2024年08月08日( 木 )

2024年上半期 福岡市の開発動向(前)

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計画戸数が増加に転じる

 福岡市内に設置された標識情報を基に、市内における2024年上半期(1~6月)の開発動向を追った。その結果、共同住宅(木造を除く)の計画戸数は4,780戸となり、23年下半期(7~12月)比で492戸増加。22年下半期以降、減少傾向で推移していた計画戸数が1年半ぶりに増加に転じた。

 23年下半期は総戸数100戸超の計画が3棟だったのに対して、24年上半期は13棟となった。区ごとに見ると、東区と博多区で100戸超の計画が目立った。東区ではアイランドシティで分譲マンション・(仮称)フォレストプレイスⅢ街区G3・G4棟(両棟ともにワンルーム外112戸)、西戸崎で(仮称)モントーレ西戸崎(ワンルーム外117戸)などが、博多区では美野島で(仮称)エンクレスト美野島2丁目(ワンルーム126戸、ワンルーム外18戸)や築港新町で(仮称)築港本町第7プロジェクト(ワンルーム108戸、ワンルーム外24戸)などが計画されている。

 市内7区のうち5区の計画戸数が23年下半期比で増加しており、とくに中央区は計画戸数987戸と1,000戸に迫る盛り返しを見せ、22年下半期以来となる900戸超えをはたした。一方で、博多まで直通となった福岡市地下鉄・七隈線沿線エリア(城南区)の開発は沈静化。23年下半期に続いて延伸効果は限定的なものとなったが、早良区では福岡市地下鉄空港線・西新駅近接地での開発が盛り上がりを見せ、同区の計画戸数を押し上げた。

 目を見張るものがあるのはやはり博多区で、22年下半期以降、計画戸数は1,500戸超を維持している。24年上半期は前述の通り総戸数100戸超の計画が散見されたほか、ららぽーと福岡の存在も手伝い、博多駅より南側の東那珂や井相田といった博多SOUTHエリアでの開発が依然活況を呈するなど、中心部以外への広域展開が定着したことが博多ブランドの向上に寄与している(【表1】参照)。

 マンション以外では、(株)星州産業による(仮称)比恵町プロジェクト(RC造・地上8階建、延床面積770m2)や(株)リノリビングによる(仮称)春吉3丁目ホテル(S造・地上4階建、延床面積359m2)など、コロナ禍で鳴りを潜めていたホテル開発が再び頭をもたげ始めている。このほか、(株)アンビスホールディングス(東京都中央区)による(仮称)医心館(S造・地上6階建、延床面積2,116.95m2)、(株)シーユーシー・プロパティーズ(東京都港区)による(仮称)ReHOPE福岡東(S造・地上3階建、延床面積1,531.73m2)など、県外企業による有料老人ホームや診療所が複数棟計画されており、超高齢化社会を見据えた開発も目立った。

 事務所の計画件数は、23年下半期に続き10件以上を維持。市内における企業活動が盛んな様子がうかがえる。倉庫開発も伊藤忠商事(株)と伊藤忠都市開発(株)による(仮称)アイミッションズパーク多の津(S造・地上4階建、延床面積1万4,592m2)など、EC需要の高まりに呼応する格好で物流施設に対する需要も高まり続けており、市内においても引き続き相応数が計画されるものと推察される。延床面積の合計は23年下半期比で11万6,089.71m2減となったが、店舗やテナントビル開発も堅調な推移を見せていることから、開発用地の取得が厳しさを増すなかで、規模の縮小傾向は今後も続くものと見られる(【表2】参照)。

博多区
計画戸数は独走状態続く

 24年上半期の計画戸数は1,768戸で、23年下半期に続いて1位となった。総戸数100戸超の計画が6棟あったほか、前述の博多SOUTHエリアだけでなく、今年3月16日に開業した西鉄の新駅・桜並木駅にも近い東雲町や雑餉隈でもマンション開発が盛り上がりを見せたことが、計画戸数の増加につながった。

 注目される物件は、地下鉄空港線東比恵駅から徒歩10分程度の山王公園にも近い場所で進む、(仮称)比恵町計画。建築物の概要はRC造・地上14階建、延床面積7,255.40m2のワンルーム80戸、ワンルーム外46戸。建築主は(株)LANDICで、設計者は(株)アーキスタイルとなっている。周囲には山王公園のほか、コンビニやマックスバリュエクスプレス比恵町店など、小・中規模の商業施設も充実しており、子育て世帯にとっても便利な生活環境が整っている。

 また、博多駅から博多港に向かって伸びる大博通りに出やすく、地下鉄空港線・箱崎線中洲川端駅まで徒歩15分圏内の神屋町1丁目では、(株)ミヨシアセットマネジメントによる(仮称)ウェルス神屋町が建設予定となっている。建築物の概要は、RC造・地上12階建、延床面積1,678.33m2のワンルーム外22戸。設計者は(株)Gデザインアソシエイツで、6月頃の着工を予定している。このほか、堅粕3丁目では(株)プレサンスコーポレーションによる(仮称)プレサンスロジェ博多区堅粕三丁目(RC造・地上14階建、延床面積1万495.03m2、ワンルーム外143戸)が、博多駅南3丁目ではヤマエリアルティ(株)による(仮称)博多駅南3丁目賃貸マンション(テナント・事務所付、RC造(一部S造)・地上14階建、延床面積1万1,933.81m2、ワンルーム外136戸)が計画されている。

 民間投資を誘発するエリアが博多駅近隣に偏在するのではなく、ららぽーと福岡を中心とする博多SOUTH、そして西鉄の新駅・桜並木駅周辺と、区内各地に点在していることが、博多区の持続的な開発につながっているようだ。

東区
箱崎キャンパス跡地始動

 23年下半期比で259戸増の798戸となった東区。市内最多となる33万5,727人の人口(福岡市推計人口・24年7月1日現在)を擁しており、市場としての魅力は健在だ。アイランドシティでは分譲マンション(仮称)フォレストプレイスⅢ街区が計画されており、G1棟~G4棟を合わせた総戸数は317戸。近年は物流施設のT-LOGI福岡アイランドシティなど、マンション以外の開発が目立っていたが、住宅整備も再興の兆しが見え始めている。

 しかし、区内最大の話題は、ついに始動した九大箱崎キャンパス跡地の再開発だ。優先交渉権者には住友商事(株)を代表とし、九州旅客鉄道(株)、西日本鉄道(株)、西部瓦斯(株)らで構成された企業グループが選定された。同跡地のお膝元である箱崎はもちろん、近隣エリアの馬出にも波及効果が期待される。すでに計画されている物件のなかで注目されるのは、(株)グッドライフカンパニーによる(仮称)LIBTH箱崎1丁目_186(RC造・地上15階建、延床面積2,978.78m2、ワンルーム84戸)。日本三大八幡に数えられる筥崎宮にも近く、周囲には多彩な商店が軒を連ねており、生活利便性は相応に高い。約50haにおよぶ広大な跡地の再開発が進行するにつれ、周辺でのマンション開発もさらに過熱していくであろうことは想像に難くない。

 このほか、JR香椎駅至近地では(株)リアサポートによる(仮称)香椎1丁目マンション(RC造・地上4階建、延床面積998.01m2、ワンルーム外16戸)が計画されている。設計者は田代建設(株)で、7月頃の着工を予定している。

(つづく)

【代源太朗】

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