2024年08月06日( 火 )

国交省が都市緑地シンポジウム(前)

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 国土交通省都市局は7月1日、東京・赤坂の「赤坂インターシティAIR」において「まちづくりGXシンポジウム~都市の未来が緑で変わる~」を開催した。GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは、温室効果ガスの排出を抑制してクリーンエネルギー中心の産業構造へと転換する取り組みのこと。会場参加とオンライン配信を併せて800人超が参加。緑とまちづくりについて、国土交通省による民間緑地認定制度などの説明や学識経験者による基調講演とともに、東急不動産ホールディングス(株)や大日本印刷(株)、(株)三菱UFJフィナンシャル・グループの担当者による事例紹介やパネルディスカッションを行った。

国が民間の緑地創出を認定、まちに人呼ぶ緑の求心力

冒頭にあいさつした前都市局長の天河宏文国土交通審議官
冒頭にあいさつした前都市局長の
天河宏文国土交通審議官

    冒頭に挨拶した前都市局長で国土交通審議官の天河宏文氏は、「官民を挙げて都市の緑地を創出していく取り組みを続けていくことが重要。こうしたことを踏まえて、今年5月に都市緑地法等の一部を改正する法律が成立し、民間事業者の優良な緑地確保の取り組みを国として認定して国際的な自然的環境や緑地法に関する動きと連動させていきたい」と話した。また、経団連自然保護協議会会長で損保ジャパン顧問の西澤敬二氏は、「地球環境への取り組みは経済界にとって責務であり、社会経済システムのゲームチェンジャーとして大きな役割を期待されている」との認識を示し、経済界が都市の緑の創出に向けて貢献していくとした。

 シンポジウムの冒頭では、国土交通省が取り組むまちづくりGXの紹介や検討経緯などについて説明があった。世界の主要都市と比較して日本の大都市の緑地充実度は低く、都市における緑地は減少傾向にあると指摘。5月29日に公布された都市緑地法等の一部を改正する法律では、①国の基本方針作成、②緑地買い入れを代行する国指定法人の創設、③民間事業者などの緑地認定制度や都市脱炭素化に資する都市開発事業の認定制度の創設―を盛り込み、都市の緑の質・量両面での緑地確保を支援する。公布後、6カ月以内に施行。都市計画の段階で、緑地の意義や必要性を十分考慮するとともに企業を中心とした民間の取り組みを誘導する。

 同省の鈴木章一郎・前都市計画課長は、「まちに人を呼ぶ緑の求心力が大事になる。国の主導で全体の目標を置き、質と量を高めていくために緑地の買い入れや、基準をつくって民間の取り組みを評価する認定制度を導入する」と述べた。認定基準については管理状況といった経過や従前の状況との比較ができるよう、50程度の項目で見ていく仕組みを検討していることを明らかにした。

民間緑地の地域貢献に期待、ビジネス前提に環境配慮

基調講演を行う柳井重人千葉大院教授
基調講演を行う柳井重人千葉大院教授

    柳井重人・千葉大学大学院教授と原口真・MS&ADインシュアランスグループホールディングスサステナビリティ推進部TNFD専任SVPが基調講演に登壇。柳井教授は、「なぜ、いま、都市の緑なのか?―ひと・暮らし・まちをつなげる緑のはたらき―」をテーマに講演し、「(民間の)緑のまちづくりへの取り組みや認定評価のベースになるような基本的なところ」を解説。都市環境に問題として気候変動や生物多様性の保全、新型コロナの流行を契機としたWell-beingの向上に加え、日本や土地固有の問題が複雑に絡み合って課題として目の前にあるとした。

 そのうえで、都市緑地が持つ多面的な機能に触れ、複数の課題に同時に対応でき、自然的プロセスがベースであるため新しい課題への対応にも環境負荷が少ないと指摘。企業のもっている緑地資源・資産と、公園などの緑を管理してきた地方公共団体とのパートナーシップが重要になるとし、公開空地や屋上などの人工地盤上の緑化、工場緑地、都市公園と企業緑地の一体整備など、企業がもっている緑地の地域貢献に対する期待を示した。

 続いて、「ネイチャーポジティブに向かう世界の潮流と都市の緑」について原口氏が講演。ネイチャーポジティブビジネスが強い持続可能性であるとし、環境配慮がビジネスの前提になっていることを説明した。緑化は「決算も自然も黒字にする重要なまちづくりのソリューションである」と位置付け、国際的な枠組みであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)を採用した日本企業が80社におよぶことを紹介。ネイチャーポジティブを投資家に開示するには、緑地創出だけでは不十分であり、建設資材の循環利用やバリューチェーンの認証などにもおよぶと主張した。

(つづく)

【桑島良紀】

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