2024年12月22日( 日 )

技能実習制度の見直し、新たな「育成就労制度」

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 前々号で、技能実習制度は国際貢献という制度目的でありながら、実態は労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段になっており、そのためさまざまなひずみが生じているともいわれてきたこと、そこで人材確保と人材育成を目的とする新制度として「育成就労制度」が創設されたことをご紹介しました。

岡本弁護士
岡本弁護士

    我が国の労働力不足は深刻であり、とくに地方経済・地方産業において、外国人人材がより貴重な労働力になっていくことは確実ですし、現実に技能実習生が経済社会の重要な担い手になっています。ところが現在、台湾・韓国などとの人材獲得競争が激化しており、海外で働く労働者の行き先として、日本の相対的順位が低下しています。技能実習制度は、人材育成を通じた技能移転による国際貢献が制度目的ですので、実習終了後は「帰国」するのが制度上の原則となっています。また、帰国せずに技能実習から特定技能への移行も可能ですが、技能実習2号移行対象職種(全90職種165作業)のうち、29職種・51作業は、特定技能の受入分野である特定産業分野がありませんでした。このような制度上の問題から、長期間にわたって日本で働いてキャリアアップしていくイメージが描きにくいため、長期にわたり産業を支える人材の確保が困難となっているというのが実状でした。

 そこで育成就労制度では、原則3年間の就労を通じ、特定技能1号水準の人材を育成するという制度設計になり、受入対象分野は、特定産業分野と原則一致することになります。

 また、技能実習生は実習中という立場ですので、「やむを得ない事情」による転籍は認められていますが、転籍は原則不可となっています。この転籍の制限が、技能実習生の失踪問題の原因となる場合もあるとの指摘がされ、また人権侵害ではないかとの批判を受けているところでした。このような点も踏まえて、育成就労制度では「やむを得ない場合の転籍」の範囲が拡大され、手続きも柔軟化されるだけではなく、一定の要件の下、同一業務区分内での本人意向による転籍を認めることになりました。もっとも、前述の通り外国人人材が地方経済・地方産業の重要な担い手であるにもかかわらず、自由な転籍を認めると、より賃金水準が高い都市部へと集中してしまい、地方の人材確保が実現できないという危惧があります。

 そのため転籍は、「同一業務区分」内であること、同一機関(就労先)での就労が1~2年を超えていること、技能検定試験基礎級などおよび一定水準以上の日本語能力に係る試験への合格をすること、転籍先が適切と認められる一定の要件を満たすことなどの要件を満たす必要があります。また、転籍前の受入機関が負担した初期費用などについて、正当な補塡がなされるようにすることや、分野別協議会による過度の引き抜き防止のための取り組みを促進することとされています。転籍可能になるまでの期間が、どの業務で1~2年のどの期間になるかは今後検討されます。

 育成就労制度は、3年後の2027年までに施行され、27年の制度施行の前に入国した技能実習生は、現在の技能実習生としての取扱いとなるため、約3年間は育成就労制度と併存することになります。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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