2024年11月30日( 土 )

ENEOSセクハラ三連発、コンビニ・洋上風力を取り逃がしたあまりに大きい代償(前)

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 「好事魔多し」ということわざがある。歓喜と転落の大きな振りに直面することをいう。栄光をつかんだ瞬間、我を忘れて不可解な行動で破滅を招く人があまりに多いことに由来する。石油元売り大手ENEOSホールディングス(HD)は、そのことわざ通りを追体験した。「セクハラ三連発」だ。その代償はあまりに大きかった。

ローソン買収に、幻のENEOS参画

 『ローソン、幻のENEOS参画、トップ解任で辞退』。日本経済新聞(2024年2月15日付朝刊)のこんな見出しの記事に目がとまった。

 〈KDDIによるローソンへのTOB(株式公開買い付け)をめぐり、石油元売り最大手のENEOSホールディングス(HD)も参画する方針だったことが、わかった。ENEOSは23年12月に経営トップが解任されたため辞退し、三菱商事を含めた3社による共同経営は幻に終わった〉

 携帯大手のKDDIは2月6日、コンビニ大手のローソンに株式公開買い付け(TOB)を行い、ローソンの株式の50%を保有すると発表した。取得額は4,971億円。TOB成立後は、ローソンの親会社である三菱商事と50%ずつ持ち合い、共同経営する。コンビニの店舗と通信技術をかけあわせ、金融やネット通販など多様なサービスの強化を狙う。TOB成立後は、ローソンは上場廃止になる。報道各社が一斉に報じた。

経営トップのセクハラ事件で、共同買収から撤退

ENEOS イメージ    この共同経営体制には、当初、三菱商事、KDDIともう1社の3社による共同経営が予定されていたことが、会見当日のKDDIの適時開示資料で明らかになった。資料では、もう1社を「当初パートナー候補者」と表現している。開示資料では具体的な企業名には言及されていないが、2月15日、日本経済新聞が石油元売り最大手のENEOS HDであったとスクープ報道した。

 ENEOSといえば昨年、齊藤猛社長(当時)がセクハラで解任に追い込まれた。それが12月19日のこと。日経によると、ENEOSは「経営トップが不在となり枠組みから離脱した」という。前年の22年には、杉森務会長兼CEO(最高経営責任者)がセクハラで辞任に追い込まれた。二代続けての破廉恥事件で、さすがにローソンの共同経営の資格を失った。

ENEOSはコンビニ併設型ガソリンスタンドを意図した

 『ENEOSが逃がした魚はあまりに大きい!ローソンTOBの参画が幻に終わったワケ』
経済情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」(24年2月17日付)が報じた。こういった内容だ。

 米国では流通する約8割のガソリンがコンビニで売られており、従来型のガソリンスタンドでの販売は2割程度にすぎない。この変化にいち早く気づいた日本企業が、セブン&アイ・ホールディングス。16年に米国のコンビニ併設型ガソリンスタンド計1100店を3,650億円で買収。続いて20年にコンビニ併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」3800店を買収。買収額は過去最大の2兆2,000億円に上った。

 ドイツでは23年、ガソリンスタンドの80%にEV(電気自動車)用の急速充電器の設置を義務付けた。ここでいうガソリンスタンドは、米国のようなコンビニ併設型だ。欧米におけるコンビニは、EV時代に向けた充電ステーション網の要になっている。ENEOSがローソン買収に参画したのは、ガソリンスタンドにコンビニを併設して、EV用充電ステーションをつくることを狙ってのことだ。だがセクハラ事件でご破算になった。「逃がした魚はあまりにも大きい」と指摘されているゆえんだ。

 ENEOSの企業体質ともいえるセクハラ事件を振り返ってみよう。

最高権力者・杉森務会長が「性加害」で失脚

 石油元売り最大手・ENEOS HDの杉森務代表取締役会長が、突如、辞任を表明したのは22年8月12日のことだった。杉森会長の退任について、これまで「一身上の理由」として明らかにしていなかった。

 その真相は『週刊新潮』(22年9月29日号)が報じた。それによると、杉森氏は22年7月、那覇市の高級クラブで30代ホステス女性のドレスのなかに手を入れて胸を触り、キスを強要し、拒む女性に「銀座では普通だよ」などとしつこく言い寄った上、この女性のドレスを強引に脱がせるなどした。女性は肋骨骨折など全治2週間のケガを負わせたと伝えていた。『週刊新潮』が報じると一転、同社は重大なコンプライアンス違反を理由にした事実上の更迭だったことを認めた。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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