2024年07月05日( 金 )

生まれ変わるリバーフロント・清流公園(4)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

活性化をもたらす“万能薬”ではない

 民間活力の活用により、都市公園の活性化を促す画期的な方法として認知されつつあるPark-PFIだが、どんな公園でもPark-PFIによって活性化が可能という類の“万能薬”では決してない。以下、Park-PFIについて留意すべき点を、いくつか挙げてみよう。

大濠公園
大濠公園

    まず、民間事業者が運営する以上、その場所で収益を上げることができるかが最重要視される。これまで紹介してきた各公園のような都心部の魅力的な場所ならともかく、周囲が閑散とした地方部のもともとの賑わいが乏しいエリアの都市公園では、手を挙げる民間事業者が現れない可能性すらある。また、公園が公共インフラの1つである以上、公園内だけが賑わえばいいというものでもない。たとえば、公園が賑わうことで、周辺の店舗や商業施設にも人の流れが生まれ利益が循環するといった、相乗効果についても考えていく必要がある。公園内だけが賑わっていて、周辺の飲食店は閑古鳥が鳴いているといったような、エリアの活性化とは逆の効果を生み出しては本末転倒だ。公園単独での賑わい創出ではなく、その賑わいを周辺に波及させて、いかにエリア全体を活性化していけるかがポイントになるだろう。

 また、公園という公共施設を民間企業が利用して収益を上げるという点も、問題視される可能性がなくはない。行政にとっては、Park-PFIを導入することで事業者からの公園の維持・管理費を得られる一方で、公園という公共施設に民間事業者が参入することでビジネス的な色合いが濃くなり、公園が内包する公共的な役割を歪めてしまうことも危惧される。ビジネスや事業性という考え方が第一となってしまうことで公共性が排除され、「誰でも」「いつでも」「自由に」利用できるという公園に求められる大前提を崩してしまうようなことがあれば、それはもはや「公園」ではなく、「私園」とでも呼ぶべきものだ。

 さらに、公園には憩いの場や人々の活動や賑わいの受け皿としての役割だけでなく、そこに緑・自然が確保されていることによる環境負荷の低減効果や、良好な景観形成、周辺の居住環境の向上といったような役割も求められる。そして外せないのは、災害などが発生した際の避難場所となるなど、防災拠点としての役割も担っていることだ。いわば都市部におけるオープンスペースとして“空いていること”自体にも価値があり、常に人の賑わいであふれていればいいというような単純な話ではない。

Park-PFI活用でリニューアルした国営海の中道海浜公園「光と風の広場」
Park-PFI活用でリニューアルした
国営海の中道海浜公園「光と風の広場」

 そして何より重要なのは、Park-PFIはこれまで行政が担ってきた役割のすべてを、民間事業者が肩代わりするわけではないという点だ。行政側も責任を共有していることを忘れずに、公園のコンセプト設定からこの事業者のプランで波及効果をおよぼせるのかなど、真剣に考えていかなければならないだろう。たとえば、民間事業者に維持管理を任せてからある程度の期間が経過し、賑わいを創出することができずに運営していた施設の営業継続が困難となった場合、民間事業者が撤退を検討することも想定される。そうならないためにも、行政側は事業者の財務状況や人員などの運営体制などもしっかりと把握しておく必要があり、最初の事業者の選定段階から、行政には大きな責任があるといっていい。民間事業者による運営にはある程度の自由度が必要だが、監理すべきところは行政がきっちりと引き締めなければならない一方で、引き締めすぎると、今度は民間ならではの自由かつ良いアイデアが埋もれてしまう可能性もある。ここのバランス感覚や見極めが重要となっていくだろう。

● ● ●

 今後、清流公園をはじめとした市内各地の公園で、Park-PFIを活用したリニューアル整備が次々と始まっていく。公園を核とした新たな魅力が各エリアにもたらされることを期待する一方で、公園に本来求められる役割を毀損することがないよう、行政および各民間事業者の舵取りを見守りたい。

“空いていること”が公園の価値でもある
“空いていること”が公園の価値でもある

(了)

【坂田憲治】

(3)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事