脳とコンピューターを合体させるイーロン・マスク氏の最新ビジネス
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、3月22日付の記事を紹介する。この3月20日、イーロン・マスク氏のスタートアップ企業「ニューラリンク」は、初めての患者に脳チップを埋め込み、オンラインチェスをプレイする様子をライブ配信しました。
ダイビング事故で肩より下が麻痺した29歳の男性が、同社のチップ・デバイスを使用して、カーソルを移動させ、チェスを楽しそうにプレイしているではありませんか。このインプラントは、人々が自分の思考だけでコンピューターのカーソルやキーボードを操作できるようにすることを目指しています。
話題の主となった男性は去る1月に同社からインプラントを埋め込まれ、2月にマスク氏が語ったように、自分の思考でコンピューターマウスを制御することができたとのこと。
「手術は超簡単だった」と語り、手術の翌日には病院を退院し、その後も認知機能にまったく支障はないようです。しかも、「今では8時間ぶっ続けでプレイできるようになりました」と嬉しそうに話しています。
とはいえ、新しいテクノロジーであり、「まだ完璧ではない」とも述べ、「いくつかの問題に遭遇しました」と付け加えました。幸いなことに、彼曰く「これが旅の終わりではないと思います。まだたくさんの作業が残っていますが、それでもすでに私の人生を大きく変えました」。
これまで電気自動車「テスラ」や宇宙ロケットの「スペースX」など、新たなビジネスを次々と立ち上げきたマスク氏です。人間の脳とコンピューターを一体化させる「IOBビジネス」の先駆者であることは間違いないでしょう。
しかし、慎重かつ懐疑的な見方もあります。たとえば、米国国立衛生研究所の脳神経工学プログラムの元プログラム・ディレクターであるルドウィヒ博士は、「ニューラリンク」の示した画像は「画期的なものではない」と発言。さらに、「まだインプラント後の初期段階であり、今後の経緯をしっかり見極める必要があるだろう」と付け加えました。
また、2月には、米国食品医薬品局(FDA)の検査官が、「ニューラリンク」が行ってきた動物実験の記録管理や品質管理には「問題がある」との報告を公表したばかりです。
確かに、まだまだ問題はあるでしょうが、ルドウィヒ博士が指摘するように、「患者が以前にはできなかった方法でコンピューターとインターフェースをもつことができることは、患者にとって希望をもたらすに違いない」との肯定的な見方も大事な視点のはず。
いずれにしても、マスク氏が人類未踏の新領域に足を踏み入れていることは否定できません。この技術のおかげで、将来的にはさまざまな障害が克服される可能性が急速に高まってきているからです。
実は、話題づくりの天才とも異名をとるマスク氏は「過去半年の間に、2度も拳銃を手にした暴漢に命を狙われた」と告白しています。傑作なのは、マスク氏曰く「2人とも精神に異常を抱えていた。ニューラリンクのインプラントで正常に戻してやりたい」。
「禍を転じて福と為す」を地で行こうとするのは、「さすがマスク氏だ」と、専らの評判です。
著者:浜田和幸
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