九州の平日観光の活性化にむけた取り組み(後)
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運輸評論家 堀内重人
東急とJR九州を中心に交通・航空企業5社がタッグを組んで、交通・観光業界では、永遠の課題である「需要の平準化」に挑戦する。鉄道会社や航空会社は、ピーク時の需要に対応するため、車両や機材だけでなく、人員も確保する必要がある。東急とJR九州以外に、ソラシドエア、スターフライヤー、ニッポンレンタカーサービスは、梅雨で需要が少なくなる6月4日から、「九州・沖縄オフピーク旅促進プロジェクト」をスタートさせた。日本の観光地は、週末は混雑しているが、平日は閑散としていることが、一般的である。そこで平日旅行を促してピークを削り、ゆったりした日程で九州や沖縄を周遊してもらうのが、プロジェクトの狙いである。
その他、JR九州のD&Sトレイン
九州の観光を平準化するには、JR九州の役割が重要である。久大本線沿線の湯布院には、温泉があるため、通年で観光客を呼び込むことが可能であり、昨今では「ゆふいんの森号」は、インバウンドの外国人観光客の利用が目立つ。
JR九州は久大本線だけでなく、各地でD&Sトレインという観光列車を運転しているため、湯布院以外への観光客の誘致も、観光の平準化には不可欠である。
湯布院以外の温泉地といえば、砂風呂で有名な指宿(いぶすき)があり、鹿児島中央駅~指宿間に、特急「指宿のたまてばこ」を、1日に3往復運転している。この列車は、浦島太郎の伝説にあやかり、列車の屋根から白い煙を吐く演出を行う。
それ以外の温泉地として、豊肥本線沿線の内牧温泉がある。最寄り駅は、赤水駅となるが、熊本~大分間に特急「あそぼーい!」という、D&Sトレインを1日に1往復運転している。
有明海などを眺める列車として、特急「2つ星4047」がある。有明海の傍を通るため、海へ振り出された感じがする列車である。
それ以外に、熊本~三角間に、天草観光に便利な特急「A列車で行こう」が1日に2往復、宮崎~南郷間には、飫肥(おび)や油津観光に便利な、特急「海幸山幸」が、1日に1往復している。
オフピーク時の旅を後押しするには、リモートワークを活用
今回のプロジェクトの目的は、平日旅行の促進である。価格を下げることで、平日に旅行しやすくなるが、実際に休暇を取って出掛けられるか否かは、旅行者次第であるといえる。
自営業や自由業の人やリタイヤした人であれば、平日に旅行することは可能であるが、サラリーマンが、平日に有給休暇を取得して観光旅行することは、困難である。
だがコロナ禍を契機に、リモートワークが普及したことから、従来とは状況が変わりつつあるといえる。現場の労働者でなければ、会社などの職場でなくともリモートによる仕事が可能になった。つまりパソコンがあれば、遠隔地でも仕事が可能となり、昼間は訪問地を観光して、夜はホテルの自室で仕事をする働き方が可能になった。
遠隔地からリモートによる仕事が可能となり、それの追い風となるのが、平日観光の平準化プロジェクトである。
まとめ
観光需要を平準化するには、ピーク時の需要を削り、閑散期へ移ってもらう必要がある。6月・9月という閑散期に需要をつくるには、この時期の価格を下げる方法は、有効ではあるが、絶対的な条件にはならない。
有給休暇が取得しづらい会社や、まとまった休日がとりづらい現場の労働者にとれば、閑散期に価格が下がったとしても、平日に観光旅行に出掛けづらい。
観光需要を平準化すれば、鉄道会社は過剰な車両を所有する必要性から解放される。航空会社やホテル・旅館などは、ピーク時は割高な運賃や料金となるように価格設定されているが、ホテル・旅館は季節による価格の波動が大きい。正月に家族4名で旅館に宿泊するとなれば、通常期に1泊2食で大人1人あたり1万5,000円の宿泊料金が、部屋売りとなるため、1人あたり1泊2食付きで4~5万円にまで、高騰してしまう。
閑散期に観光需要がつくり出されれば、受け入れるホテル・旅館側も、閑散期に設備が遊んでしまうことを回避できる。
閑散期へ需要を移すには、価格やリモートワークだけでは不十分であり、閑散期に旅行者を引き付けるようなイベントが必要である。地元の祭などがあれば、大々的にPRを行うなど、JR九州や航空会社だけでなく、観光客を受け入れる地元側の創意工夫も、観光の平準化には必要だといえる。
(了)
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