2024年08月05日( 月 )

筑後川河川事務所による「強靱な地域づくり」

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

九州地方整備局  筑後川河川事務所

「緊急治水」と「流域治水」
巨瀬川で進む2つの治水対策

 近年、毎年のように発生する豪雨被害。2023年7月にも、久留米市やうきは市を中心として甚大な被害をもたらした「令和5年梅雨前線豪雨」が起こった。福岡県発表の県内の被害状況によると、人的被害(軽傷、重症、死者)が12件、家屋被害(全壊、半壊、一部破損、床上浸水、床下浸水、非住家)が6,569件、道路被害(損壊、埋没)が752件、橋梁被害(流出、損壊)が17件、河川被害(溢水、決壊、施設・設備損壊、内水氾濫)552件、土砂災害(がけ崩れ、土石流、地すべり)166件だった(23年8月14日時点)。

 その「令和5年梅雨前線豪雨」でとくに大きな被害を受けたのが、一級河川筑後川水系の一次支川である「巨瀬(こせ)川」だ。7月10日には、短時間に何度も線状降水帯が発生し、多くの中小河川などが流れ込む巨瀬川に雨水が集中したことで越水氾濫。国道210号の一部区間でも冠水する事態となった。また、下流の久留米市田主丸地区では水深が1mになるなど、大きな浸水被害が発生した。

 巨瀬川で甚大な浸水被害が発生したことを受けて、筑後川河川事務所では23年11月に「筑後川水系の防災・減災対策」を発表し、緊急的に河道掘削を実施した。全体事業費は14億円。24年6月末に完了。

 さらに筑後川河川事務所では23年12月に「筑後川水系巨瀬川流域 緊急治水対策プロジェクト」の実施計画を策定した。事業期間は23年度からの概ね5年間で、河川事業における対策の全体事業費は約254億円(国事業:約133億円、県事業(災害復旧)約121億円)。河道掘削や築堤、樋門・樋管、橋梁改築、護岸復旧などを実施していく。集水域における対策は約36億円(県事業(災害復旧))。さらに24年4月には、追加で浸水対策重点地域緊急事業に新たに着手。これは全体事業費約52億円をかけて、調節池の整備などのさらなる整備を推進するもので、事業期間は24年度から28年度までを予定している。

 これらを踏まえて九州地方整備局筑後川河川事務所では24年度の事業として、巨瀬川における河道掘削や堤防整備など、被害の軽減に向けた治水対策を進めている。なお、24年6月末時点での工事の進捗状況は、堤防整備10%、河道掘削20%、樋管0%、橋梁0%(小屋場橋施工中)となっている。

 一方で、24年2月には国・県・市などが連携して取り組む「筑後川水系巨瀬川流域治水プロジェクト」が策定された。緊急治水対策プロジェクトが短期間での緊急強化策だとすれば、流域治水プロジェクトは中長期にわたって巨瀬川流域全体の治水対策に取り組んでいくものだ。今回の巨瀬川流域治水プロジェクトでは、流域の人々の暮らしを支える基盤となる川や山、人里において、「氾濫をできるだけ防ぐ・減らす」「被害対象を減少させる(浸水被害を増やさない)」「被害の軽減、早期復旧・復興(命を守る行動につながる対策)」の3つの対策を推進。具体的には、水田や水路、ため池などの農業施設の活用と適切な施設管理・整備、雨水貯留施設などの検討・整備、砂防堰堤などのさらなる整備を行うほか、貯留機能などの確保や、土砂災害警戒区域などの見直し、災害リスクを踏まえた土地利用の取り組み、内外水一体水害リスクマップの作成・公表や、レジリエンスベースの整備などを進めていくとしている。同プロジェクトの推進により、巨瀬川流域における水害・土砂災害に対する強靱な地域づくりを目指している。

24年度予算は約87億円
主に被害軽減への治水対策を実施

 筑後川河川事務所ではほかに24年度の事業として、前述の巨瀬川以外でも、自然環境に配慮しながらの河川整備の実施を予定。以下、筑後川における代表的な事業を紹介する。

筑後川下流部(久留米市下田)の河川改修
 筑後川右岸12.6km~16.0km付近(久留米市下田地区)において、堤防拡幅などの整備を行うもの。24年度は堤防整備を予定。

久留米市市街部(久留米市瀬ノ下・北野地区)の河川改修
 筑後川右岸24.8km~26.0km付近(久留米市瀬ノ下地区)および筑後川右岸32.1km~38.0km付近(久留米市北野地区)において、洪水を安全に流下させるための堤防拡幅などの整備を行うもの。24年度は堤防整備、樋管改築を予定。

筑後川上流部(日田市石井・津辻地区)の河川改修
 筑後川左岸71.0km~72.0km付近(大分県日田市石井地区、津辻地区)において、洪水を安全に流下させるための堤防整備などを行うもの。24年度は測量設計などを予定。

支川早津江川(佐賀市早津江地区)の高潮対策
 早津江川右岸1.1km~4.6km付近(佐賀市早津江地区)において、堤防整備などを実施して高潮に対する安全性を確保するもの。24年度は堤防整備、樋管改築を予定。

筑後川支川巨瀬川の河川改修
 巨瀬川の川崎橋~中央橋までの約4.5km(久留米市田主丸町)において、堤防整備や河道掘削などにより整備計画目標流量の安全な流下を図るもの。24年度は堤防整備、橋梁架替、樋管改築、用地補償を予定。

筑後川支川隈上川の河川改修
 隈上川の筑後川合流点~約2.0km付近(うきは市)において、洪水を安全に流下させるための堤防整備や河道掘削などを行うもの。24年度は橋梁架替などを予定。

筑後川支川花月川の河川改修
 花月川0.0km~5.2km付近(大分県日田市)において、洪水を安全に流下させるための堤防整備や河道掘削などを行うもの。24年度は堤防整備、樋管改築、用地補償を予定。

筑後川支川安良川の河川改修
 安良川右岸0.0km~1.3km付近(佐賀県鳥栖市)および宝満川右岸0.6km~1.3km付近(佐賀県鳥栖市)において、洪水を安全に流下させるための堤防拡幅などの整備を行うもの。また、鳥南橋上流右岸については、新産業集積エリア鳥栖に進出するアサヒビール(株)や、鳥栖市と連携し、堤防整備を促進していく。24年度は堤防整備を予定。

西田川樋門改築事業
 筑後川右岸26.3km付近(佐賀県鳥栖市)において、水害に対する安全度の向上を図るために樋門の改築整備を行うもの。24年度は用地補償などを予定。

筑後川大石地区の環境整備事業
 筑後川58.0km~60.2km付近(うきは市大石地区)において、管理用通路や坂路などを整備することで、うきは市と連携した地域活性化や河川利用の安全性やアクセス、維持管理の向上を図るもの。24年度は管理用通路および坂路の整備を予定。

 筑後川河川事務所では、整備・管理を担当する筑後川および矢部川においてこうした事業を進めていくことで、豪雨などによる浸水被害等の軽減に向けた治水対策を推進。24年度予算の内訳は、河川改修費51億9,300万円、河川維持修繕費28億3,900万円、河川工作物関連応急対策事業費5億6,300万円、総合水系環境整備事業費1億1,700万円、計87億1,200万円を予定している。

【内山義之】

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

法人名

関連記事