大災害を契機に活用が広がるコンテナタイプ建築物
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災害はインフラや建物を破壊し、地域社会に甚大な被害をおよぼすため大変痛ましいものだが、その一方で新たな仕組みやビジネスのかたちを生み出す契機にもなる。
13年前の東日本大震災では、地震・津波による被害と、原発事故の影響から約5万3,000戸の仮設住宅が建設されたが、それでも間に合わず、民間賃貸住宅や公共住宅7万戸弱が「見なし仮設」という名で活用されたのは記憶に新しい。
これも大規模災害に適応するための新たな仕組みといえるものだが、宿泊施設についても同様のことが指摘できる。あまり知られていないが、東日本大震災の被災地では、復旧・復興活動に関わる人たちが現地での宿泊に大変な苦労をした。
復興・復旧を支えたコンテナホテル
とくに発生当初には、捜索活動などにあたる警察・消防関係者らと、復旧工事にあたる工事関係者が大挙して被災地に赴いたこと、さらに被災地の宿泊施設そのものが被災していたことから、被災地周辺では宿泊先が極度に不足していた。
そのため、たとえば津波被災地から遠く離れた内陸部の宿泊施設から毎日、往復5~6時間もかけて現場に赴き、宿泊施設に戻っても1つの客室を複数の人たちが連日、雑魚寝をして利用していたなどという、過酷な状況が散見された。
大規模な災害では、被災した人たちはもちろん、復旧・復興関係者の宿泊施設の確保も大きな課題となるのだ。そうした状況を改善することを狙いの1つとして登場したのが「コンテナホテル」である。
画像(1)
「VALUE THE HOTEL 仙台名取」の外観一般的に物流で用いられるコンテナに窓やドアを取り付けし、断熱材などを施したうえでベッドやバスなど各種設備も配置した客室仕様に改造したもので、複数のコンテナが集まってホテルを形成する。
宮城県名取市にある「VALUE THE HOTEL 仙台名取」は、12年に開業した日本初のコンテナホテルである。2階建(画像(1))、全314室で、着工から4カ月で完成した。
画像(2)
「VALUE THE HOTEL 仙台名取」の客室内客室内部は一般的なビジネスホテルと同様の仕様(画像(2))で、特別なこだわりがない人なら滞在に違和感はないレベルの快適さがある。なお、レセプションやレストランなど共用施設は鉄骨造である。
東日本大震災以降、東北地方を中心にいくつか開設され、それらは長く復興活動に勤しむ関係者の拠点になってきた。現在は各地域の観光の拠点として、地域振興にも貢献している。
中間市では
地域活性化の期待も福岡県にもコンテナホテルはある。中間市では22日に「HOTEL R9 The Yard 中間」が開業(画像(3))。客室は独立(平屋)の45室で、すべてにタイヤが設置されている。有事の際に客室を被災地へ移設し、避難施設などとして利用する「レスキューホテル」の役割も担う。
こちらは建築用コンテナを活用したもの。ちなみに、このホテルを運営している(株)デベロップ(本社:千葉県市川市、岡村健史代表)は、同様のコンセプトの「R9 HOTEL」を栃木県以南で81店舗、福岡県内では4店舗を展開している。
画像(3)
「HOTEL R9 The Yard 中間」の外観中間市のコンテナホテルは、同市初の「ビジネスホテル」。開業にあたっては福田健次中間市長が出席するなど、市民からビジネス客、観光客などの誘致、それによる地域活性化に強い期待が寄せられているようだ。
ところで、1月1日に発生した能登半島地震では、二次的な避難場所などとしてコンテナのような移動式の建築物を提供する動きが見られる。代表的なのはトイレだが、コンテナホテルのように住空間としての完成度が高いものもある。
日本ムービングハウス協会(札幌市)は石川県輪島市と珠洲市に60戸の移動式木造住宅を提供することを明らかにしている。この建物は供給までのスピードの速さや、繰り返しの使用が可能なことから今、政府や自治体などから注目されているという。
いずれにせよ、コンテナタイプの建物を住居やホテルなどとして活用する仕組みやビジネスは、大規模な災害が発生することがなければ、日本において定着しなかっただろう。
南海トラフ地震や首都圏直下型地震など、近い将来起こるとされる大規模災害の備えとしてはもちろん、中間市のように観光業をはじめとする地域の活性化の期待も背負い、このタイプの建物は今後、需要がより高まりそうだ。
【田中 直輝】
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