2024年11月26日( 火 )

新幹線や在来線を活用した新聞輸送の展望(前)

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運輸評論家 堀内重人

 読売新聞西部本社とJR九州は2024年6月28日、九州新幹線の荷物輸送サービス「ウルトラはやっ!便」を活用した新聞の号外輸送を開始すると発表した。輸送ルートは読売新聞鳥栖工場→新鳥栖駅→博多駅。JR九州が「緊急輸送もJRで解決!」とアピールしているように、従来のトラック輸送に比べ、約30分から60分の時間短縮になるという。両者は、その高速性と定時性の高さを生かし、重要なニュースを新幹線による輸送を活用することで、安定かつ迅速に届けられる以外に、トラック輸送からのモーダルシフトや環境負荷の低減などさまざまな社会的意義を実現するとしている。九州新幹線による「号外」の輸送と、第三種郵便である新聞に関する鉄道貨物輸送の今後について、考察したい。

新幹線を活用した
「はやっ!便」サービスとは

イメージ    「はやっ!便」は、九州新幹線の未活用となった旧車内販売用の準備室を活用した駅から駅までの荷物輸送サービスであり、JR九州では博多~熊本間と、博多~鹿児島中央間の2区間で実施している。

 各個人が、荷物(貨物)を輸送する場合、国鉄時代から一貫して、貨物を取り扱う駅の貨物取扱窓口へ持参するのが一般的であるが、「はやっ!便」サービスの荷物受付・引き渡しは、JR九州の博多駅、熊本駅、鹿児島中央駅の「みどりの窓口」で行う。

 昨今、JR九州に限らず、全国的にJRの「みどりの窓口」は、縮小傾向にあるが、主要駅では健在である。そのため「みどりの窓口」で取り扱ってもらえるとなれば、窓口が混雑するのは別の問題として、通勤・通学などの合間に利用可能である、JR貨物の取扱駅のように、郊外に存在しないことから、自家用車を運転できない人も利用しやすく、大変便利である。そして法人だけでなく、個人でも事前予約が不要で利用が可能という点でも、画期的である。

 輸送可能な荷物(貨物)は、常温である上、三辺のサイズの合計が140cm以内、15kg以内である。冷蔵品を輸送する場合、保冷剤や氷も含めて15kg以内となる。また旧車内販売の準備室を活用することから、1列車に付き、15~40個までになる。その他、動物(ペット)や不潔な物、臭気を発する物、危険物は取り扱わない。ただし、鮮魚類に関しては、真空パックされた物であれば、取り扱いが可能である。

 価格は、三辺の合計が60cmで、重さが3kgの場合、博多から鹿児島中央であろうが、熊本から鹿児島中央、熊本から博多であろうが900円である。そして取り扱いが可能な最大のサイズである、三辺の合計が140cm、重量が15kgの荷物(貨物)の場合、先に挙げた区間では2,000円となる。

 「ウルトラはやっ!便」となれば、実施の対象が法人だけとなる。より高付加価値サービスとなるため、価格も10,000円(税別)となる代わりに、実施区間も原則として、博多から熊本と、博多から鹿児島中央間の下り区間になり、輸送可能な列車も、依頼を受けた後、輸送手配が可能な直近の列車となる。そして取り扱いの条件は、「はやっ!便」とほぼ同じであるが、三辺の合計が100cmまで、重量も10kgまでと、小ぶりになるなど、条件が厳しくなる。

第三種郵便物の輸送

 新聞などは、第三種郵便物というカテゴリーに分類される。第三種郵便物は、認可を受けた定期出版を郵送する際に、使用できる郵便物の区分であり、新聞や定期的に発行される雑誌などが該当する。

 第三種郵便物は、国民の文化向上に資する定期刊行物の郵送料を安くして、購入者の負担を減らすことで入手の便を図り、社会・文化の発展に貢献することを目的としている。第三種郵便物としての認可を受けられる定期刊行物は、郵便法22条の3項に以下のような要件が規定されている。

(1)毎年4回以上の回数で発行があり、総務省令で定める回数以上、継続して定期的に発行する出版物であること。
(2)掲載事項の性質上、発行の終期を予定していない出版物であること。
(3)政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、または論議することを目的とし、あまねく発売される出版物であること。

 完結することが前提となっている全集や分冊百科、終了することが明らかなイベントに関する出版物なども、第三種郵便物に認可されない。また(3)「公共的な事項を報道」という条件に基づいて、紙面の過半が広告で占められている出版物も、認可の対象外となる。さらに「あまねく発売される」の解釈は、誰もが購入できる上、有償であることが前提である。

 だが以下のような出版物は、第三種郵便には認可されない。

(1)500部未満の発行部数しかない出版物
(2)発行部数のうち、販売される率が80%に満たない出版物
(3)定価がない出版物・形式的に定価があっても販売された形跡がない出版物
(4)会員限定など、特定の人しか入手できない出版物
(5)個人・団体が買い取って、第三者に無償配布される出版物

 第三種郵便物の制度は、郵便事業が逓信省の管轄だった1885年に始まる。1892年には、第三種郵便物許可規則(明治25年逓信省令第4号)が制定されているから、130年以上の歴史がある。郵政事業の主体が、逓信省から郵政省、そして日本郵便へと変わったが、継続している制度である。根拠となる規定は郵便法第22条にあり、それを基に総務省令・郵便約款で、さらに詳細な条件が決まっている。また第三種郵便物が割安な輸送料金が設定できるのは、第一種・第二種などの郵便物の料金による利益で、第三種郵便物輸送時の欠損の内部補助を行っている結果である。

(つづく)

(後)

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