2024年11月21日( 木 )

九州屈指のサブコンに聞く、大型工事が増加する業界の現状(後)

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中村工業(株)
代表取締役社長 中村 隆元 氏

 地場トップクラスの専門工事・中村工業(株)は、今年4月に創業119周年を迎える。2024年は、東京の再開発が本格化するなど全国的にも大型工事が予定されており、技術者および技能者の育成が難しくなるという。業界環境の現状や職人不足への対応策などについて、中村隆元社長に話を聞いた。

職人不足への対策

 ──採用の現状はいかがですか。

 中村 おかげさまで、毎年採用することができていますが、建設業界内だけでなく、他業種との獲得競争になっていることを実感しています。コロナ禍が収束したこともあり、九州の工業高校や商業高校、普通高校でも採用企業の数が爆発的に増えました。たとえば福岡市内の伝統ある工業高校では約300人の卒業生に対して約3,000社からの求人があったそうですが、運送業やホテル業、その他サービス業など、さまざまな業種が含まれています。

 また、採用活動の活発化にともない、遠くない時期に九州でも東京や大阪の初任給の水準に近づくでしょう。当社ではそれを見据えて、数年前から初任給を段階的に引き上げています。たとえば、とび職・オペレーターに関しては20万円から23万円に引き上げました。ただし、それでも東京の水準にはおよんでいません。

実技研修
実技研修

 ──「2024年問題」を含めた職人不足への対策をお聞かせください。

 中村 4月に向けて、環境整備に取り組んできました。「2024年問題」に限らず、社員が働きやすい職場づくりも非常に重視しています。当社では女性の採用も積極的に行っており、多くの女性社員を雇用しております。とび職の女性職長ほか、工場建設の現場でも女性管理者を配置するなど、女性社員が現場でしっかりと活躍してくれています。女性がより働きやすい職場環境のため、女性のためのスペースづくりに努めています。

 外国人技能実習生の受け入れも、職人不足対策の一環です。現在14名を雇用していますが、30名規模への増員を予定しています。もちろん、待遇は日本人と同じですし、教育についても当社の篠栗機材センターで、足場の組み立て・解体・ワイヤーの編み込みなどの研修を、日本人の新入社員と同じように受講してもらっています。

 また、入社1年目の社員を対象にした社員寮も19年に増築リニューアルしました。親御さんも生活する場がはっきりと見えたほうが、安心されるでしょう。外国人実習生も同じ寮に住んでおり、生活するなかでコミュニケーションがとれるとして、とても喜んでくれています。増築して83室となった社員寮ですが、毎年10人の新入社員と外国人実習生の雇用を考えると、部屋が足りなくなるのは明白なので、新たな寮の新設も検討しています。

現場主義へ原点回帰

 ──専門工事業を含め建設業界の課題、それに対する取り組みなどはいかがでしょうか。

 中村 (一社)日本建設業連合会(日建連)と地場ゼネコンさんとの労務単価に、約1万円の差があることが課題だと考えています。九州地方のCCUSの加入率は全国で最も低いようですが、これは地場ゼネコンさんのシェアが高いからです。

 賃上げや寮の新設といった福利厚生の充実には、適正価格での受注が必要となります。昨年末も国土交通省九州地方整備局の方々に、もっとさまざまな制度の平準化をしていただくように求めましたが、現状は難しいでしょう。

 また、働き方改革による残業時間の上限規制による専門工事業者へのしわ寄せも懸念しています。本来は元請さんが行ってきた業務を、専門工事業者に委託することも起きかねないなと感じています。

 勤務効率化や労働時間削減を図るため、DX化は不可欠ですが、現場は外注に任せ、社員には内勤業務にあたらせるという方向に向かうのではないかと思っています。現場にカメラを設置し、日々の進捗状況を会社にいながらいつでも見ることができますし、記録を取ることもできます。しかし、それでは現場・現物で確認することが疎かになるのではないかと、強く危惧しています。

イメージ    DX化や生成AIの導入で労働効率は上がりますが、現場・現物を置き去りにするわけにはいきません。現場主義という原点に回帰することが大事だと思います。ただ、DX化、生成AIなどを使えば、今までは数時間かかっていたプレゼン資料などを20分で作成することができるようになり、労働時間の削減に大きく寄与しますので、現場主義のためにも積極的な活用を推奨しています。

 今年4月には創業119周年を迎えます。全社で原点回帰し、さらなる安全・安心な施工を第一に考えながら、日々邁進してまいります。

(了)

【内山 義之】


<プロフィール>
中村 隆元

1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校、福岡建設専門学校卒。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
URL:https://nakamura-k.com

(前)

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