【トップインタビュー】地域を豊かにする街づくりに弾み 大英産業の多様な取り組みへの挑戦
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大英産業(株)
代表取締役社長 一ノ瀬 謙二 氏北九州市を代表する総合不動産会社の大英産業(株)は、2023年9月期の連結決算で過去最高となる357億5,905万円の売上高を計上した。熊本の住宅会社からの事業譲受や新商品の販売など、多様な取り組みが効果を発揮している。
重点エリア熊本市場の開拓
──昨年7月に熊本の(株)イワイホーム、(有)小岩井ドリームから事業譲受されました。
一ノ瀬謙二氏(以下、一ノ瀬) 当社では「地域愛着経営」を経営方針に、「元気な街、心豊かな暮らし」を経営理念に掲げ、実現に向けて10カ年戦略を策定し、経営資源の集中を図る目的で重点エリアを定めました。地元北九州、福岡、そして熊本です。
今回の事業譲受は同戦略に適うものであり、すでに相乗効果が発揮されています。たとえば熊本で注文住宅の受注が可能になったことです。これまで主に建売住宅の販売を行ってきた当社に、家づくりの選択肢が増えました。
また、事業譲受に際して全社員を受け入れたのですが、従前からの彼らの手厚い顧客フォローも手伝い、事業譲受後リフォームの受注件数が増加しています。20年前の分譲マンション・サンパーク水前寺の供給から、管理、中古住宅、新築戸建と少しずつ熊本市場への足がかりを築いてきましたが、ここに注文住宅、リフォームが加わることで、ワンストップで住まいに関するサービスを提供できるようになりました。ほかにも、多数の販売用不動産や現在の熊本店(帯山)でもある本社屋の購入など、M&Aによるメリットは非常に大きいです。熊本の事例を参考にして、今後は北九州でもワンストップ店舗を展開できればと考えています。
──熊本市場でも知名度向上が進みそうですね。
一ノ瀬 今年に入って桜町の花畑広場でマルシェを開催したのですが、開催期間中約1万5,000人の来場がありました。BtoCに関しては、こうしたイベント開催やCM展開を通じて、3カ年~5カ年かけてじっくりと当社の認知度を高めていきたいと考えています。
BtoBにつきましては、やはりTSMC熊本工場の件もありますので、企画開発から建築・販売・管理までを一括で任せられるという強みを生かし、関連企業の需要に応えることで、新たな受注基盤を構築できればと考えています。
──一方北九州では、市が事業として斜面地から街中への引っ越し費用などの一部を補助する方針を打ち出しました。
一ノ瀬 北九州市が目指す街づくりの在り方は、短期的にはコンパクトシティだと思っています。将来、AIやロボット技術の発展により物流や介護問題が解消され、人手不要の社会が到来すれば、集約型都市である必要はありません。しかし、少子高齢化をともなう人口減少、テクノロジーの進歩と関連法令の整備、それぞれのスピード感を鑑みると、区域区分の見直しを通じて、住まいを集約していかざるを得ないと思います。
住宅供給面で見ると、居住誘導区域には行政サービスが受けやすいなど、生活利便性が高い地域が指定されますので、新築・中古住宅価格の高騰など、資産価値の向上が見込まれます。ただ、市民の住み替えを強制することはできませんし、実施するにしても居住誘導区域の範囲が狭いと意味を成しません。慣れ親しんだ土地を離れるのは苦渋の決断です。住み替えた人への固定資産税の軽減、免除など、相応の支援策が不可欠です。市長のリーダーシップに期待しています。
売上伸長、構成比率にも変化
──2023年9月期の連結決算で売上高が過去最高を更新しました。売上構成に変化はありますか。
一ノ瀬 売上高357億5,905万円のうち、分譲マンションが約41%、戸建約35%、中古住宅約8%、その他が街づくり事業などです。リーマン・ショック前は分譲マンションが売上全体の90%超を占めていましたが、以降15年間でマンション価格が上昇したこともあり、その分比率が抑制されています。
JR西日本不動産開発との共同事業でもある「ザ・サンパーク小倉駅タワーレジデンス(全150戸、内事業協力者住戸2戸)」は80戸超のご成約をいただいており(取材時点)、好立地、高付加価値の物件供給にはこれからも注力していきます。不動産価格の上昇傾向が続いている内は、中古住宅にとっても追い風ですので、市況を見極めながら、中古住宅もこのまま着実に伸ばしていきたいと考えています。
──戸建に関してはコロナ禍に離れの「フリーダム」シリーズをリリースされました。
一ノ瀬 リモートワークの普及など、コロナ禍で生まれた新しい需要に対応するもので、既存住宅に隣接させたり、敷地内に設置したりすることでプライベート空間を確保できます。仕事部屋や勉強部屋、自分だけの趣味の部屋、珍しいところではサウナルームとして使用したいという声もいただいています。当初こちらでは想定していなかった用途をお客さまに発見していただいているようで、これからまだ市場を広げていける商品だなと、可能性を感じているところです。
──街づくり事業については陣原駅前(北九州)や防府駅北(山口)の計画が進行中です。
一ノ瀬 「元気な街、心豊かな暮らし」を経営理念に掲げる当社にとって、少子高齢化をともなう人口減少社会において、地域再生を担う街づくり事業は欠かせない存在です。
過去には諫早市栄町東西街区(長崎)の再開発事業にも参画し、サンパーク諫早中央EXIAを供給しました。進行中の陣原駅前や防府駅北以外にもご相談をいただいておりますが、街づくり事業は着手から完了まで事業期間が長期におよぶため、ほかの事業とのバランスを考えて取り組んでいかなければいけません。各事業と相互補完的に関わり合いながら、点ではなく面で、地域の課題解決に取り組んでいければと考えています。
──不動産特定共同事業の許可を取得されましたが、こちらの動きについてはどうでしょう。
一ノ瀬 計画段階のため現時点でお伝えすることはできませんが、新たな顧客創造につながる事業として準備を進めているところです。
──採用など、人材面での取り組みについてはいかがですか。
一ノ瀬 当社では3年程前からアルムナイ・ネットワークを導入し、転職者と交流を持ち続けています。転職者に対する心象は世代などによって異なりますが、働き方が多様化するなかで、情報交換などを定期的にできる関係性を維持できることは、お互いにとってメリットがあると思います。
不定期ですが、オンライン同窓会など対面の場を設けることで、直近の状況共有や、意見交換などを行っています。当社ではマンションや戸建の分譲といった既存事業とは別に、新規事業の創出にも力を入れており、「新規事業開発本部」という部門を創設しました。新しい事業を生み出すには社内だけでなく外部リソースの活用も重要ですが、そのためにはネットワークの構築が必須です。当社のチャレンジ精神を知るかつての社員の方々の存在は、単なる取引先の1つではなく、社外に大きな理解者・協力者がいるという武器になっています。
強みを生かした事業領域の拡大
──最後に大英産業が地域社会にはたす役割について考えをお聞かせください。
一ノ瀬 中期戦略(23年9月期~25年9月期)を策定し、その進捗状況の確認、結果の検証を行うなかで、自分たちの強みを生かした事業展開ほど進捗速度が速く、収益性も高いことを再確認できました。地域愛着経営に取り組む総合不動産会社として、これまで築き上げてきた人的ネットワークなどの財産、認知度を生かした事業の深化、事業領域の拡大に取り組んでいきます。そして、良質な住まいの供給、生活圏の利便性の維持・向上につながるような街づくりを通じて、地域の皆さんの心豊かな暮らしを支援できるような企業で在り続けることが、当社が地域社会にはたすべき役割だと考えています。
新規事業への挑戦も、多様化するニーズへの対応を見据えたものです。地域のお困りごとを解決できる会社として、相談をお寄せいただいたお客さまに十分な選択肢を提供できる会社として、これからも私たちは「元気な街、心豊かな暮らし」を胸に、各事業に取り組んでまいります。
【代 源太朗】
<プロフィール>
一ノ瀬 謙二(いちのせ・けんじ)
1980年8月生まれ、佐賀県嬉野市出身。学卒後、2003年9月に大英産業(株)に入社。営業実績が評価され、不動産事業部長を経て、13年10月、常務取締役および管理本部長に就任。16年10月には不動産流通事業部長を、17年11月には(株)リビングサポートの取締役をそれぞれ兼任し、19年10月、マンション事業本部長に就任した。その後、21年10月、専務取締役への就任を経て、22年10月、代表取締役社長に就任。趣味はトライアスロン、読書。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:一ノ瀬 謙二ほか1名
所在地:北九州市八幡西区下上津役4-1-36
設 立:1968年11月
資本金:3億3,089万円
売上高:(23/9連結)357億5,905万円法人名
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