日本製鉄のUSスチール買収は成功するのか?(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田和幸日本の自衛隊は海外での軍事行動を日米安全保障条約の下で禁止、制限されていますが、その背景には、米軍の根深い対日不信の念が横たわっているといっても過言ではありません。その意味では、日本は米国に従属することを余儀なくされているわけです。この状況は日本人、とくに愛国的な集団には耐えがたいと受け止められています。
一方、日本でも米国でも多くの政策立案者が想像できないほど、第3次世界大戦と核戦争が近づいています。台湾海峡をめぐる危機的状況もしかりです。しかし、多くの台湾住民は万が一のときには米軍が介入してくれると根拠なき楽観論に酔いしれています。日本も同様の感があります。そんなに都合よく米軍が台湾や日本の防衛のために介入してくれる保証はありません。そもそも、ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの戦闘だけでも米軍は手一杯の状況です。軍事物資の調達に四苦八苦しているのが今の米国なのです。
要するに、機能しない可能性を秘めた「二国間」防衛条約の束縛によって助長された弱者意識がはびこっているのです。日本の新型「駆逐艦」が航空母艦に驚くほど似ていることも、このことを知れば納得できます。すなわち、海上自衛隊の攻撃的戦闘能力を禁じる日米安全保障条約の条項に違反しているからです。このようなホワイトハウスと首相官邸の認識の違いは、深刻に受け止めるべきと思われます。
そうした相互理解が不足しているにもかかわらず、日本人は相変わらず根拠なき楽観論に支配されています。日本企業がライバルである米国企業を買収しようとしている背景にもっと注意を払うべきでしょう。日本製鉄は、買収提案の主な目的は電気自動車(EV)用の薄鋼板の生産であると漠然と主張しています。おそらく日本に本社を置く自動車メーカーの利益を考えてのことに違いありません。
今後数十年間に生産される自動車の燃費向上を求める連邦政策が間もなく施行されることを考えると、米国の輸送部門への日本のさらなる進出にはある程度意味があります。修理可能な薄鋼板は、衝撃に対する耐久性がゼロのプラスチックの代替品になるからです。この切り替えには、薄鋼板を連続的に圧延するための日本製の設備が必要となります。
日本式の生産技術は、アルミニウム工場やワイヤー工場での生産と同様に、高度に機械化され、コンピューター制御されることになるはずです。 とはいえ、自動操作マシンの導入は、米国の鉄鋼労働者の大量解雇を意味します。鉄鋼労組が猛反対している理由もそこにあることは論を待ちません。
日本製鉄は、さらなる利益を生み出すはずの新鋼製品の販売機会について触れていません。ここ数十年で最も集中的に製品開発が進められてきたのは、老朽化したフランスの原子力発電所向けの鋳鋼成型部品の設計と製造でした。複雑な陶器のように、連結コネクターを備えたこれらの成形および湾曲した部品は、原子力施設内の極度の温度と亜原子粒子の衝撃により急速に破損または溶解するガスケット付きの標準的な金属製継手を不要にします。
これらの設計の多くはフランスの原子炉でストレステストを受けており、恐らくこれらの秘密に包まれたチューブは過去10年間で潜在的な欠陥を排除して改良されてきた模様です。
この点で、日本製鉄がUSスチールの買収に注力している背景には、老朽化した米国の原子力発電所内の継手を最先端の成型配管とダクトに交換するためのエネルギー省(DOE)の承認と公益事業会社の契約を獲得することであるものと推察されます。
このようなまだ公表されていないプロジェクトの場合、日本企業がUSスチールを買収すれば、米国の原子力部門への外国企業の直接的な関与に対するDOEの反対を無視できるかも知れません。高強度成形部品への移行は、主にフランスの原子力企業アレバと日本製鉄によって促進されてきましたが、これは東京電力福島第2原発の一連の故障と壊滅的な被害への対応という側面もあります。
こうした背景を考慮すれば、日米二国間の研究と協力には大きな抜け穴があるようにも見えます。なぜなら現実には日本の産業は中国にも、そしてある程度はロシアにも、そして秘密裏に北朝鮮にも関係している可能性が否定できないからです。こうした裏口を密閉する仕掛けを構築しない限り、米国政府の対日不信感は拭われず、日本製鉄のUSスチール買収にも待ったがかかることになるでしょう。結論は11月の大統領選挙の後に出るはずですが、日本にとっては厳しいものになりそうです。
(了)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。法人名
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