2024年08月01日( 木 )

人手不足の改善狙い、「担い手3法」が可決成立(2)

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工期ダンピング防止

 2番目のポイント「資材高騰にともなう労務費へのしわ寄せ防止」については、契約前のルールとして、資材高騰など請負額に影響をおよぼす事象(リスク)の情報は、受注者から注文者に提供するよう義務化。また、資材が高騰した際の請負代金等の「変更方法」を契約書記載事項として明確化することを挙げている。契約後のルールについても、資材高騰が顕在化した場合に、受注者が「変更方法」に従って契約変更協議を申し出た際には、注文者は誠実に協議に応じる努力義務が生じるとしている。

 3番目の「働き方改革と生産性向上」は、労働時間の適正化・現場管理の効率化を目的としたものだ。長時間労働を抑制するために、工期のダンピング対策を強化し、著しく短い工期による契約締結を受注者にも禁止する。これまでは、建設工事の注文者に対して、施工に通常必要と認められる期間に比べて著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならないとされていたが、今回の改正では、工事を請け負う建設業者の側にも適用されるかたちとなる。

効率化で規制緩和も

 現場管理の効率化については、これまで原則として専任の主任技術者と監理技術者の配置が義務付けられていたが、専任者の配置は建設業者にとって大きな負担をともなうことから、今回の改正では現場管理の効率化を目的として、遠隔通信をはじめとするICTの活用などを要件に専任者の設置義務が緩和された。

 具体的には、国は現場管理の「指針」を作成。それを元請・下請の間でデータ共有し、特定建設業者(多くの下請業者を使う建設業者)や公共工事受注者に対して、情報通信技術の活用に関する措置を講ずることができるように指導するなど、効率的な現場管理を努力義務化する。これまでは、原則としてその写しを発注者に提出することが義務付けられてきたが、今回の改正では発注者がICTを利用する方法によって工事現場の施工体制を確認できる措置を講じている場合には、施工体制台帳の提出義務を免除するものともされている。【図②】

【図②】ICT活用のイメージ
【図②】ICT活用のイメージ

 とくに専任の主任技術者と監理技術者の担い手不足は、それにより工事を受注できないというケースが頻発する事態を招き、問題となっていた。今回の担い手3法では、その改善策が具体的に示されたともいえる。いずれにせよ、施行される来年度以降に円滑に業務を行えるよう、事業者には具体的な準備が求められる。

改正法を起爆剤に、自らも意識改革が重要

    私たち専門工事業者の長年にわたる地道な活動が、今回の建設業法の改正というかたちで実を結ぶことになりました。

 他産業より低い賃金および長い労働時間では、どんなにものづくりの魅力を発信したところで「担い手」となる人たちは集まってこないという、業界の危機感を解消する方策として打ち出されたのが、次の3本柱を中心とする建設業法の改正です。

 1つ目は、中央建設審議会が作成する「標準労務費」を、発注者から元請、下請企業へと確実に行きわたらせ、労働者の処遇改善を図る。2つ目は、資材高騰など当初の契約内容に影響をおよぼす事態が生じた場合には、発注者は誠実に変更協議に応じる。3つ目は、適正な工期設定により、長時間労働の是正を図る。

 以前から、「建設業は人に支えられ現場で成り立つ産業」と言われ、発注者、元請企業、下請企業の関係は「お互いさまの世界」と語り継がれてきました。

 今回の法改正を実のあるものとするためには、国土交通省建設Gメンの方々に期待するだけではなく、業界関係者が自らの意識を改革していくことが重要です。

 安心安全な生活基盤を子々孫々の世代まで引き継ぐという使命達成に向かって、今回の建設業法改正が大きな起爆剤となることを期待しています。

建設産業専門団体九州地区連合会
会長 杉山秀彦(すぎやま・ひでひこ)

(つづく)

【田中直輝】

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