2024年05月19日( 日 )

「能登半島地震」から約2カ月~南海トラフ地震による宮崎津波・高潮・洪水被害への警告~(後)

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(株)アクロテリオン
代表取締役 下川 弘

 先日、友人から息子さん夫婦が宮崎市内に一軒家の新居を構えるとの話があり、御祝いの言葉を申し上げた。しかし、ふと宮崎市内のどこに建てられるのか気になった。今後30年以内に発生する確率が70~80%といわれる「南海トラフ大地震」(M8~9クラス)があるからだ。昭和東南海地震、昭和南海地震の発生から約80年が経過していることから切迫性が高い状態だと気象庁が発表している。

 地震そのものの大きさもさることながら、太平洋沿岸に押し寄せる津波・高潮・洪水などの被害も相当な被害になると考えられている。国交省・国土地理院が出している防災マップ(重ねるハザードマップ)を開くと、改めて大変興味深いことがいくつかわかる。

4.宮崎市内(宮崎空港)のハザードマップから

 延岡市と同様に宮崎市内の白地図に津波・高潮・洪水のハザードマップを重ねて見ると、これまた大変なことがわかった。「宮崎ブーゲンビリア空港」である(【図6】)。

 空の交通の要である宮崎空港がほぼ全域で津波被害にあう可能性があるという図である。そうであるならば、南海トラフ大地震が起こり、それによる津波被害によって、震災後しばらくの間は空港閉鎖になってしまう可能性があることから、宮崎県内への災害救助の派遣および災害支援物資の空輸がままならない可能性も出てくるということだ。

 しかも「南海トラフ大地震」が発生した場合には、その被害範囲は関東から東海・関西・四国、そして九州の太平洋沿岸約1,000km以上の広範囲にまたがっての大規模被害が予想されるため、自衛隊による災害緊急派遣も、まずは九州菅内にある陸上自衛隊西部方面隊(熊本)・海上自衛隊佐世保警備区(長崎)・航空自衛隊西部航空方面隊(福岡)に所属している部隊に限られるかもしれない。

 宮崎空港が被災した場合には、物資輸送代替基地としては、航空自衛隊西部航空方面隊所属の第5航空団新田原基地(宮崎県児湯郡新富町)への代替飛行場として割り当てられることも考えられるが、初期救援活動としては、陸上自衛隊は西部方面隊(熊本)所属のえびの駐屯地や都城駐屯地からの陸路による移動となり、海上自衛隊は鹿屋航空基地からの救援活動になるだろう。

 全国各地で地震による被害が出ているなかで、九州管内の自衛隊員・消防隊員・警察官などの人数にも限界があり、救助活動が間に合わないケースも出てくるのではないかと案じられる。

【図6】宮崎ブーゲンビリア空港周辺のハザードマップ
(出典:国土交通省・国土地理院 重ねるハザードマップより作成)
【図7】陸上自衛隊西部方面隊 主要部隊地図(出典:陸上自衛隊西部方面隊HPより作成)
【図7】陸上自衛隊西部方面隊 主要部隊地図
(出典:陸上自衛隊西部方面隊HPより作成)
【図8】航空自衛隊西部航空方面隊 主要部隊地図(出典:航空自衛隊HPより作成)
【図8】航空自衛隊西部航空方面隊 主要部隊地図
(出典:航空自衛隊HPより作成)
【図9】海上自衛隊 主要部隊地図(出典:海上自衛隊HPより作成)
【図9】海上自衛隊 主要部隊地図(出典:海上自衛隊HPより作成)

5.まとめ

 はじめに書いた友人の息子さん夫婦が宮崎市内のどこに家を建てられるかは、詳しく聞いていないが、今回、宮崎市内のハザードマップを調べるに至り、確実に近い将来襲ってくる「南海トラフ大地震」による被害について、少しでも被害が小さくできるのであれば、先人たちの知恵や文献なども参考にした避難計画、避難シミュレーションなどを頻繁に行い、広く住民に知らせておく必要があると強く感じた。

 昨年10月に執筆した「台湾有事と南海トラフどうする自衛隊・どうする日本()・()」で記述したような「台湾有事・第2次朝鮮戦争・ロシアの北海道侵攻」と同時に「南海トラフ大地震」が起こることはないと仮定しても、この「南海トラフ大地震」が起こってしまったら、太平洋沿岸の都市はほぼ壊滅的な被害を受けてしまう。元日に起こった「能登半島地震」や8年前の「熊本地震」のときのように、全国から陸・海・空の自衛隊隊員が災害救助支援に駆けつけてきてくれるとは限らないことを事前に覚悟しておかなければならないだろう。

 自分の命は自分で、弱者の命はみんなで守ることをたしかめて、地域で実践していく日本でありたい。

(了)


<プロフィール>
下川 弘
(しもかわ・ひろし)
下川弘 氏1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築営業本部やベトナム現地法人のGM、本社土木事業本部・九州支店建築営業部・営業部長などを経て、2021年11月末に退職。(株)アクロテリオン・代表取締役、C&C21研究会・理事、久留米工業大学非常勤講師。

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