2024年07月31日( 水 )

福岡・主要5河川と都市排水の整備に「流域治水」(前)

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2度の博多駅水没も 氾濫しやすい福岡市

 全国20の政令指定都市のなかで唯一、市域内を一級河川が流れていない都市である福岡市。そうした地勢的要因から過去に数度の渇水を経験するなど、他都市と比べて水資源の確保に苦労してきた都市ではあるが、だからといって水害と疎遠なわけではない。

 福岡市の市域の多くは、御笠川や那珂川、室見川、樋井川などの下流域に形成された平野部である「福岡平野」に含まれている。前述したように一級河川のような長大河川がない一方で、市内を流れる河川の多くは、平野周辺の山地を水源とする短い河川長とやや急な勾配で、市街地部分を経由して博多湾に流れ込むのが特徴。また、市街地の海岸部の大半が埋立地であり海抜が低いことで潮位の影響を受けやすく、満潮のタイミングで集中豪雨があった場合には水量が河川の流下能力を上回って氾濫しやすいという都市としての治水上の課題を抱えてきた。

 福岡市における大規模な水害として印象的なのは、やはり2度にわたって御笠川が氾濫し、博多駅周辺エリアを中心に大規模な浸水被害をもたらした「福岡水害」だろう。1回目の福岡水害(99年6月)では、1時間降水量77mmの豪雨を記録し、御笠川の外水氾濫(洪水)と内水氾濫が同時に起こったことにより、博多駅周辺では1m程度の浸水被害が発生。地下に取り残された従業員1名が亡くなったほか、道路の不通や、JRおよび福岡市地下鉄の一部が運休するなど市民生活に大きな打撃を与え、日本における都市部―とくに地下空間における水害対策への問題提起となった。このときの氾濫面積は約327haで、家屋等被害は2,576戸におよんだ。

 2回目の福岡水害(03年7月)では、梅雨末期の豪雨により御笠川上流の太宰府市で1時間降水量99mm、累計降水量361mmを記録。これにより太宰府市原川で土砂災害が発生して1名が亡くなったほか、99年6月に大規模な浸水被害のあった下流地区では、激甚災害対策特別緊急事業実施中の御笠川が氾濫。とくに博多駅周辺ではビルや地下施設が浸水したほか、地下鉄の一部で不通となるなど、1回目に続いて都市型水害となった。なお、氾濫面積は約397haで、家屋等被害は4,237戸となるなど、被害状況では1回目を上回る甚大な規模となった。

2つのプランで整備、市内の治水安全度が向上

 2度にわたって甚大な浸水被害を受けた博多駅周辺だが、福岡市では1回目の水害発生後の2000年度に「雨水整備Doプラン」を策定している。これは、浸水被害が重大であった地区(重点59地区)において、時間降水量59.1mmに対応できる主要な雨水排水施設(幹線管渠やポンプ場など)の整備を進めるもの。また、できるところからできるだけの対策を早期に行って浸水被害を軽減することを基本方針とし、重点59地区以外の地区おいても、事業規模が小さく短期間に効果が表れる短期的な対策(側溝整備など)を実施することで、浸水被害の軽減を図ることとしていた。

 だが、プラン策定後の03年に2回目の浸水被害が発生。これを踏まえて重点59地区のうち、博多駅周辺の2地区および天神周辺地区の2地区については、「雨水整備レインボープラン」として個別の計画を策定。従来の流下型施設に加え、雨水貯留管、雨水調整池や浸透側溝などの雨水流出抑制施設を導入した整備を進めるなど、他の重点地区よりも整備水準を強化した雨水対策を実施してきた。

 その結果、「雨水整備Doプラン」の重点55地区と「雨水整備レインボープラン」の重点4地区を合わせた重点59地区においては、主要施設の整備が18年度までに完了。重点59地区以外の地区においても継続して短期的な対策を実施してきたことにより、雨水排水能力が大幅に向上し、市内の浸水安全度は大幅に向上している。

 一方で、重点地区以外にも現在までに浸水被害が発生した地区があることから、「雨水整備Doプラン」の考え方を継承した「雨水整備Doプラン2026」を19年3月に策定。浸水地区のなかから早急に対策を行うべき地区を選定し、時間雨量59.1mmに対応する抜本的な対策(幹線管渠など)を進めるとともに、できるところからできるだけの局所的な対策(側溝整備など)も行いながら浸水被害を軽減することを基本方針として、さらなる浸水安全度の向上に向けて引き続き浸水対策に取り組んでいる。

河川整備が順調に進む、福岡市内の主要5河川

 こうした雨水排水施設の整備などによる市街地の浸水対策が進められていく一方で、欠かせないのが河川の整備である。洪水を安全に流下させるための治水対策としての河川整備で主に行われるのは、堤防の築造や嵩上げ、河川の拡幅、河道の掘削、流水の阻害となる橋や堰等の改築工事、大雨時に本川の水を一時的に貯めこむ調節池の整備など。要は河川が流せる/受け止められる水の量のキャパシティを上げることで、豪雨時にも水があふれないようにしているといえよう。

 こうした河川整備の管轄は、一級河川が国と都道府県、二級河川が都道府県、準用河川および普通河川が市町村となっている。冒頭に述べたように一級河川が流れない福岡市内の河川整備に関しては、主に福岡県が担っていることになる。

(つづく)

【坂田憲治】

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