2024年08月06日( 火 )

霞ヶ関キャピタルが福岡の高級住宅地にホスピス

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高級住宅地にホスピス

ホスピス予定地(市崎1丁目)

    西鉄・平尾駅から徒歩10分、旧政府系金融機関の職員住宅跡地で、ホスピスの開発が計画されている。

 平尾エリアは、平尾駅を挟んで高宮通りと日赤通りの2つの幹線道路が並走するほか、城南区別府方面へ抜ける筑肥新道、博多方面から百年橋通りを経由して筑肥新道につながる山荘通りなど、鉄道以外の自動車道路も充実。天神から2kmという位置関係からも、商業の色が濃い薬院エリアと、住宅地の色が濃い高宮エリアに挟まれた、商住が混在したまちだ。

 ホスピスを開発するのは、物流施設「LOGI FLAG」シリーズ、多人数向けホテル「FAV HOTEL」シリーズなどの開発および運営を手がける霞ヶ関キャピタル(株)(東証プライム)。高齢化にともない、死亡者数の増加が推計されることや、入院期間の短期化などによるヘルスケア施設不足が見込まれることから、2022年に同社はヘルスケア事業を立ち上げた。すでに福岡を含めて10施設の開発予定があるほか、23年7月開業のエルシアホスピス仙川(東京都調布市)など3物件が稼働中。開発予定は、福岡を除けば東京圏と関西地方に集中している。

強みは立地と建物企画

2_執行役員ヘルスケア事業本部長・古川喜久氏
執行役員ヘルスケア事業本部長・古川喜久氏

    福岡で今秋以降に着工予定のホスピスは、部屋数が52室、開業は26年春を見込む。同社のホスピスの特徴について、執行役員ヘルスケア事業本部長・古川喜久氏は、「当社は不動産デベロッパーですので、まずは立地の良さで差別化を図っております。立地が良ければ入居者のご家族さまも訪問しやすくなり、入居者さまの満足度もより高まるはずですし、スタッフにとっても働きやすい環境を提供することができます。また、ホテルの開発運営で培ったデザイン・企画をはじめとした開発能力も施設開発に活かせるものだと自負しております」と話す。実際に、運営するホスピスでは、地域の音大生を招いての演奏会、食事の試食会や年末年始のイベントを開催しているというが、多くの入居者家族がホスピスを訪れているようだ。

 ホスピスの入居者は、がんの末期患者などが中心となる。ホスピスの運営には看護師や介護士など多くの人が必要となるが、「立地が良いことは採用にも有利」(古川氏)のようだ。法定人員は当然として、質の良いサービスを提供するには人が欠かせない。「オペレーション開始から日が浅いこともあり、まだ検討段階」と前置きしたうえで古川氏は、「見守り支援システムや清掃ロボットなどの導入を検討しております。IT化が進めにくい業界ではありますが、当社の経営理念でもある『その課題を、価値へ。』のため、少しずつでも効率化、コスト削減、人為ミスの軽減を図っていきます」と意気込む。

周辺と調和した建物目指す

霞ヶ関アセットマネジメント(株)部長・吉池豪氏
霞ヶ関アセットマネジメント(株)
部長・吉池豪氏

    福岡市への出店に際し、平尾エリアを選んだ理由について、霞ヶ関アセットマネジメント(株)部長・吉池豪氏は、「当社のホスピスのコンセプトに合致するエリアに絞って、福岡市内で探しておりましたところ、縁あって取得することができました」という。予定地は市街地に近いながらも、閑静な住宅街となっており、法令上高層ビルは建てにくい立地。「まだプランを練っているところですが、高い建物を建てられないからこそ、周辺環境と調和したホスピスが建てられると考えております」(吉池氏)と話す。

 「当社がホスピス事業に参入したのは、立地が良くて建物の質も良いホスピスの供給が少なかったことから、『だったら当社でつくろう』となったことが大きな要因の1つでした。実は、ホテル事業も同様で、グループで泊まれるホテルが日本には少なかったことから、グループステイホテル(FAV HOTEL)をつくろうという話になりました」(古川氏)。

 同社が開発したホテルは、20年10月開業の「FAV HOTEL飛騨高山WEST」(岐阜県高山市)を皮切りに、13施設が運営中となっており、九州でも熊本や長崎、鹿児島でホテル運営が行われている。また今年3月には、FAV HOTELのハイエンドラインである「seven x seven」ブランド第1弾として、47室のホテルが福岡・糸島半島に開業したことも記憶に新しい。

seven x seven 糸島
seven x seven 糸島

開発スキームが特徴

 同社のビジネスモデルは、一般的な不動産デベロッパーとは異なる。一般的な不動産デベロッパーの場合、土地を取得して建物を建設し、ホテルや賃貸マンションなどを一定期間運用した後、投資家などへ売却するというもの。

 同社では、土地を取得して建物を企画するところまでは同様だが、更地の状態で開発投資家へ売却し、建物建設中はプロジェクトマネジメントを担う。完成後は施設のオペレーションを手がけ、不動産ファンドなどへ売却する手伝いまで行うというもの。土地の段階で売却を行うことにより、建物完成後に売却するよりも資金を高回転で回すことができ、より多くの開発案件を手がけられるようになる利点がある。また、ファンドへの売却後もアセットマネジメントを手がけることで、ストック収入の確保にもなる。

 これは、ホスピスも同様で、福岡の物件もすでに開発投資家へ売却済みだ。建物が完成し、投資商品としての要件がそろった暁には、不動産ファンドへの売却を見込んでいる。「今後も年間8~10施設を目標に開発していきたいと考えています。そのためにも、オペレーションの内製化を進めており、東京圏、関西エリア、福岡を主要マーケットと捉え、ドミナントで投資を行ってまいります」(古川氏)。

【永上隼人】

福岡のホスピス概要
所在地 :福岡市南区市崎1丁目
敷地面積:675坪
部屋数 :52
交 通 :西鉄平尾駅 徒歩10分
着工予定:2024年秋冬
竣工予定:2025年冬
開業予定:2026年春

<COMPANY INFORMATION>
霞ヶ関キャピタル(株)

代 表:河本幸士郎
所在地:東京都千代田区霞が関3-2-1
    霞が関コモンゲート 西館 22階
設 立:2011年9月
資本金:179億6,356万円(資本準備金含む)
    2024年2月末時点
TEL:03-5510-7651
URL:https://kasumigaseki.co.jp/

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