2024年07月04日( 木 )

生まれ変わるリバーフロント・清流公園(3)

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海を臨む景勝地の2公園、香椎浜北公園&長垂海浜公園

 さらに現在、新たに市内2公園でもPark-PFIを活用した公園づくりに取り組む民間事業者の公募が行われている。

 まず1つ目が、「香椎浜北公園」(東区香椎浜3丁目)だ。同公園は、83年に当時の香椎浜団地における公園需要を満たすべく、整備・設置された近隣公園である。その後、アイランドシティの造成にともなう都市計画道路奈多香椎浜線の整備や、福岡高速6号線(アイランドシティ線)の開通の際に整備を行い、現在は都市高速道路の高架下でありながら、香椎浜海岸に沿って東西に広がり、開放感のある公園となっている。都市高速道路の高架下という特徴に加え、市街地近郊でありながら公園近隣の護岸や海岸から穏やかで自然豊かな博多湾を一望できる景勝地であるとともに、日本書紀にある神功皇后ゆかりの御島神社の鳥居を海上に望む歴史性も備えている。さらに、エコパークゾーンの一端を担いさまざまな野鳥などが訪れる貴重な生態系を有するほか、御島グリーンベイウォークを構成する公園でもあり、日常的にウォーキングやランニング、犬の散歩などに利用されている。

香椎浜北公園
香椎浜北公園

 今回の同公園における公募では、Park-PFIの活用によって民間活力を導入し、公園利用者の利便性および公園の魅力の向上を図るとともに、福岡市の「Fitness Cityプロジェクト」も踏まえて水辺の景勝地に立地する香椎浜北公園の特性・魅力を生かすことで、さまざまな来園者に新たな憩いや賑わいをもたらしながら、地域と調和する公園づくりの推進を目的としている。

 そして、もう1つの公園が「長垂海浜公園」(西区今宿駅前1丁目)だ。同公園は、市街化が進む今宿地区における公園需要を満たすべく02年度に整備・設置された近隣公園で、生の松原から長垂山まで続く自然海岸の最西端に位置し、今宿海岸に沿って東西に広がる形状となっている。市街地近郊に残る良好な自然海岸として前面に今津湾や能古島などを一望することができる景勝地でありながら、国指定史跡である元寇防塁跡と隣接する歴史性も兼ね備えている。また、JR今宿駅からは徒歩10分圏内という交通利便性に優れ、広大ながらも起伏がなく、緑とともに心地良い海風を感じながら体を動かせる公園空間を有していることから、地域住民から域外からの来訪者まで、さまざまな公園利用者が公園や海岸からの景観を楽しみながら、「憩える」「アクティブに活動できる」「賑わえる」場となっている。

長垂海浜公園
長垂海浜公園

 今回の同公園における公募では、Park-PFIの活用によって民間活力を導入し、公園利用者の利便性および公園の魅力の向上を図るとともに、福岡市の「観光・MICE推進プログラム」も踏まえ、水辺の景勝地に立地する長垂海浜公園の特性・魅力を生かすことで、さまざまな来園者に新たな憩いや賑わいをもたらしながら、地域と調和する公園づくりの推進を目的としている。

 これら2公園の提案書類の提出期間は6月27日~7月1日で、8月上旬から中旬にかけて優先交渉権者を発表。その後、事業基本協定書の締結や基本設計の実施、事業全体計画書の承認および公募設置等計画の認定などを経てリニューアル整備工事に着工し、26年度に民間事業者による管理運営が開始される予定となっている。

活用事例が増加中のPark-PFIとは

 さて、これまで紹介してきたように、現在福岡市は積極的にPark-PFIの活用に取り組んでいる。市内では、これまでも大濠公園や須崎公園、天神中央公園「HARENO GARDEN」、国営海の中道海浜公園「光と風の広場」などでPark-PFI方式が採用されており、今後も同制度を活用した都市公園の整備・運営事例はさらに増えていくと思われる。

 そもそもPark-PFIとは、17年の都市公園法改正により新たに設けられた「公募設置管理制度」のことである。具体的には、飲食店や売店などの公園利用者の利便性の向上に資する公募対象公園施設を設置し、その施設から生じる収益を活用して周辺園路や広場などの公園利用者が利用できる特定公園施設の整備・改修などを一体的に行う事業者を公募によって選定するというものだ。

 福岡市では22年3月に福岡市公園条例を改正し、Park-PFIの運用に必要な事項を規定するとともに、22年5月から同制度を活用した官民連携事業への民間事業者の参入意欲や事業手法、公園の魅力向上に資する施設の提案などに関する意見を得るための、サウンディング型市場調査を実施。さらに並行して、Park-PFIの実施によって公園での推進が期待される市の施策について、庁内照会を実施してきた。この民間へのサウンディング型市場調査では、住宅都市局所管のすべての公園(計1,685公園)を調査対象に、26者(不動産業、建設業、技術サービス業、飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、運輸業、卸売業・小売業ほか)からの意見・提案を収集。その結果、24者から26公園に対して、計68の提案が寄せられた。主な提案内容は、飲食店(カフェ、レストラン、茶屋)や物販、バーベキュー場、屋内遊戯施設、情報発信施設などの事業の核となる収益施設である公募対象公園施設についてのほか、管理運営やソフト事業、地域との取り組みに関する提案などの民間事業者独自の提案もあった。

 こうした調査を経て、22年9月議会では、「アイランドシティ中央公園」「東平尾公園」「清流公園」「出来町公園」「明治公園」「舞鶴公園」「警固公園」「百道中央公園」「今津運動公園」の9公園に絞って検討を深める旨を公表。そして検討の結果、冒頭に紹介した3公園(東平尾公園、清流公園、明治公園)においてPark-PFI制度を活用した公募を実施する旨を23年3月議会で公表し、その後、実際に公募を行って優先交渉権者が決定。これから3公園でリニューアルが始まろうとしているというわけだ。

 現在、「舞鶴公園(鴻臚館・総合案内施設)」(中央区城内1丁目)でも民間活力導入に向けたサウンディング型市場調査が行われているほか、「みなと100年公園」(東区香椎浜ふ頭1丁目)では「みなと緑地PPP(港湾環境整備計画制度)」を活用した官民連携事業の共創・推進に向けたマーケットサウンディングなども行われている。公園のリニューアル整備に際して民間活力を導入していこうというのは、福岡市における1つのトレンドとなりつつあるようだ。

(つづく)

【坂田憲治】

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