2024年07月16日( 火 )

警察検察の人物破壊工作

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 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、政治権力の意向が絡む事案で裁判所が公正な判断を示すことはまれだと指摘する5月17日付の記事を紹介する。

大事なことは権力者の判断、警察・検察・裁判所の判断を絶対視しないこと。刑事司法は巨大権力で、もっとも根源的な基本的人権は「身体の自由」。刑事司法は個人の「身体の自由」を奪う強大権力を有する。そこに「正義と公正」がなければならない。刑事司法が「正義と公正」を確保することは近代国家の条件である。

1789年に制定されたフランス人権宣言は刑事司法の鉄則を定めている。罪刑法定主義、適法手続き、無罪推定原理、法の下の平等。刑事司法の鉄則が適正に確立されていることが近代国家の条件である。警察・検察・裁判所が日本の刑事司法権力を握るが、「正義と公正」からほど遠い。

象徴的な事例がある。2009年3月3日に小沢一郎議員の公設第一秘書である大久保隆規氏が逮捕された。西松建設関連の政治団体「新政治問題研究会」「未来産業研究会」からの寄附を事実通りに収支報告書に記載して提出したことが「虚偽記載」だとされて突然逮捕された。まったく同じ事務処理をした資金管理団体がほかに12あった。しかし、摘発されたのは小沢一郎氏の資金管理団体だけだった。麻生内閣の漆間巌官房副長官は「この問題は自民党に波及しない」と発言。

安倍内閣下で森友学園に国有地が法外な低価格で売却された。時価100億円相当の国有地がタダ同然で売却された。財務省は国家に損失を与えており、背任の罪に問われる必要があった。また、この事案に関連して財務省は大規模な虚偽公文書作成を実行した。これも犯罪として立件されなければならない重大事案だった。虚偽公文書作成を命じられた近畿財務局職員は犯罪を強要されたことを苦に自死に追い込まれた。

安倍元首相は「桜を見る会」前夜祭で選挙区の有権者に対して利益供与した。この事案も公職選挙法違反で摘発されねばならなかった。安倍首相が職務権限を有する獣医学部新設を認可された加計学園から安倍元首相は利益供与を受けていた。この事案も摘発される必要があった。

これが日本の刑事司法の現実である。日本の警察と検察には、犯罪が明白に存在するのに犯罪者を無罪放免にする裁量権が付与されている。他方、日本の警察と検察には、犯罪が存在しないのに無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権も付与されている。政治権力の意向が絡む事案で裁判所が公正な判断を示すことはまれだ。例外的に優れた裁判官が存在するが、権力の意向に反する判断を示す裁判官は出世しない。内閣が人事権を握っているからだ。このため、上級裁判所が権力に意向に反する判断を示すことはほとんどない。刑事司法の諸問題について、これらの現実を踏まえた判断が必要だ。

政治権力の意向に関わらない事案においても、警察・検察の天下りが関わると刑事司法の取り扱いが歪められる。政治権力の意向と天下りに無関係の事案は適正に処理されると見てもよいが、「権力の意向」と「天下り」が司法判断を大きく歪めている。したがって、「権力の意向が絡む事案」と「天下り利権が絡む事案」に関する刑事司法の取り扱い、刑事司法の判断を絶対視すべきでない。「絶対視しない」とは「相対視」すること。「権力の意向を受けた「1つの判断」」、あるいは「天下りの影響を受けた「1つの判断」」だと受け止めるべきだ。

「つばさの党」の幹部3名が逮捕されたが、この事案も「政治権力の意向が絡む事案」であるから、絶対視せず、相対視することが必要だ。

「国家にしかできない犯罪。それは、戦争と冤罪である」

亡くなられた後藤昌次郎弁護士が遺された言葉。多くの冤罪が存在する。冤罪は「魂の殺人」と呼ぶことができる。その冤罪が意図して創作されることがある。目的は「人物破壊」。私もその被害者である。「魂の救済」を実現するために、真相を明らかにする必要がある。多くの冤罪事案が明らかになっている。小沢一郎氏の冤罪事案は解消した。しかし、この冤罪によって日本政治史は転覆させられた。

2009年5月11日、小沢一郎氏は筋を曲げて民主党代表を辞任した。引責辞任ではない。総選挙への悪影響を懸念して筋を曲げて代表を辞任した。公認代表に選出されたのは鳩山由紀夫氏。

※続きは5月17日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「警察検察の人物破壊工作」で。


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