韓国経済ウォッチ~高速鉄道の受注競争(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
アジア開発銀行の試算によると、アジアのインフラ整備の市場規模は8兆ドルになるという。この巨大な市場を取るために、中国と日本は政治・外交力を総動員し、総力戦体制で臨んでいるのが現状である。
その反面、韓国は資金力も乏しく、政府の戦略や意欲が明確でなく、残念ながらそれほど存在感がない。中国は第2のシルクロード構想を発表するとともに、アジア開発投資銀行(AIIB)を設立して、その市場を確保するための資金源の準備に布石を打っている。
一方、日本は今まで進めてきた輸出政策での成長は、生産拠点の海外移転と価格競争力の低下などで限界があると見て、新成長分野の1つとしてインフラ設備の輸出に力を入れようとしている。インフラ整備の事例のなかでも、典型的なのが高速鉄道の輸出であろう。たとえば高速鉄道の受注に成功すれば、線路や駅の建設だけでなく、関連設備や車両の製造、運行システム、維持管理など幅広い分野で大きな収益が期待できるので、波及効果が大きい。それに、一度受注に成功して納品することになると、規格などの問題があり、追加の車両の発注なども継続することになるメリットもある。二酸化炭素の排出の抑制など環境問題が大きくクローズアップするなかで、鉄道は第2の全盛期を迎えようとしている。
日本の国土交通省の統計によると、1kmを輸送するときに消費されるエネルギーは、飛行機は鉄道の3.5倍、乗用車は鉄道の5.8倍必要であるとのことだ。鉄道は環境の面だけでなく、高速化が進むことによって便利性においても見直されている。アメリカを始め、中南米、中国、東南アジア、インドなどで大型案件が目白押しである。東南アジアではインドネシアやシンガポール-マレーシア間でも高速鉄道が計画され、米国やロシアなど先進国でもプロジェクトが控えるなど、高速鉄道は巨大市場化しつつある。今回は、このように世界的に高速鉄道の大型案件が推進されているなかで、鉄道市場をめぐってどのような競争が繰り広げられているかを見てみよう。
中国と日本が受注競争を繰り広げていたインドネシアの高速鉄道プロジェクトの結果は、中国の勝利で終わった。中国はインドネシアの高速鉄道プロジェクトを受注することによって、東南アジアでは初の受注成功を記録した。また中国は、日本が受注をするため心血を注いでいたアメリカのラスベガス~ロサンゼルス間の370kmの高速鉄道プロジェクトを受注成功するなど、日本との競争で2連勝を収めている。
それでは、中国の高速鉄道の歩みを見てみよう。1978年、鄧小平中国主席が日本を訪問し、そのときに東海道新幹線に乗車したことが、中国が高速鉄道に乗り出すきっかけとなっている。風のように早くて快適な新幹線に感動し、鄧小平中国主席は新幹線をロールモデルに高速鉄道を計画するようになる。日本が新幹線を運行し始めたのは64年で、東京オリンピックのときであった。そのとき中国では、時速41kmの鉄道が走っていたようだ。10年前まで、このように中国は高速鉄道の不毛地であった。
2002年から高速鉄道を独自開発でやろうとしていた中国は、開発の挫折を経験する。その後、04年に日本の川崎重工業と提携することによって、高速鉄道の開発のスタートを切ることができた。
しかし、10年の歳月が経過した今では、当初としては想像もできないほどの結果になっている。中国は世界で一番安く、一番早い高速鉄道が建設できるようになっているだけでなく、全世界で一番多くのプロジェクトを推進している。中国の高速鉄道の建設コストは、世界平均の半分程度と言われている。中国はコストの安さを武器に、それから莫大な資金力をベースに、世界の高速鉄道プロジェクトでどんどん成果を挙げている。工期も西欧の4分3に過ぎない。
それでは、過去10年間で、中国では何が起きたのだろうか。(つづく)
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