日米比3カ国首脳会議の舞台裏(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸フィリピンの資源をめぐる争奪戦
1968年、独裁政治に反発して起きた民衆革命で政権の座を追われたフィリピンのマルコス元大統領に救いの手を差し伸べたのはアメリカでした。レーガン大統領の指示で、軍用機が用意され、マニラからハワイにマルコス一族郎党を乗り込ませ、大量の金銀財宝とともに輸送したのです。もちろん、2機の軍用機ではすべての財産を搬出できませんでした。
そのためマルコス元大統領は、事前にスイスやケイマン島の金融機関の秘密口座に100億ドルを超える資産を分散隠匿させたのです。マルコス元大統領は国家財産を収奪したのみならず、日本などからの経済支援の相当部分も私的に隠ぺいしていました。そのため、一体いくらの資金を強奪していたのかは、いまだに明らかになっていないほど。ちなみに、日本はフィリピンにとって最大の資金援助国です。
こうした極秘資産について、マルコス・ジュニア大統領は内外のメディアから質問を受けることがたびたびありましたが、「自分は一切関知していません」と繰り返すのみ。もちろん、そんな話を信用する国民はいません。そこで、マルコス・ジュニアが打ち出したのが、「自分が大統領になれば、そうした隠し資産を回収して、国民に還元したい。父の代に国民に与えた苦しみの弁償に当てたい」と訴えたのです。多くの国民は依然として貧しい生活を余儀なくされており、そうしたマルコス・ジュニアが掲げた弁償金の公約に心を動かされた有権者も多くいたに違いありません。
残念ながら、国民への弁償金は口約束に終わったままです。いずれにせよ、政治の世界への進出を目指していたため、選挙資金としても父親の隠し財産を喉から手が出るほど欲しがったのがマルコス・ジュニアでした。そうしたフィリピンの国内政治情勢に着目し、アメリカ政府はマルコス元大統領の隠し資産の回収に向けて水面下で動きを加速させてきたのです。そして、マルコス・ジュニアに対して、父親の隠し財産を提供するようになりました。その際の条件が中国との関係をご破算にし、アメリカとの関係を最優先させることだったと言われています。
もともと汚職や腐敗が蔓延していたフィリピンです。アメリカ経由で返還された父親の隠し財産を活用し、政治家として地盤を固めることに成功したのがマルコス・ジュニアです。副大統領選や大統領選挙で勝利した際にも、こうしてアメリカ経由で返還された父親の代からの隠し財産が大きくモノを言ったことは明白です。アメリカの支援と口添えがなければ、マルコス・ジュニアは大統領の座を射止めることはできませんでした。その意味では、アメリカはマルコス元大統領の資産を最大限に活用し、その息子を思うがまま操ることができていると言っても過言ではありません。
アメリカはフィリピンの島々を軍事拠点化する動きを加速させています。中国が南シナ海の岩礁を埋めて、島を造成し、それらを軍事基地化していると非難していますが、アメリカは世界80以上の国に750を超える米軍基地を確保しているのです。そのうち、313の米軍基地は東アジアに集中しています。台湾に近いフィリピンは重要な拠点です。
南シナ海に眠る1兆ドルを下らないと目される海洋資源を開発するためには、こうした米軍基地の後ろ盾が欠かせません。なかでも西フィリピン海に存在する海底油田は1,300億バレルと見積もられており、サウジアラビアに次ぐ埋蔵量です。今後、こうしたフィリピンの資源をめぐる日米中の争奪戦は激しさを増すばかりと思われます。
(了)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連記事
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