2024年08月24日( 土 )

博多廊など12業態のブランド力向上を 業態開発力、運営力、商品力、人材力が創る成功

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IMD Alliance(株)

 2010年の設立後、味とサービスに加えデザイン性も追求した飲食・宿泊施設が好評を博しているIMD Alliance(株)。麻生宏代表は1983年に20歳で飲食店を開業、福岡のデザイナーズホテルの先駆けであるホテル イル・パラッツォの総支配人、全国で宿泊施設を提供する(株)カトープレジャーグループの常務取締役などを歴任した。小さくてもブランド力を高める事業を積み重ね、事業を大きく展開している。

人材と雇用を何よりも重視

麻生宏代表
麻生宏代表

    コロナ禍で売上が激減した飲食・宿泊施設では、コロナ禍で従業員が減り、現在に至るも優秀な経験のあるスタッフをそろえられずコロナ以前と同様のオペレーションが困難な施設は少なくない。

 しかし、IMD Alliance(株)はコロナ後の需要回復を見据え、スタッフを雇用し続けた。麻生宏代表は雇用について、「一度離れてしまうと、また都合よく戻ってもらうことは難しいため、3年間ずっと雇用を維持しました」と当時の考えについて話す。

 自社の理念を理解し、良質なサービスを提供する人材は、時間や金で得られるものではない。人材を重視する同社ならではだ。財務面では非常に苦労したが、コロナ禍でも運営施設を増やし続け、2024年8月期は大幅黒字を見込んでいる。

多様な飲食事業とリスク分散

 同社を代表するブランドの1つが、以前大名で運営していた「博多廊」。180坪という大規模店舗で毎日多くのお客をもてなしていたが、コロナ禍により業界全体で客が激減するなか、その経営上のリスクを痛感した。約4分の1の規模の白金の店舗への移転を決断し、料理の単価も上げたことで、収支を改善した。

 それに先立って弁当事業に進出、「初屋はかたろう」を博多駅と福岡空港に出店した。麻生代表は「博多廊」を初めとする実店舗で築いたブランド力が、この弁当事業の成功を支えていると強調する。現在、弁当事業の売上は約4億円に達し、成功を収めている。12業態で相互に影響を与えながらブランド力を維持、向上させている。

「白金茶房」「白金中華 星期菜」
「白金茶房」「白金中華 星期菜」

    富裕層向けの高級レストランには「博多廊」以外にも「鮨 麻生」などがあり、中華の「星期菜」と肉の「BUTCHER」も良質なおもてなしを提供する「ファインダイニング」だ。ほか、弁当やカフェの「白金茶房」「糸島茶房」などの運営を行うとともに、直営ブランドと運営受託をバランス良く展開することでリスクを分散していると麻生代表は飲食事業の戦略上の強みを語る。

 コロナ禍では飲食事業以外にも新たな挑戦を行った。NOT A HOTEL FUKUOKAという、居住にも賃貸にも使える物件の開発だ。IMDは事業主として不動産を担当し、販売した。運営はNOT A HOTEL(株)が担う。IMDとしては沖縄に続く2軒目の分譲販売であり、無事に完売した。

 ホテル事業では、ヘルスツーリズム事業として、今年には新たに糸島エリアに「seven x seven(セブンバイセブン)糸島」の運営を受託した。ほか、飛騨高山でのホテル運営受託も行っている。今後も自社開発の宿泊施設の企画・運営を積極的に行うという。

「seven x seven(セブンバイセブン) 糸島」
「seven x seven(セブンバイセブン) 糸島」

新たな挑戦を続ける

 今年4月、西中洲の一際目立つ場所にあった中華料理店「星期菜」を現在の博多廊の近く(福岡市白金)本社ビル1Fに移転し、西中洲には観光客向けの「水炊き・もつ鍋の博多廊」をリニューアルオープンした。

水炊き、もつ鍋の「博多廊 西中洲」
水炊き、もつ鍋の「博多廊 西中洲」

    インバウンド市場の重要性が増すなか、とくに欧米からの観光客は日本の文化や体験を求める傾向があるが、長く宿泊・飲食事業に携わり、観光客のニーズに通じた麻生代表は「福岡では、日本文化を体験できる機会がまだ少ない」と指摘する。西中洲という外国人が多く集まる場所では日本の、福岡の飲食文化に触れてもらいたいという思いがあったからだ。

 一方、博多廊、星期菜の移転先は知事公舎に程近い上質で閑静な住宅地であり、落ち着いた雰囲気の店舗で食事を楽しめる。

 麻生代表が今後取り組みたいとしているのが海外市場であり、まずは東南アジアの市場の調査から始めているという。麻生代表は「日本では高齢化にともない外食の頻度が減少し、市場が縮小していくのは間違いありません」と、今後の日本企業にとって、海外事業を展開しないのはむしろリスクと語る。

 日本だけでなく海外でも収益源、人財ネットワークをつくるべきということだ。日本で採用している海外の人材についても会社を支えられるよう育てることに注力するとともに、優秀な人材を国籍などで分け隔てることなく積極的に採用する。

 麻生代表は今後の同社の展望について、「ブランド力と技術を維持し、高めることが重要です」と話す。飲食事業ではサービスの質とクオリティを高め、小規模な店舗でも高収益を目指す。カフェやホテルの海外展開も視野に入れる。「白金茶房」ブランドはすでに海外からの引き合いもすでにあるという。

 福岡を拠点に日本と海外の文化を強く意識しながら成長してきたIMD Alliance。今後も福岡に根ざしてより多くの人に、そのブランドが支える良質なサービスを提供してくれるだろう。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:麻生宏
所在地:福岡市中央区白金1-11-7
設 立:2010年9月
資本金:980万円
TEL:092-534-3330
URL:https://imd-a.jp

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