三井住友建設「クーデター」事件の顛末 超高層マンションで巨額損失(前)
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「クーデター」。もともとは暴力的手段によって引き起こされる政治変動を意味する。経済界では、取締役会でいきなり最高責任者の解任を求める緊急動議を提出し、根回しを受けたほかの取締役も賛成して、強引に交代させることを「クーデター」と呼ぶ。準大手ゼネコンで財閥系の名門、三井住友建設の「クーデター」事件を振り返ってみよう。
三井住友銀行出身の近藤社長を解任
準大手ゼネコンの三井住友建設は2月28日、柴田敏雄代表取締役専務執行役員(61)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。メインバンクの三井住友銀行出身の近藤重敏社長(58)は退任する。生え抜きの君島章兒会長(68)も退く。社長交代は3年ぶり。会長は空席とする。近藤氏と君島氏は6月下旬に開催する予定の定時株主総会で取締役も退任する。
近藤社長追い落としの「クーデター」事件は、仕掛けた君島会長ともども喧嘩両成敗で決着をつけた格好だ。君島会長が近藤社長と刺し違えて、道連れにしたといえなくもない。近藤氏が退任すると、三井住友銀行出身の取締役はいなくなる。
新社長に就く柴田氏は、愛知県出身。1985年名古屋大学工学部卒で、三井建設(現・三井住友建設)に入社。土木部門一筋。常務執行役員、取締役を経て2022年から現職。
プロパーの君島会長が
三井住友銀行出身の近藤社長解任を主導「三井住友建設で社長解任の”クーデター”勃発!」
『週刊ダイヤモンド』の情報サイト「DIAMOND online」(24年2月9日付)がこのような見出しでスクープし、「クーデター」事件は広く知られるようになった。
同サイトは「三井住友建設クーデターの深層」と題して、毎週報じたことから、ダイヤモンドが週刊文春の「文春砲」になったと驚かせた。こと三井住友建設に関する報道はダイヤモンドの独壇場だった。
ダイヤモンドの報道によると、「クーデター」の経緯はこうだ。三井住友建設は大型建築案件の遅れが主因で2年連続の最終赤字に陥っており、プロパーの君島章兒会長と複数の社外取締役が、メインバンクの三井住友銀行に対し、同行出身の近藤重敏社長を解任し、社長をプロパーで代表権を持つ柴田敏雄専務執行役員に交代させることを事前通告する連判状を提出したことに始まる。このクーデターは、三井住友建設が三井住友銀行に「けんかを売った」も同然であった。
メインバンクの三井住友銀行が近藤氏を社長に送り込む
1990年代のバブル崩壊で経営危機に陥り、ともに株価が100円を下回った三井建設と住友建設が合併して誕生した三井住友建設にとって、両社のメインバンクである三井住友銀行は企業存亡のピンチを救ってくれた恩人だ。
2021年4月、三井住友銀行出身の近藤重敏氏が三井住友建設の代表取締役社長に就任した。近藤氏は東京大学経済学部を卒業し、住友銀行(現・三井住友銀行)に入行。17年に三井住友建設に転じ、経営企画本部長を経て社長に就いた。
銀行出身者がお目付け役として送り込まれることは珍しくないが、銀行出身者がゼネコントップを務めるのは、極めて異例。当然のことながら、メインバンクの三井住友銀行が、三井住友建設を他社と合併させるための布石と受け取られた。
これに生え抜き組が猛反発。生え抜き組トップである君島会長が近藤社長の追い落としに動くことになる。君島氏は慶應義塾大学経済学部を卒業、住友建設(現・三井住友建設)に入社。管理畑を歩き、副社長を経て23年4月に会長に就いていた。
(つづく)
【森村 和男】
法人名
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