を登る準備をした。上部の斜面にもロープを垂らしてあった。緩みがないようにロープを引っ張り斜面へ足を一歩進めた。すると、バランスをくずし思わず沢に尻餅をついた。小さな沢なので幸い濡れもせず、強打もしなかった。気合を入れ直し45度の急斜面にストックを差し込み一歩、一歩とよじ登った。
20mも進むと氷瀑を真横に見る場所にきた。灌木の根に足を確保し、氷瀑を真横から撮影、さらに斜面を登って氷瀑の上部からも撮影した。撮影は終了した。縦走路まで30分と予測し、道なき道をスマホのGPSで現在地を確認しながら尾根の上部へと進んだ。所どころ赤テープが付けてあった。赤テープを見ると人が歩いた跡なので安心感はある。
ミヤコザサが見え始めたので縦走路は近いとわかる。脊振ではミヤコザサは標高700mから見え始める。ミヤコザサのなかの20m先に動いている動物が見えた。猪である、筆者の気配を感じ逃げていたのであろう。比較的ゆっくりと移動していた。さらにミヤコザサを分け入ると笹の葉を敷き詰めた動物の寝床らしき物があった。「へー、こんな所で寝ているのか」ときれいにつくられた寝床に感心した。
氷瀑地点から斜面を藪漕ぎして30分、やっと縦走路に出た。縦走路のポイントに赤テープが2つ巻き付けてあった。テープの付け方からIが付けた標識と判断する。このポイントから、縦走路を10分登ると唐人の舞である。そこまで行きしばらく休んだ。
佐賀県が設置した写真付きの大きな標識がある。説明書きには「古に唐人が日本へやってきて、この地から生まれ国を懐かしみ、その方向を眺めた場所と謂れがある」と。しばらく休んで、高さ5mもある岩に登り佐賀〜糸島半島〜博多湾〜福岡市街地の展望を楽しんだ。脊振山頂と気象台のレーダーも直ぐそこに見えていた。15分ほど休憩し登山口へと下山した。
登山口に1台の軽自動車が止まっていた。帰宅してIに氷瀑へ行ってきたことを報告すると、軽自動車は自分のものだという。同じ日に脊振の山に登っていたのである。ただしIのルートは別の場所であった。気温が下がって見事な氷瀑が見られるときに一緒に行こうと伝えた。
(了)
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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