2024年12月24日( 火 )

日本郵政上場の裏で蠢く、米国と売国政治屋の思惑

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 NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、日本郵政上場の裏側にある米国の思惑と、米国の言いなりになる売国政治屋について述べた、11月1日付の記事を紹介する。


 日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式が11月4日に上場される。郵政民営化は、悪名高い「年次改革要望書」で米国が要求し、小泉政権が強引に実現したものである。その後、民主、社民、国民新党の連立政権によって株式売却に歯止めがかけられたが、野田政権以降の政権が路線を逆に戻して、株式が公開されることになった。

 米国は三つの「お宝」に目を付けた。第一は郵貯の巨額マネー。第二は簡保の保険マネー。第三は日本郵政が保有する巨大な不動産資産である。これらは、すべて、日本国民共有の財産である。この巨大資産をかすめ取ることが米国巨大資本の目的である。
 小泉純一郎氏が郵政民営化に突き進んだ第一の理由は、米国がこれを命令したからである。日本の政治家の多くは米国の命令に隷従する。その理由は、米国の命令に従っていれば、我が身が安泰であり、我が身の経済的、社会的利益がもたらされるからだ。日本をどのような国にするか、日本国民のための利益などは考えない。自分の利益になればそれでよい。日本が真の独立を果たしていない、などということはどうでもよいことだと考えるのである。

 この種の志の低い、低劣な政治屋が多いことが日本社会の貧困を生み出している。敗戦から70年もたつというのに、いまだに日本は独立さえ確立できていないのだ。

 米国が郵政民営化を要求する際に、もっとも強い関心を注いだのは、実は保険マネーである。米国では保険業界の政治的影響力が強い。この保険業界が日本の簡保マネーに目を付けた。これが郵政民営化の最大の原動力になった。

 もちろん、郵貯300兆円のマネーもターゲットであった。2007年秋以降に米国でサブプライム金融危機が進行してゆく過程で、竹中平蔵氏は郵貯マネーをサブプライム危機支援に投入することを提言した。米国と通じる竹中氏が、米国の郵貯マネー収奪の策略を垣間見せたことは象徴的な出来事であった。この時点で郵貯マネーを米国金融機関に注ぎ込んでいたなら、日本の国民金融資産は巨大な損失に直面したはずだ。
 米国が求めることなら、日本国民の財産がどうなろうと関係ない。この「思想」が明確に透けて見えてくる。

 日本政府は日銀から借金して、1.3兆ドルもの米国国債を購入した。いまも約1.3兆ドルの残高を維持している。これが日本政府の外貨準備高である。
 しかしながら、過去の円高の進行によって、この巨大資産に巨大損失が発生した。2007年央を起点に考えると、投資元本合計150兆円が2011年末には100兆円を割り込んだ。たった4年半で50兆円もの巨額損失を生み出したのである。年金運用会社が1,000億円の損失を計上して刑事事件にまで発展したが、日本政府は外貨準備の運用だけで、何と50兆円もの損失を生み出したのである。

 その損失が2012年以降の円安で大幅に縮小した。1ドル=120円の円安水準で、外貨準備の為替損失は解消した。したがって、ドルが高い水準にあるいま、保有してきた米国国債を全額売却して損失の回収を図るべきである。千載一遇のチャンスである。

 ところが、安倍政権は保有米国国債を1ドルたりとも売る気配さえ示さない。安倍政権は米国債を購入した150兆円の資金は、米国に貢いだ上納金であると認識しているのだ。貸したお金ではなく、貢いだお金なのである。

 こうして、日本国民の貴重な財産は、悪徳な、自分の利益しか考えない、利権政治屋、売国政治屋によって、外国資本に献上されているのである。

 他方で、政府保有株式の管理を行っている財務省は、その「管理している」権限に基づいて、こうした「民営化」企業に天下りし続けている。
 自分の利益だけを考えているのは利権政治屋だけではない。官僚組織こそ、自己の利益追求しか考えない、シロアリ集団なのである。

※続きは11月1日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1282号「日本植民地化最終兵器としてのTPP」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

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