2024年08月08日( 木 )

製材業はスリム化と業界内の協力が必要(前)

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(株)マルジョウ
代表取締役 平川孝紀 氏

(株)マルジョウ 代表取締役 平川孝紀 氏

 福岡県内でも木材の製材業が盛んな地域・うきは市──。積極的な設備投資やそれによる徹底した業務の合理化、スマート化を進めてきた(株)マルジョウの代表取締役・平川孝紀氏に、同社の取り組みや地域の現状などについて話を聞いた。

住宅用プレカット材に特化

 ──まず、御社の事業内容について概要をお聞かせください。

 平川 主に、住宅の構造材となるプレカット向けの構造用材を生産しています。原木の7~8割をうきは市と大分県日田市の山林から調達しており、福岡のプレカット材の加工・流通企業はじめ、全国に供給しています。18cm未満の小径木を多く取り扱っていますが、中・大径木の製材にも対応し、出荷量は通常で月間1,100~1,200㎥となっています。

 近年の住宅に使用される木材は、石膏ボードなどで覆われ、壁のなかにあるため、居住者が見ることのないものがほとんどです。居住者の目に触れられる特殊な素材づくり以外の、プレカット用木材に生産品目を限定することで、コスト競争力と生産性の高さを重視した事業を展開しています。

工場の「無人化」を推進

 ──具体的にどのような取り組みで、それらを実現しているのでしょうか。

 平川 製材工程の省人化・省力化です。15年ほど前から、ボタン1つで無人で稼働する製材機械が登場しました。丸い原木を角材へと、高速かつ人力を大きく超える精度で製材できるようになりました。私が社長に就任した2005年当時、積極的な機械化を進めるまで、生産量は今の約半分、従業員は約20人でした。現在の従業員数は16人ですが、省人化・省力化を進めた結果、少人数で倍以上の生産が可能となりました。

無人製材機を導入
無人製材機を導入

 そして、当社では従業員も外国人技能実習生の受け入れを早くから進めており、現在は5人が働いています。工場の無人化を進め、特殊な作業が必要な工程がほぼなくなっていますから、言葉が十分に伝わらなくても彼らは数日で仕事を覚えてくれます。もちろん、規定通りの賃金を支払い、工場のすぐ近くの一軒家を借り上げ寮にして居住環境を整えるなど、できる限り待遇面も整備してきました。その効果もあり、人手不足の問題はほぼ解決できています。

 ──ほかに特徴的な取り組みはあるでしょうか。

 平川 徹底的な素材の有効活用にも取り組んでいます。製材過程では、樹皮や端材などが大量に発生しますが、たとえば樹皮は製材した木材を乾燥させるための燃料として活用していますし、端材は細かく砕き、紙の材料となるパルプ向けに出荷しています。

パルプ向けに出荷される端材
パルプ向けに出荷される端材

補助金を積極活用

 ──徹底的な省力化、とくに工場の無人化には、どのような背景があったのでしょうか。

 平川 私は2代目社長ですが、父の後を継ぐために当社に戻ってきたのは89年のことでした。当時はちょうど製材業がピークを迎えていた時期でしたが、バブル経済が崩壊し、91年頃から多くの製材所が閉鎖。その結果、かつてうきは市に100社ほどあった製材所は18社にまで減少しました。加えて、製材業は「3K」職種として認知されていましたので、人手不足に悩まされるようになっていました。そこで、将来的な人手不足を見据え、機械化やIT化による省人化を進めてきたわけです。

コンピュータで稼働を制御する
コンピュータで稼働を制御する

    とくに追い風になったのが、補助金をはじめとした国の施策の変化です。10年ほど前までは、法人単体での補助金申請は難しかったこともあり、同業者と「FUKUOKAうきうきWOOD有限責任組合」を結成し、補助金申請に取り組みました。当時は業界内のライバル意識が強くて加盟各社の意思疎通や協力体制の構築がうまくいかずに、補助金の取得は難航していました。しかし、その直後に、法人単独でも補助金申請が可能となり、以降、設備投資を積極的に行えるようになったのです。私が社長に就任してからは、補助金申請の仕組みの変更や、無人で稼働する機械の完成度が向上するなどといったタイミングに恵まれました。

(つづく)

【田中直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:平川孝紀
所在地:福岡県うきは市浮羽町朝田150-2
設 立:1993年9月
資本金:2,000万円
URL:https://www.marujou.net/


<プロフィール>
平川孝紀
(ひらかわ・こうき)
1965年生まれ。千葉工業大学卒。大学卒業後、89年に(株)マルジョウに入社。2005年に代表取締役に就任した。浮羽木材協同組合の理事長も務める。趣味は読書。

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