危機感を募らせている韓国の電力事情(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏電力網の老朽化が足かせに
韓国で再生可能エネルギーが普及していないもう1つの要因は、電力網の問題である。電力網とは、電力会社が発電した電力を消費者まで届けるための送配電線のことを指す。ところが、韓国の電力網は老朽化しているうえに、新規の建設もここ数年間それほど進んでいない。
電力網が不足していると、再生可能エネルギーが発電されても送配電ができないため、出力制御などで、発電した電気が捨てられることになる。発電した電気を電力会社に売ることができずに捨てることになったら、発電事業者も資金の回収が計画より遅れることになるので、損失となる。仮に発電事業の許認可が下りても、電力網の問題で売電ができないため、事業の魅力は減少する。
韓国では韓国電力の傘下に6社の発電事業会社がある。その発電会社は電力を発電し、電力を韓国電力に売る。韓国電力は、買った電気を企業や個人の家庭に買った金額より高く売って利益を出している。ところが、韓国電力は現在累積債務を200兆ウォン(約23兆円)ほど抱えている。燃料代などが高騰しているにも関わらず電気料金は安く抑えられていて、赤字が累積したからだ。
赤字が累積している韓国電力としては電力網などの設備投資に回す財源もなく、それも韓国の電力網問題の解決を遅延させている。このような根本的な問題を解決しない限り、韓国で再生可能エネルギーの比重を拡大することは難しい状況にある。
分散電源など新しい模索が必要な時期に
韓国では首都圏に人口が集中していて、首都圏の電力需要は大きい。発電所は首都圏から離れた土地の安いところに立地し、発電された電気を長距離送配電するのが今の電力システムである。しかし、電力システムを見直し、送電需要を減らすことができれば、電力網の増設に必要な莫大な費用も減少していくだろう。それが分散電力システムである。
世界のエネルギー状況は大きく変わり始めている。集中型発電システムより、地域ごとに発電をし、その地域で消費することになると、現在のような送配電設備も需要が減るだろう。たとえば洋上風力発電の場合、漁業関係者の要請で陸地から100km以上離れたところに風力発電設備を建設しなければならない。発電された電力は海底ケーブルで陸地に送電するので送電コストは大きくなる。しかし、分散電源で発電コストも安く、二酸化炭素の排出も少なくて環境に優しい発電技術ならば、そのような悩みは解決できる。
そのような技術がまさに超臨界CO2発電である。この発電は技術の難易度が高いため、現在先進国を中心に実証実験などが進められている。ビルや団地など、発電した地域で電力を消費するため送配電線の建設費用も大幅に削減でき、超臨界CO2発電は近い将来人類の歴史を大きく変える可能性が秘められている。
(了)
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