北朝鮮による拉致問題の解決に欠かせない日本側の前向きな取り組み(前)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、2月16日付の記事を紹介する。岸田政権はアメリカのバイデン政権が進める「中国包囲網」に影響され、独自のアジア外交や対中政策を打ち出せていません。確かに中国の軍事力の増強は脅威に他なりませんが、中国は日本にとって最大の貿易通商相手国でもあります。日中双方の経済発展と北東アジアの安定にとって、今ほど相互理解と協力が必要とされるときはないはずです。
故安倍首相は「国際社会の秩序が崩れ、複雑化している。日米同盟は重要だが、アメリカが世界の警察官の役割をはたすことはもはやできない。ゆえに、パワーバランスを計算しつつ、各国との関係を強化し、国益を追求しなければならない」と述べていました。
そのうえで、彼が最重視していたのは「北東アジアにおけるパワーバランス」です。なかでも、その関心は中国とロシアに向けられていました。曰く「中国の力が増大している。その圧力を正面から受けるなかで、日本は中国とのバランスを取る意味でもロシアとの関係強化が欠かせない」。要は、独自の対中、対ロシア外交を追求しようと目論んでいたのです。いわゆる「大和の国」構想でしたが、アメリカからは危険視されることになってしまい、日の目を見ることなく消されてしまいました。
アメリカの対外戦略の中心には「戦争ほど儲かるビジネスはない」という軍産複合体の意向が強く投影されています。かつてアイゼンハワー大統領が退任演説で警鐘を鳴らした通りです。現在進行中のウクライナ戦争でも、それ以前のアフガニスタン侵攻やベトナム戦争、はたまた朝鮮戦争のいずれにおいても、外交努力よりも「力による支配」を優先し、結果的に失敗を重ねてきたのがアメリカと言えます。
故安倍首相は、そうしたアメリカの限界を認識し、新たなバランス外交に舵を切ろうと水面下で中国やロシアとのパイプづくりに腐心。外交用語で「テタテ」と呼ばれる「首脳2人同士の会談」をプーチン大統領との間でも重ねたもので、その回数は27回におよびました。
また、北朝鮮による日本人拉致問題の解決のために、旧統一教会との人脈づくりにも精力的に取り組みました。創始者の文鮮明総裁が北朝鮮の出身であり、金日成王朝とのパイプ役を期待したからです。残念ながら、安倍元首相に限らず、北朝鮮との独自のパイプづくりに動いた日本の政治家はことごとく闇に葬り去られてしまいました。
日本が朝鮮半島を支配していた時期、資源の豊かな北朝鮮側でその開発に必要なインフラ整備や人材育成に取り組んだのは三菱グループを筆頭にする日本企業でした。現在も北朝鮮が継続する地下核実験やミサイル発射に欠かせないレアメタル等の資源に関する情報は日本に多く残されています。
さらに言えば、日本統治が終った後も、アメリカ政府の要請を受け、日本の公安組織は水産業支援や環境調査の名目で、北朝鮮の核、ミサイル技術の精度を確認するデータの収集にまい進してきたものです。朝鮮半島周辺の海域や河川から汚染水を回収し、北朝鮮の軍事力の隠された実態を究明しようとしてきました。この分野での日米協力は今日まで継続されています。
(つづく)
著者:浜田和幸
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