逆風下の損保業界、代理店が目指すべき方向性とは
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(一社)福岡県損害保険代理業協会の福岡西・東・南支部は昨年11月24日、100名規模の合同セミナーを開催。損害保険業界が抱える課題などをテーマに3人の識者が登壇した。そのなかから損害保険代理店が目指すべき将来像についての内容を紹介する。
野元敏昭氏
(Hands-Onコンサルティング/元日本代協・専務理事)
損害保険業界に今求められるのは、昭和の時代から奥深く潜む市場のルール自体を変えていくことである。これまでは“たくさん売った方が偉い”という「売上至上主義」であったが、これからは「いかに正しく買っていただいたか」を問われる時代になる。昨今、世間を騒がせた事件を他山の石として、代理店それぞれが自社の体制やサービス品質は大丈夫なのかということを振り返ることが重要だ。顧客本位の業務運営を基軸とし、お客さまはもちろんのこと、従業員、保険会社、取引先、地域社会から信頼され、選ばれ、応援される代理店を目指してほしい。
藤田章夫氏
(ダイヤモンド編集部編集委員/保険特集を17年連続で担当中)
近年、代理店は統廃合が進み大型化している。小規模代理店が戦っていくには大型代理店とは違う強みをもつことが必要になるだろう。地場に根付いた専属代理店は、営業のプロフェッショナルであるが、規模は比較的小さくなる。たとえば、ほけんの窓口は全国規模の大きな代理店だから保険会社がわきまえた対応をとるのだろうし、単純に統合して大型化したほうが良いとかは思わないが、緩やかに連携するなど代理店同士でつながりをもち、規模の論理で保険会社に一目置かせるくらいでないと何も変わらないのではないか。勢いのある経営者が中心となって業界を変え、代理店の地位を確立していってもらいたい。
大塚英明氏
(早稲田大学法学学術院教授/日本保険代理業認定協会・代表理事)
藤田氏のいうように代理店の地位を変えることは大事で、そのヒントとなるのが、野元氏が専務理事を務めた日本代協が取り組む「事業継続力強化計画(ジギョケイ)※」だろう。ジギョケイは、自然災害などの有事に備えた企業を存続させるためのリスク管理である。東日本大震災では数多くの企業が震災倒産へ追い込まれ、事業継続力強化の重要性が再認識された。それから経済産業省と中小企業庁がBCP策定を促すのだが、企業の経営者が急にできることでないため、専門家が計画の作成をサポートする国の認定制度としてジギョケイが始まった(2019年7月)。そのサポート役として損害保険代理店がピッタリはまるわけだ。すでに損害保険契約で経営者をサポートしていた代理店だからこそ親和性が高いと期待されている。リスクコンサルタントとして企業から感謝され報酬を受け取れるような市場を形成できれば、代理店というまったく新しい立場を手に入れることができるだろう。これが具体的な展開となり、損害保険代理店の社会的地位が築かれることに期待する。
【松本 悠子】
※経済産業大臣が認定する「事業継続力強化計画」は、簡易なBCPと位置づけられ、認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策が受けられる。 ^
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