2024年08月09日( 金 )

2024年上半期 福岡市の開発動向(後)

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中央区
計画戸数2位に返り咲く

 22年下半期以来の計画戸数1,000戸超えとはいかなかったものの、987戸で博多区に次ぐ2位に返り咲いた中央区。最もブランド力のある中心地・天神にも近い渡辺通5丁目では、大和ハウス工業(株)九州支社による(仮称)エルプレイス天神南(RC造・地上14階建、延床面積4,281.07m2、ワンルーム144戸)が、セントラルパーク化が進む都心のオアシス・大濠公園や舞鶴公園に近い舞鶴1丁目では、三菱地所レジデンス(株)による(仮称)福岡市中央区舞鶴1丁目計画(RC造(一部S造)・地上24階建、延床面積1万6,887.16m2、ワンルーム外136戸)が計画されており、中央区における総戸数100戸超の計画はこの2棟となる。

 注目される物件は、地下鉄七隈線・六本松駅から福岡縣護国神社方面へ徒歩5分程度の樋口ビル跡地で計画されている(仮称)フォーサイト六本松Ⅲ(店舗付、RC造・地上9階建、延床面積1,406.05m2、ワンルーム外14戸)。福岡市科学館や蔦屋書店、レストラン、クリニックなどが入る複合施設・六本松421にも近く、大濠公園と舞鶴公園を徒歩10分圏内に収める。建築主、設計者ともに照栄建設(株)で、9月頃の着工を予定している。

 マンション開発が勢いを取り戻し始めているほか、K.ホールディングス(株)による(仮称)舞鶴プロジェクト(物販店舗・診療所、RC造・地上6階建、延床面積1,240m2)に見られるように、中心部では住宅、商業施設ともにバランス良く開発が進んでいる印象だ。西公園でも再整備が進められており、同公園と大濠・舞鶴両公園間に位置する荒戸、港といったベイエリアでも開発が活発化していくかもしれない。

南区
計画戸数600戸超えで4位

 南区の計画戸数は、(同)K.H.G(福岡市中央区大名)による(仮称)南区折立町マンション(RC造・地上12階建、延床面積6,407.52m2、ワンルーム外101戸)や、(株)MTHコーポレーションによる(仮称)中尾1丁目マンション(RC造・地上7階建、延床面積4,107.43m2、ワンルーム84戸)の存在もあり、23年下半期から230戸増の671戸となった。

 西鉄駅を擁し、根強い人気を誇る大橋、高宮、井尻にとどまらず、その近接エリアでもある市崎やららぽーと福岡にも近い高木でも、40戸超のマンション開発が計画されている。博多区同様、開発エリアが偏在することなく広がりを見せており、南区全体で再開発機運が高まっている様子がうかがい知れる。解体工事も目立ち、たとえば今年5月に閉店した日赤通り沿いのJOYSOUND福岡日赤前店など、跡地の動向が注目される場所も少なくない。

 西鉄大橋駅前では、(株)えんホールディングスによる複合施設・OHASHI HILLも25年3月の開業に向けて動き出した(S造・地上6階建、延床面積9,721.43m2)。同駅周辺でも複数の解体工事が進められており、大橋エリアだけで見てもまちも新陳代謝は加速度的に進んでいくことになる。

西区
マンション開発は一服感

 23年は大型開発もあり、計画戸数上位3エリアを維持してきた西区。24年上半期はマンション開発にも一服感が出ており、計画戸数は304戸にとどまった。23年下半期比で246戸減となったが、スエヒロ産業(株)による(仮称)九大学研都市2(RC造・地上7階建、延床面積3,500m2、ワンルーム108戸)と総戸数100戸超の計画もあるほか、引き続きJR九大学研都市駅近隣エリアと姪浜エリアでバランス良く開発が続いている。

 注目される物件は、JR周船寺駅から徒歩5分圏内の、西警察署・周船寺交番側で計画されている(仮称)周船寺2丁目マンション(店舗付、RC造・地上6階建、延床面積1,300m2、ワンルーム20戸、ワンルーム外10戸)。建築主、設計者ともに日本福祉設計(株)となっている。通りを挟んだ向かい側には福岡銀行・周船寺支店やスーパー・にしてつストア周船寺店があるなど、相応の生活利便性が確保されている。

 姪浜エリアでは、地下鉄空港線・JR姪浜駅まで徒歩5分圏内の姪の浜4丁目で、(株)長谷工ライブネットによる(仮称)LiveCasa姪浜(RC造・地上11階建、延床面積993.53m2、ワンルーム24戸、ワンルーム外8戸)が計画されている。設計者は(株)優渾で、着工は11月頃を予定している。姪浜と姪浜以西の糸島半島で、断続的に街並みが更新されている点が、西区の強みとなっている。

城南区・早良区
七隈線沿線の開発は断続的

 城南区・早良区の23年下半期における計画戸数は、それぞれ181戸・199戸だったが、24上半期は44戸・208戸となった。城南区の計画戸数は50戸を割り込み大幅減となったが、早良区は増加に転じ、200戸超えをはたした。地下鉄七隈線の延伸効果は断続的で、城南区では木造アパートの計画は複数棟あるが、マンション開発に関してはDM都市開発(株)による(仮称)松山1丁目マンション(店舗付、RC造4FB・地上2階建、延床面積1,081.52m2、ワンルーム29戸)など数える程度で、顕著な延伸効果というのは見て取れない状況が続く。

 早良区では、地下鉄空港線・西新駅周辺での開発が目立った。注目されるのは、同駅6番出入口からすぐの場所で建設が進んでいる、明和地所(株)福岡支店による、クリオ ラベルヴィ西新グランクラス(RC造・地上12階建、延床面積2,600m2、ワンルーム11戸、ワンルーム外33戸)。設計者は(株)R.E.D建築設計事務所で、25年9月の竣工を予定している。このほか、日鉄興和不動産(株)による(仮称)西新2丁目計画マンション(RC造・地上6階建、延床面積4,175.71m2、ワンルーム外43戸)などが計画されている。

24年下半期は、七隈線沿線エリアに期待

 24年上半期は西鉄の新駅・桜並木駅周辺エリアの今後に期待がもてる計画が複数件確認できたほか、計画戸数で見ればマンション開発が停滞していた中央区が再び1,000戸に迫るなど、24年下半期のさらなる盛況を予感させる結果となった。ただ、博多まで直通となったことで交通利便性の向上がはたされた七隈線沿線エリアにおけるマンション開発は、前述の通りあくまで断続的であり、七隈線延伸によって同エリアが大きく飛躍したとは現状では言い難い。将来の開発に十分な余地を残しているともいえるため、民間事業者による相応規模のマンション開発が同時期に重なることがあれば、博多区、東区、中央区に迫る可能性もあるだろう。

 慢性的な混雑の発生にともないラッシュ時に計6往復の増便を行うなど、七隈線利用者は確実に増加している。市内7区において博多区の強さが一層際立った24年上半期だが、下半期は七隈線沿線エリア、とくに城南区の計画戸数が増加に転じるか否かに注目したい。

(了)

【代源太朗】

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