三井住友建設「クーデター」事件の顛末 超高層マンションで巨額損失(後)
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「クーデター」。もともとは暴力的手段によって引き起こされる政治変動を意味する。経済界では、取締役会でいきなり最高責任者の解任を求める緊急動議を提出し、根回しを受けたほかの取締役も賛成して、強引に交代させることを「クーデター」と呼ぶ。準大手ゼネコンで財閥系の名門、三井住友建設の「クーデター」事件を振り返ってみよう。
“ドン”新井会長が巨額赤字の責任で失脚
「クーデター」の発火点になったのは、三井住友建設の23年3月期の決算だった。大型建築工事の採算悪化を受けて23年3月期に257億円の最終赤字を計上。2期連続で最終赤字(22年3月期は70億円の赤字)となった。21年3月期末に27.2%あった自己資本比率は15.5%まで低下。借入金の財務制限条項にも抵触し、決算短信には企業存続リスクについて記載する羽目になった。
経営責任をとって、”三建(三井住友建設)のドン”といわれた新井英雄会長が引責辞任した。新井氏は東京大学工学部を卒業、住友建設に入社。土木部門一筋で、15年に社長、21年会長に就いていた。
社長在任中は、杭打ちデータ改ざん、落橋事故、足場崩落事故が起きたが、社長時代に受注した大型案件で巨額赤字を計上した責任を取り辞任した。後任の会長には、住友建設の後輩の君島氏氏が就いた。
534億円の工事損失に至った原因の第三者委員会の報告書
三井住友建設は23年11月8日、第三者委員会がまとめた施工中の大型建築工事で計534億円の損失を計上することに至った原因についての調査報告書を公表した。22年3月期に219億円、23年3月期に315億円もの工事損失を計上して、最終利益が2期連続赤字に陥る原因となった。
同委員会は、難易度の高い地下工事における工法・工期の検討や懸念事項の共有などが不十分だった点や、工場製作部材の図面作成に関する見通しの甘さや体制の不備などを指摘した。
同社は「発注者との関係」を理由に物件名を明らかにしていないが、メディアは東京都港区で施工している超高層マンション「麻布台ヒルズレジデンスB」だと報じた。
大規模複合施設「麻布台ヒルズ」が開業
日本一高い超高層ビルからなる複合施設「麻布台ヒルズ」が23年11月24日、開業した。不動産大手・森ビルによる再開発で、敷地面積は東京ドーム1.4個分の約6万4,000㎡。オフィスや商業施設、高級マンションやホテルなどを備える。
3棟の高層ビルのうち最も高い「森JPタワー」は地上64階建て。54~64階には世界20カ国で高級リゾートホテルを展開する「アマン」を手がけた高級住宅「アマレジデンス東京」(91戸)が入居する。高さ約330mは、「あべのハルカス」(大阪市、高さ約300m)を超えて日本一となった。
敷地の一帯はかつて木造建築の密集地域で、森ビルが約300人の地権者と交渉を続け、19年着工にこぎつけた。
「麻布台ヒルズレジデンスB」のタワーマンション建築でミソをつける
前出の「DIAMOND online」によると、三井住友建設は森ビルが中心となる再開発組合から「麻布台ヒルズレジデンスB」を受注した。「麻布台ヒルズ」に新設する地上64階、地下5階、高さ262m、総戸数970戸のタワーマンション。低層部には商業施設やオフィスを配置する。着工は19年10月、24年6月に竣工する予定だったが、工期は延びることになった。
三井住友建設は東京の新名所「麻布台ヒルズ」のタワーマンションの建築でミソをつけ、経営危機に陥った。今後どうなるのか。ゼネコンの再生は、建築部門と土木部門を分離し、それぞれを売却するのが通常。旧財閥の名門、三井住友建設の行方に注目が集まる。
(了)
【森村 和男】
法人名
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