ChatGPTの可能性とリスク:登場の待たれるAI政治家!
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、4月12日付の記事を紹介する。このところ、AIの進化はあらゆる面で人間の想像力や対応力を超える勢いを見せています。たとえば「チャットGPT」ですが、日本では有力な政治家の間でも「国会答弁の作成を効率化するうえで、チャットGPTなどAIは有力な補助ツールになる。公務員の業務負担を軽減させるためにも活用の可能性を追求したい」との見方が出ているほどです。
国会開会中は議員からの質問に対する答弁を準備するため、多くの役所では連日、徹夜を余儀なくされており、そうした過重労働から解放される手段になり得るとの触れ込みに他なりません。国会答弁に限らず、総務省や農水省でも日常業務の効率化を図るためにチャットGPTを積極的に導入する準備を進めています。
また、電通デジタルでは「無限AI」と称するソリューションブランドを立ち上げ、広告配信クリエイティブに革命を起こそうと試みています。AIにコミュニケーションの訴求軸を出させ、そのうえで画像、表現、レイアウトといったデザイン部分を自走生成させ、それらを基にクリエイターが最終的な表現物に仕上げるのです。さらにそうしたクリエイティブなAIと人のコラボレーションがどのような効果を生むのかを予測し、さらなる改善案を提案するとのこと。
ほかにも応用範囲は広がる一方です。たとえば、膨大な行動履歴データから、近い内に成約してくれそうな顧客をAIが判定し、AI顧客カルテとして「見える化」します。しかも、成約の可能性の高い顧客に対する商談のキーメッセージや説得の手法についても支援アドバイスを提供してくれるというではありませんか。
日立生成AIセンターでは「AIアバター」を制作しています。従業員32万人の持つ顧客情報を基にコンサルティングや環境構築のサポートを行います。これによってコールセンター業務が格段に高度化されるようになりました。従来、AIといえば、単純作業をロボットが代替するというイメージでしたが、今ではコミュニケーションやクリエイティブの領域にまで進化を遂げているわけです。
確かに、チャットGPTの威力には凄まじい可能性が感じられます。たとえば、米カリフォルニア大学サンディエゴ校が行った実験には説得力がありました。200件ほどの患者からの質問に、人間の医師とチャットGPTが回答し、その回答を専門家が評価したところ、何と79%は後者の方が質も高く、正確だと判定されたのです。また、回答内容が「共感的かどうか」についても、チャットGPTに軍配が上がりました。
要するに、「AIの発する言葉は無味乾燥で、人間味に欠ける」という常識を覆したわけです。実際、悩みを相談してみても、質問者に寄り添った返事をしてくれます。その説明ぶりも、「時間に追われている医師やカウンセラーより丁寧で分かりやすい」と評判でした。
しかも、米テキサス大学の研究者たちは最近、世界をさらに驚かすような研究成果を発表しました。それは人が音楽を聴いたり、映像を観ている間に何を考えているかを読み取り、文章化することに成功したというのです。個人のプライバシーを侵害することにもなりかねませんが、意思疎通のできない患者の気持ちを読み取るという意味では画期的な成果とも受け止められています。
事程左様に、技術の進歩には限界がありません。とはいえ、その副作用も無視できません。いうまでもなく、AIの普及と進化は間違いなく雇用に影響をおよぼすことが想像されるからです。米ゴールドマン・サックスの分析では「現在の仕事の4分の1はAIで代替が可能である。全世界で3億人のフルタイムの仕事は自動化される」とのこと。
生成AI関連の市場規模は2022年の90億ドルから2027年には1,210億ドルに膨らむとの予測もあります。いわゆる「生成AI大淘汰時代」の幕開け宣言に他なりません。こうした事態が進めば、チャットGPTを使いこなせる人とそうでない人との格差は広がるはずです。経済的にも社会的にも無視できません。
さらには、チャットGPTの開発者である「オープンAI」のアルトマンCEOが危惧するように、「AIが人類存亡の危機をもたらしかねない」という問題も指摘されています。このアルトマン氏はたびたび来日し、時には岸田首相と面会し、日本政府に対して「AIの進化と実装」に関する提言を行っているようですが、政治家の仕事もAIに肩代わりさせるような近未来もあり得るのでしょうか。政治とカネで揺れる日本の政界にとっては、カネや利権に惑わされないAI政治家が希望の星になる日も近いのかも知れません。
著者:浜田和幸
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