日米比3カ国首脳会議の舞台裏(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸アメリカによる中国包囲網
岸田首相はワシントンでの日米首脳会議に引き続き、日米比3カ国首脳会議に臨みました。アメリカのバイデン政権は台頭する中国を念頭にオーストラリア、韓国、台湾はもとより、日本やフィリピンを抱き込もうとしています。いわば、アメリカは中国との戦いでフィリピンを「次のウクライナ」に仕立て上げようとしていると言っても過言ではありません。
『ニュー・イースタン・アウトルック(NEO)』紙によるとフィリピンは、北京とのより緊密な関係をもつことで利益を享受する地域の国々の1つです。しかし、他の隣国が中国との関係を段階的に発展させようとしているなか、マニラは逆の方向を模索するようになってきました。NEOが報道しているように、フィリピン政府は「北京とのいくつかの共同鉄道プロジェクトを中止した」と発表しました。最近、フィリピンは3つの鉄道プロジェクトに関して、中国との資金提供契約を相次いで取り下げた模様です。
NEOはまた、フィリピンが民間のインフラではなく、米国との軍事基地アクセス協定の締結に重点を置いていることを指摘しました。『ワシントン・ポスト』紙によると、アメリカ軍はフィリピン国内に新たに4つの軍事基地を使用する許可を得ています。一方、ロイター通信は、マニラとワシントンがフィリピン最北端のバタネス州に港を開発するための協議を開始したと報じました。この地点は台湾からわずか200kmの近距離にあります。
要は、アメリカは東シナ海や南シナ海において緊張が高まっていることを背景に、同盟国の抑止力を強化するとの名目で、間接的にそれらの地域に軍事的に介入しようとしているわけです。こうした状況が続けば、地域的な紛争が世界的な危機にエスカレートする可能性も否定できません。現実には、アメリカは仮想的な同盟国を防衛するためではなく、中国を包囲し、抑え込むために軍事的存在感を高めており、米軍基地を提供しているホスト国を中国に対する前線基地に変えようとしているとも見られるわけです。
歴史を紐解くまでもなく、アメリカによるフィリピン支配は終わっていません。アメリカによるフィリピンの政治的支配は、300年以上に及ぶスペインによる統治を経た後、東南アジアの国々がアメリカに植民地化された時代に起源をもっています。マドリードの支配下にあったフィリピンをアメリカは支配下に置きました。それは1898年12月に署名されたパリ条約に明記されています。同条約によって、スペインがキューバ、プエルトリコ、グアム、フィリピンをアメリカに割譲することが決定されたのです。
その1年後、アメリカの軍隊がフィリピンの島々に派遣され、99年から1902年にかけて起こったフィリピン・アメリカ戦争が勃発しました。アメリカは46年にフィリピンに「独立」を与えましたが、依然として程度の違いはあるものの政治的および軍事的支配を維持しています。
2016年から22年までの任期中、中国に対してより寛大な立場をとっていた前フィリピン大統領のロドリゴ・ドゥテルテは、アメリカ軍を追放しようとしましたが、失敗に終わりました。それとは対照的に、現職のフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、かつてないほど親米的な立場を取っています。その理由を本稿によって明らかにしたいと思います、
さて、冒頭に紹介した岸田首相の訪米ですが、ハイライトは米議会上下両院合同会議において「未来に向けて~我々のグローバルパートナーシップ~」と題して行った演説でした。この演説はレーガン元大統領のスピーチライターからのアドバイスを基に、国際秩序維持への米国の貢献を讃えつつ、民主、共和両党の分断を助長しないように配慮したもの。
日本と米国が「最も親しいトモダチとして、世界の未来を創造する責任を分担してはたしていきたい」と訴えました。混迷を続ける国際情勢を民主主義の原則でより平和で安全な方向に導いていく重要性に言及し、これまでの米国の指導力を称賛し、「引き続き米国が国際問題で中心的役割をはたすように」と呼び掛けたものです。
とはいえ、これでは「アメリカ頼み」の感はぬぐえず、「共に責任を分担する」と訴えたものの、日本独自の平和外交を打ち出すまでには至りませんでした。11月の大統領選挙を念頭に、米国内の分裂や分断にはあえて目を向けないようにし、日米両国がAI、量子、半導体など最新技術の発展において協力する可能性に焦点を充てることにのみ腐心したとしか思えません。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連記事
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